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何故、武豊は騎乗停止になったのか。単勝1.4倍「最強女王」エアグルーヴ敗戦にあったサイレンススズカとの奇妙な関係とは

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武豊騎手
武豊騎手 撮影:Ruriko.I

レガレイラが初の牝馬限定戦へ

 28日、昨年のホープフルS(G1)で史上初の牝馬優勝を果たしたレガレイラ(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)が、秋は秋華賞トライアルのローズS(G2)から始動することがわかった。本馬が所属するサンデーレーシングの公式HP上で発表されている。

 今春、あえて皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)と牡馬クラシックに挑戦したレガレイラ。残念ながら人気に応えることはできなかったが、一線級の牡馬に交じっての6着、5着は恥ずべき結果ではないだろう。

 そんなレガレイラだが、実は今回がキャリア6戦目にして初の牝馬限定戦への出走となる。順当に考えれば上位争いは必至の有力馬だが、果たしてどうか。

 思い出されるのは、1998年のエリザベス女王杯(G1)に挑んだエアグルーヴだ。

1年半ぶりに牝馬限定戦に挑んだエアグルーヴだったが

 前年の天皇賞・秋(G1)で牡馬を撃破していたエアグルーヴ。今でこそG1の舞台で牝馬が牡馬を蹴散らすことは珍しくなくなったが、当時の本馬はまさに牝馬の常識の枠を超えた存在。この勝利も、天皇賞・秋が2000mで開催されるようになった1984年以降で初の牝馬制覇と歴史的な快挙だった。

 さらにエアグルーヴはジャパンC(G1)2着、有馬記念(G1)と宝塚記念(G1)で3着と古馬王道路線でトップクラスのパフォーマンスを披露。そういった意味では現在のレガレイラよりもさらに上位と言えるかもしれないが、そんな怪物牝馬が約1年半、9戦ぶりに牝馬限定戦へ出走したのが、1998年のエリザベス女王杯だった。

 先述した通り、牝馬と牡馬の力関係に明らかな差があった時代。超一線級の牡馬を相手に互角以上の戦いを見せるエアグルーヴは、すでに史上最強牝馬の呼び声も高い存在だった。そういった背景もあって、陣営が「目標は(2週後の)ジャパンC」と今回が本番ではないことを強調するも、ファンは本馬を単勝1.4倍の大本命に支持。「例え、完調でなくとも牝馬相手に負けるはずがない――」1998年のエリザベス女王杯は、牝馬限定戦という“女の戦い”に堂々の凱旋を果たしたエアグルーヴがどう勝つのかが焦点だった。

 結果から述べると、エアグルーヴはこのレースで3着に敗れている。

 牝馬ながらに前年の年度代表馬に輝いたエアグルーヴにとっては、まさかの敗戦となったが、主な敗因は2つあった。異例の超スローペースに巻き込まれたことと、そして主戦の武豊騎手が不在だったことだ。

 このエリザベス女王杯を制したのは、もう1頭の女王メジロドーベルだ。記録した上がり3ハロン33.5秒は昨今なら特別なタイムではないが、当時は「異次元の末脚」と言って良いほど破格の切れ味だった。

 ちなみに同年の天皇賞・秋における上がり最速は、最後方から競馬したローゼンカバリーの35.0秒、ジャパンCでは同じく最後方だったユーセイトップランの34.6秒である。件のエリザベス女王杯では、エアグルーヴも自身のキャリア最速となる33.8秒の切れを見せたが、メジロドーベルに切れ負けしただけでなく、格下のランフォザドリームを交わすことさえできなかった。

 無論、ジャパンCに向けて完調でなかったと言えばそれまでだが、思えばエアグルーヴが制した天皇賞・秋は1000m通過が58.5秒(エリザベス女王杯は62秒)とG1らしい厳しいペースだった。

 レース後、武豊騎手が「向正面から折り合いがついて、良い形で進めた」と振り返ったペースは、当時まだほぼ無名の存在だったサイレンススズカが果敢に飛ばして作り上げたもの。そういった意味では、エアグルーヴの歴史的快挙の助演男優賞と言えなくもないが、この“借り”は翌年の宝塚記念(サイレンススズカ1着、エアグルーヴ3着)できっちりと返されている。

 またエアグルーヴには、サイレンススズカともう1つ奇妙な関係がある。

 このエリザベス女王杯の前週、主戦の武豊騎手はアドマイヤベガの新馬戦で斜行してしまい、騎乗停止処分を受けていた。言わずと知れた翌年のダービー馬のデビュー戦で、よもやの騎乗停止処分。次戦でエリカ賞(1勝クラス)に格上挑戦して勝ち上がるというダービー馬らしい型破りなエピソードからも、新馬戦なら“安全運転”でも勝てた可能性が高い。ちなみにゴールした際は、後続に2馬身半以上の差をつけていた。

 実はサイレンススズカが非業の死を遂げたのが、この前週の天皇賞・秋だった。まして、アドマイヤベガはサイレンススズカと同じ橋田満厩舎。それも天皇賞・秋以来のコンビだ。騎手界でも屈指の酒豪として知られる武豊騎手だが、サイレンススズカを失った際は珍しく泥酔したというだけに、平常心を保つのが容易でなかったことは想像に難くない。

 サイレンススズカとエアグルーヴがターフを駆け抜けた1998年から26年。今秋のローズSで“女の戦い”に参戦するレガレイラは「戦ってきた相手が違う」と言わんばかりに秋華賞(G1)の最有力候補に躍り出るのか、それともエリザベス女王杯のエアグルーヴのように牝馬限定戦の難しさに屈してしまうのか。興味深い一戦になりそうだ。

浅井宗次郎

浅井宗次郎

1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」(敬称略)

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