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JRA横山典弘「ポツン騎乗」誕生にも関係!? 「18馬身差」から始まった砂の女王伝説、フェブラリーS(G1)唯一の牝馬優勝馬の悲劇的結末

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JRA「18馬身差」から始まった砂の女王伝説! 横山典弘「ポツン騎乗」誕生にも関係、フェブラリーS(G1)唯一の牝馬優勝馬が刻んだ快進撃とその悲劇的結末の画像1
ソダシ 撮影:Ruriko.I

 20日に東京競馬場で開催されるフェブラリーS(G1)は、今年最初に行われるダートのマイルG1である。

 テーオーケインズ、チュウワウィザードら昨年と一昨年のチャンピオンズC(G1)優勝馬が揃って回避したのは淋しい限りだが、白毛のアイドル・ソダシの参戦は、レースを盛り上げてくれそうだ。

 また、ソダシ以外にもテオレーマも出走を予定しており、牝馬の活躍にも期待したフェブラリーSだが、これまで牝馬が優勝したことがないのは意外に思える。

 下半期のダートG1・チャンピオンズCの場合は、2015年に6歳牝馬のサンビスタが優勝したものの、G1昇格後のフェブラリーSでは、2000年にウイングアローの2着に入ったゴールドティアラが最高着順だった。

 過去、幾度となく牡馬(騙馬)の厚い壁に跳ね返されてきたフェブラリーSだが、G2時代とはいえ、唯一牝馬で優勝したのがホクトベガだ。デビューから3戦をダートに使われたように、当初から適性のあった馬ながら、その実力はダートに留まらなかった。

 芝重賞のフラワーC(G3)、札幌記念(G3・当時)を制した女王は、かつての牝馬三冠ラストとなるエリザベス女王杯(G1)も優勝した名牝。このレースには、武豊騎手とのコンビで人気を集めた二冠牝馬ベガも出走したこともあり、レース実況で生まれた「ベガはベガでもホクトベガ」のフレーズは、現在でも「~は~でも」の代表例として使われている。

 そんなホクトベガの名を世間に大きく知らしめることとなったのが、芝で頭打ちが続いた状況を打開すべく、陣営が再びダートに目を向けた1995年のエンプレス杯(G1・現G2)だった。

 雨で不良へと悪化したダート、初のナイター競馬と歓迎すべき条件にもかかわらず、ホクトベガは無人の荒野を行くがごとくの大楽勝を演じた。まずまずのスタートから2番手につけると、向こう正面では持ったままで先頭。馬なりのまま後続を引き離し、2着馬に3秒6差、着差にして18馬身もの大差をつけてゴールしたのだ。

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横山典弘騎手

 そして、このとき新・砂の女王の背に跨っていたのは、コンビ3戦目となった関東の名手・横山典弘騎手である。

 久々のダートで大観衆の度肝を抜いたホクトベガだが、芝に戻されたその後の5戦は精彩を欠く。現状ではやはりダートがいいと判断した陣営は、翌年の川崎記念(現G1)からダート1本に絞った。

 そして、横山典騎手とホクトベガの名コンビは、ここから驚くべき快進撃を続ける。

 このレースでドバイワールドC(G1)出走を予定していたライブリマウントを一蹴し、5馬身差で圧勝すると、続くフェブラリーSも楽々制覇。その後も交流重賞を渡り歩き連戦連勝を飾る。積み重ねたダート重賞の数はなんと10勝。ついにはドバイワールドCから招待されるまでの注目を集めた。

 しかし、引退レースとされた異国の地で砂の女王を待ち受けていたのは、あまりにも悲劇的な結末だった。

 環境の変化で一時は体調を崩し、ようやく落ち込んだ体重も戻って復調したものの、レースではいつもの行きっぷりを見せることなく後方からの競馬。最終コーナーでバランスを崩して転倒した結果、競走中止となって安楽死の処分が採られた。

「当初、ドバイ出走に前向きではなかったオーナーサイドが、横山典騎手や調教師の『ドバイで勝負してみたい!』という熱い思いを受けて、ゴーサインを出したという背景も……。しかも、レースでは手応えの悪いホクトベガを4角手前で強引に仕掛けたところで、転倒して故障してしまいました」(競馬誌ライター)

 落馬によって馬場に放り出された横山典騎手に最後方を追走していた馬が衝突しそうになった際、ホクトベガが体を前に投げ出して守る形となったという。当時を多く語ろうとしない横山典騎手だが、「ホクトベガ1頭だけじゃないけど、馬に命を助けてもらって、今こうしていられる。俺が強引な騎乗をしなければ、ああいうことにはならなかった」と話していたことは知られている。

 このときの苦い経験もあってか、横山典騎手は馬の行く気を尊重した乗り方が目立つようになり、走りたがらない、行く気を見せない馬は時として“後方ポツン”をするようになった。

 我々競馬ファンは、つい目先の馬券に気を取られ、無気力な騎乗だと責めてしまいがちだが、まずは馬が無事であってこその競馬でもある。表面的な情報のみに捉われず、関東の大ベテランのそんな想いも、脳裏の片隅に留めておきたい。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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