ピクシーナイト×戸崎圭太の“三度目の正直” 「不運」の中で掴んだ「財産」が秋の命運を握る?
中央競馬は今週末から秋の中山・阪神開催がスタート。10日の阪神競馬場ではサマースプリントシリーズの最終戦・セントウルS(G2)が行われる。
今年はシリーズチャンピオンの可能性を残す馬がセントウルSに登録していないため、最終戦を待たずして夏の短距離王はジャスパークローネに決定。今回の一戦は王座決定戦というよりも、秋のスプリンターズS(G1)に向けた前哨戦として注目が集まる戦いとなった。
そんな中、“王座奪還”を目指してこのレースから大舞台に殴り込みをかけるのがピクシーナイト(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)である。
2021年の秋にスプリンターズSを制し、今後の日本の短距離界を背負って立つ存在として期待を受けた逸材だが、続戦した香港スプリント(G1)では落馬事故に巻き込まれる形でレース中に転倒。競走中止となるアクシデントに見舞われてしまう。
2頭が予後不良となり、3人の騎手が病院に運ばれるケガを負うという大惨事に巻き込まれたピクシーナイトは幸いにも即引退とはならなかったが、後に「左前膝の骨折」が見つかり、さらに右トモにも捻挫が見つかるなど、故障により1年以上も戦列を離れることとなった。
迎えた今年は2月の阪急杯(G3)で復帰を目指すも、直前で「左トモの歩様の違和感」により出走を回避することに。3月の高松宮記念(G1)が1年3カ月ぶりの復帰戦となったが、そこにキャリア初となる不良馬場も重なる形となって13着と大敗を喫した。
その後、続戦した京王杯スプリングC(G2)でも8着に敗れているが、この時は久々の1400m戦だったことに加え、直線は馬群に包まれて前にも横にも動くことができない状態が長く続いた。それでいて勝ち馬と0秒4差であれば、8着という結果も悲観する必要はないだろう。
ピクシーナイト×戸崎圭太騎手の“三度目の正直”
直近の2戦は情状酌量の余地もある敗戦だっただけに、復帰3戦目で実績の豊富な1200m戦となる今回は真価の問われる一戦と言える。また、それは手綱を取る戸崎圭太騎手にとっても同じだ。
ピクシーナイトはもともと福永祐一元騎手がデビューから香港スプリントまで継続して手綱を取っていたのだが、故障離脱中に主戦騎手の調教師転身が決定。復帰戦が今年2月の阪急杯に決まった際に、新たな鞍上として発表されたのが戸崎騎手だった。
上述したように阪急杯は直前で回避となったものの、正式な復帰戦となった高松宮記念と2戦目の京王杯SCでは手綱を取り、今回のセントウルSが3度目の騎乗となる。
大きな故障の後だけに、かつてのパフォーマンスを取り戻すのは並大抵のことではないが、やはり前任の騎手が輝かしい実績を残しているだけに、結果が出なければ批判の矛先は鞍上にも向いてくる。戸崎騎手としても、今回は結果が求められる一戦と言えるだろう。
ピクシーナイトの器の大きさに関しては戸崎騎手も高い評価を与えており、自身の連載『週刊!戸崎圭太』(競馬ラボ)の中で阪急杯の追い切りに跨った時の印象を振り返った際には、「追い切りに乗せていただいただけでも財産になりそうな感触でした」と同馬の背中を絶賛している。
ちなみに、この時はピクシーナイトに騎乗するために阪神に遠征していたため、同日の中山記念(G2)に出走したお手馬・ラーグルフへの騎乗が叶わず。その中で菅原明良騎手に乗り替わった同馬が2着に好走するという“不運”も味わった。
そんなことがあった中でもピクシーナイトとの出会いを「財産」と言い切ったところに、戸崎騎手の同馬への期待の大きさが見て取れる。京王杯SCで8着に終わった後も、『サンケイスポーツ』の取材に対して「叩いて感じは良くなっていました。まだ良くなりそうです」と収穫と伸びしろを口にしたように、この秋の完全復活へ機運は高まっている。
春にはソングラインとのコンビでヴィクトリアマイル(G1)と安田記念(G1)の連勝を成し遂げ、勢いに乗って迎えた夏も福島でリーディングを獲得した戸崎騎手。新潟でもアヴェラーレとのコンビで関屋記念(G3)を優勝したが、新潟リーディングの座は最後の最後で川田将雅騎手にさらわれた。
表彰式ではライバルの後ろで米俵を持ち、「津村(明秀)騎手も戸崎騎手もリーディングをとりたいと言っていたので、絶対にとらせないでおこうと思って頑張りましたので、それを阻止できて良かったなという思いです」という勝者の演説を見せつけられた時間は、今週以降の燃料となるに違いない。
収穫と悔しさを力に、この秋こそは他を圧倒するような大爆発を。人馬とも“三度目の正直”がかかるピクシーナイトとともに挑む秋の初戦・セントウルSが、そのカギを握っていると言っても過言ではない。
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