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JRA川田将雅「一度も勝てなかった」大本命が苦しい立ち位置、吉田隼人と同期の絆が話題も…… 競馬学校時代「20期エース」の今

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ポタジェ

 3日、阪神競馬場で行われた大阪杯(G1)を制したのは8番人気の伏兵・ポタジェ(牡5歳、栗東・友道康夫厩舎)だった。

 道中は5番手で進め、直線では逃げたジャックドールを捕らえて先頭に躍り出たレイパパレをマークするように進路を取ると、最後までしぶとく伸びて内のレイパパレにクビ差先着。会心の勝利に、殊勲の吉田隼人騎手は馬上で小さくガッツポーズを作った。

 そしてその直後、レイパパレの鞍上・川田将雅騎手がすかさず左手を差し伸べる。これに気付いた吉田隼騎手も右手を伸ばし、馬上でお互いを称え合う握手。真剣勝負の後の美しいひと幕に、ネットの掲示板やSNSなどでは感動の声が続出した。

 実はこの2人、年齢こそ違うものの、2004年にJRA競馬学校の騎手課程を卒業した同期にあたる。また、このレースで人気の一角に押されたジャックドールに騎乗した藤岡佑介騎手も、2人と同じ“20期生”。3人はいずれも前哨戦となった金鯱賞(G2)に同じ馬とのタッグで参戦しており、その時は藤岡佑騎手が1着で川田騎手が2着、吉田隼騎手は4着だった。

 今回は川田騎手が2度同じ轍は踏むまいと逃げる藤岡佑騎手にプレッシャーをかけ、直線ではリベンジを果たすG1勝利が見えかけた。ところが、そこに強襲してきたのが、同じく悔しい思いをしていた吉田隼騎手。後方から届かなかった前走の敗戦を糧に、今回は同期2人の背後にピタリとつく形で追走。悔いのない競馬をした川田騎手を執念で抜き去り、G1タイトルをもぎ取った。

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津村明秀騎手

 そんな同期のバチバチ感と絆が垣間見えた好勝負の中、実は「20期のエース」と呼ばれた男はこの舞台にいなかった。デビュー前の模擬レースで2戦2勝、成績優秀者に贈られる「アイルランド大使特別賞」も受賞した津村明秀騎手である。

 過去のインタビュー記事などを振り返ってみても、20期生が競馬学校時代を振り返る時には必ずと言っていいほど名前が挙がる同期の星。皆が「飛びぬけて上手かった」と口を揃え、今や現役トップジョッキーである川田騎手でさえも、「津村には一度も勝てなかった」と当時を振り返っている。

 藤岡佑騎手も「みんな打倒・津村で燃えていた」とライバル視していたことを明かしており、身近に高い目標があったからこそ、同期の中で切磋琢磨することができたと回想する。

 しかし、そんな彼らも今年がデビュー19年目。これまでを振り返ってみると、20期エースの歩みは順風満帆とは行かなかった。

 川田騎手が2008年にキャプテントゥーレで皐月賞(G1)を制し、2015年には吉田隼騎手がゴールドアクターで有馬記念(G1)を制覇。2018年には藤岡佑騎手がケイアイノーテックでNHKマイルC(G1)を勝ち、同期たちが悲願のG1制覇を成し遂げていく一方で、津村騎手は未だにG1勝利がない。それどころか、重賞12勝はすべてG3を勝ったもので、G2勝ちもないというのが現状だ。

 通算の勝ち星を見ても、川田騎手が1732勝で吉田隼騎手も1072勝、藤岡佑騎手も930勝で1000の大台が視界に入って来ている中、津村騎手は546勝と大きく差をつけられてしまっている。

 それでも、2019年にはカレンブーケドールとのコンビでオークス(G1)の2着に入ると、その後は秋華賞(G1)でも2着、ジャパンカップ(G1)でも2着と大舞台で存在感を発揮した。そもそも通算のG1騎乗回数が41回と少ない中で、初タイトルに向けて着実に前進している。

 特に3度目の2着となったJCは「一番悔しかったレース」と後に振り返っており、スワーヴリチャードで勝ったO.マーフィー騎手のウイニングランを目に焼き付けながら、「今までに味わったことのない感情」と回顧していた。

 ここまでのキャリアで味わった悔しさ、そして19年目の春に見た同期たちの奮闘をいかにして力に変えていくことができるか。この春のG1戦線は丸田恭介騎手の悲願の初タイトルで幕を開け、驚きと感動の結末が続いているだけに、津村騎手の“一発”にも期待は膨らんでくる。

 今後のG1戦線で出走表に「津村」の文字を見かけたら、闘志に火が付いた20期エースの逆襲に注意を払いたい。

(文=木場七也)

<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。

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