武豊×オーサムリザルト5連勝に思い出される「未完の大器」の悲劇。池添謙一「申し訳ありません」6連勝中のダート界の超新星の狂った歯車
3日、京都競馬場で行われたアルデバランS(OP、ダート1900m)は、1番人気のオーサムリザルト(牝4歳、栗東・池江泰寿厩舎)が勝利。単勝2.0倍の人気に応える走りで、デビューから無傷の連勝を5に伸ばした。
12頭立てながら、大外枠から出遅れる厳しいスタートになったオーサムリザルト。道中は無理せず後方からの競馬となったが、向正面でじわりとポジションを上げると、勝負どころの3、4コーナーで外から進出開始。先頭集団を射程圏に入れて最後の直線を迎えた。
こうなると後は力が違った。最後は2着ハピに3/4馬身差まで詰め寄られたが、主戦の武豊騎手が「ソラを使ってフワフワするところがあった」と指摘した通り、若さを見せてしまった結果。終わってみれば「着差以上の勝ち方じゃないかな」という楽勝劇だった。
「3着だったゼットリアンを3馬身突き放している通り、上手く内を突いた2着のハピも頑張りましたが、今回は相手が悪かったですね。鞍上の松山弘平騎手も『今日は相手が強かった』と白旗を上げていました。
これでデビュー5連勝になったオーサムリザルトですが、武豊騎手が『まだ奥がありそう』と期待をかけている通り、まだまだ未完成な状態。この段階であっさりオープンを勝ってしまったのですから、末恐ろしい存在だと思います。
武豊騎手には同じくダートの中距離でデビュー4連勝中のヤマニンウルスというお手馬がいますが、こちらも超大物と噂されているだけに先々が楽しみな1頭。仮にどこかで対決することがあれば、武豊騎手がどちらに騎乗するのかも興味深いですね」(競馬記者)
これで無敗のままデビュー5連勝となったオーサムリザルト。今年の明け4歳には地方三冠馬のミックファイアや米ブリーダーズCクラシック(G1)で2着したデルマソトガケなどタレント揃いだが、また1頭スター候補が出現した印象だ。
その一方で今回の勝利を見て、あの「未完の大器」を思い出したファンも少なくないかもしれない。
「本当に1回ずつ良くなっていますし、今後さらなる活躍を期待したいですね」
ちょうど4年前のアルデバランS。レース後に武豊騎手がその将来に大きな期待をかけていたのが、ロードレガリスという馬だった。
デビュー6戦で未勝利のまま地方へ転厩となったロードレガリス。直前の未勝利戦でも10番人気9着と厳しい立場だったが、初ダートとなった大井の移籍初戦で、いきなり4馬身差の快勝。自分に相応しい“仕事場”を見つけて覚醒した本馬の快進撃はここから始まった。
次走こそ3着に取りこぼしたものの、その後は連勝を重ねて再び中央へカムバック。1勝クラスでキャリア初の1番人気に推されると5馬身差で圧勝し、次走から武豊騎手との新コンビが決定。一躍ファンの注目を集める存在になった。
その後、一歩ずつ出世の階段を上ったロードレガリスは、前記したアルデバランSでついに6連勝。競馬界のレジェンド武豊騎手とのコンビということもあって、ダート界に突如現れた新星としてマスコミが大きく取り扱ったことは言うまでもないだろう。
だが、そこからロードレガリスの運命の歯車が大きく食い違ってしまうことを誰が予想できただろうか。
7連勝をかけて重賞初挑戦となったロードレガリスは、強豪が集った平安S(G3)でも1番人気に支持された。しかし、結果は10着……。主戦の武豊騎手が別開場で騎乗したため、替わって手綱を取った池添謙一騎手がレース後に謝罪する思いがけない結果になってしまった。
一見、危なげなく連勝を重ねていたロードレガリスだったが、実は気性面に大きな弱点があった。「ゲートを出た瞬間から耳を絞って全然進まなかった」「嫌々走っていた感じですね」と池添騎手が指摘した通り、平安Sではその弱点がモロに表面化してしまった格好だ。
最後は「集中して走らせられなくて申し訳ありません」と頭を下げたように、オルフェーヴルの三冠など数々の大レースを制した名手でも手の施しようがない内容だった。
その後、歯車が狂ってしまったロードレガリスは、ここまでの連勝劇が嘘のように連敗を重ねた。武豊騎手を再び主戦に戻し、翌年のアルデバランSで復活勝利を挙げたものの本来の走りを完全に取り戻すきっかけにはならなかった。
あの運命の分かれ道から4年。船橋に移籍して9歳になったロードレガリスは、まだ現役を続けている。ここ3戦で2、3、4着と復活の兆しを見せているだけに、今年は交流重賞で中央馬と再び矛を交えるシーンが見られるかもしれない。
「今後が楽しみです」
今年のアルデバランSで5連勝を飾り、武豊騎手からもその将来が期待されるオーサムリザルトもまた、当時のロードレガリスと同じくまだまだ粗削りな大器といった存在だ。ただ、どんな逸材でも、ちょっとしたボタンのかけ違いで順調に回っていた歯車が狂ってしまうところが競走馬の危うさであり、競馬の難しさでもある。
2年連続の年度代表馬となったイクイノックスでさえ、決してデビューから順風満帆だったわけではなく、C.ルメール騎手や木村哲也調教師を始めとした関係者の尽力があってこその成功だった。
一競馬ファンとして、オーサムリザルトやヤマニンウルスといった時代のスター候補が順調に花開くことを祈るばかりだ。
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