JRA【スプリングS(G2)回顧】ヴィクティファルスが差し切りV!「天敵」エフフォーリアすら霞む皐月賞での最大の強敵とは!?
21日、中山競馬場で行われたスプリングS(G2)は池添謙一騎手の3番人気ヴィクティファルス(牡3、栗東・池添学厩舎)が先に抜け出した嶋田純次騎手の7番人気アサマノイタズラをゴール寸前アタマ差捕らえ優勝。川田将雅騎手の1番人気ボーデンは3着に敗れた。重馬場の勝ちタイムは1:52.0秒。
上位3頭には4月18日に同じ中山競馬場で行われる皐月賞(G1)への優先出走権が与えられる注目の一戦。スタートは全馬ほぼ互角だったが、僅かに好発を決めたワールドリバイバルが内枠を利して先手を主張。1000m通過は1:02.5秒と平均ペースだが、人気の2頭ボーデンとランドオブリバティはやや折り合いを欠いたままレースは進んでいく。
4角手前からモノ凄い手応えで人気2頭を抜き去ったアサマノイタズラが直線半ばで先頭に立ち、鞍上・嶋田純次騎手の初重賞は目前まで迫ったが、疾風のような末脚を繰り出し「画面の外から追い込んだ」ヴィクティファルスの猛追を凌げなかった。
ヴィクティファルスはこれで通算3戦2勝となり、重賞は初勝利。この勝利は池添兄弟コンビ(兄・謙一騎手、弟・学調教師)での重賞初勝利でもあった。テン乗りで結果を出した兄、キッチリ馬を仕上げた弟双方に拍手を送りたい。
前走、2月の共同通信杯(G3)では勝ったエフフォーリアに一蹴されてしまったヴィクティファルスだが、そのライバルが経験していない「中山での勝利」は逆襲へのアドバンテージとなるだろう。もし皐月賞当日に一雨来るようなら、さらに注目度は上がるだろう。
ただ、問題もある。ヴィクティファルスの父ハーツクライ産駒の皐月賞での通算成績が[0-1-0-11]と振るわないのだ。
リスグラシューやジャスタウェイに代表されるように覚醒後は世界最強級に育つ産駒も、3歳春の時点ではどこか走りに安定感を欠く傾向にある。他ならぬハーツクライ自身もそういう馬だった。
昨年こそサリオスが後の三冠馬コントレイルと火の出るようなマッチレースを演じたが、ワンアンドオンリー(4番人気4着)やスワーヴリチャード(2番人気6着)のように、「後の日本ダービー(G1)好走組」ですらも皐月賞では力を出せなかった事を忘れてはならないだろう。
レース後、池添騎手は「返し馬の感じから、折り合いを大事に行きたいと思いました。上手く馬の後ろに入れて、悪い馬場でもリズム良く走れました。追い出してからも良い反応でしたし、重い馬場を踏ん張って伸びてくれました。成長してほしい部分はありますが、ポテンシャルの高い馬ですから、もっと頑張って強くなっていくと思います」とコメントを残している。
「成長してほしい部分」というのが「皐月賞におけるハーツクライ産駒の弱点」なのかどうかは不明だが、今後クラシック戦線を戦う以上、短期間での成長なくして「天敵」エフフォーリアをはじめとする同世代のライバルを撃破することは難しい。
また、近年の皐月賞の勝ちタイムは17年にアルアインが記録した1:57.8秒を筆頭に16年ディーマジェスティの1:57.9秒、19年サートゥルナーリアの1:58.1秒が示すように「高速馬場への適応力」を求められる傾向にあるため、重馬場での勝利を手放しで喜んでもいられないだろう。
本番まで約1か月、池添兄弟を驚かせるようなヴィクティファルスの成長に期待したい。
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