
宝塚記念(G1)グラスワンダーに捧げた父子制覇! メジロマックイーン、テイエムオペラオーもライバルに敗戦…番狂わせを引き起こすグランプリの誤算
宝塚記念(G1)は、阪神の内回り芝2200mという特殊な条件のため、適性を問われる小回りコースを得意とする馬が好走するレースだ。王道で実績を残してきた実力馬が思わぬ敗戦を喫することも珍しくない一方で、過去の優勝馬の中には生涯唯一のG1タイトルとなった馬もいる。
過去にはマーベラスサンデー、エイシンデピュティ、近年でもミッキーロケットなど多数の馬が該当。少々意外かもしれないが、1998年の天皇賞・秋(G1)で悲運の死を遂げたサイレンススズカもそうだった。
今を遡ること12年前の宝塚記念を制したアーネストリーも同じく、現役時代に最初で最後のG1勝ちとなったのが、上半期を締めくくる2011年のこの舞台だ。
前年に3番人気で3着に敗れながらも相性は悪くなかった舞台。この年は前哨戦の金鯱賞(G2)でルーラーシップに完敗していたこともあってか、6番人気の伏兵として出走した。2つ下の世代に前走で敗れたルーラーシップ、エイシンフラッシュ、ローズキングダムなどの強豪がいただけでなく、当時現役最強の評価を得ていた女傑ブエナビスタも参戦していたことを思えば、軽視されたのも仕方なかったか。
しかし、このときのアーネストリーは休み明けを使われたことで体調もアップ。主戦の佐藤哲三元騎手(現在は競馬評論家)のパートナーを信じた強気な騎乗が、最高の結果を手繰り寄せる。
ハナに立ったナムラクレセントを先に行かせた2番手でピタリと折り合い、ペースは前半1000m58秒7と流れたものの、持ったままの楽な手応えで4コーナーを待たずに先頭へ立つ。
後続各馬が慌ただしく追撃態勢を整える中、直線で佐藤騎手のムチが入ったアーネストリーはセーフティーリードを確保していく。ゴール前でブエナビスタが懸命に追い込んでくるも、エイシンフラッシュとの2着争いが精一杯。ほぼ独走態勢でゴール板を駆け抜けたアーネストリーだが、勝ちタイムも2分10秒1のレコードをマーク。前年のリベンジに成功した。
「スタートがいいことはわかっていましたからね。ただ、無理に控えたら持ち味が出ませんから、何か行ってくれればいいなと思っていました。この馬の前向きな気持ちを大事にしたかったので、本当に疲れました」
会心の勝利をそう振り返った佐藤騎手も、パートナーの前向きな気性や持ち前のスピードを最大限に生かす好騎乗。まさに人馬一体となって手に入れた戴冠である。
これに対し、まんまと術中にハマってしまったのが、2着に敗れたブエナビスタと岩田康誠騎手のコンビだ。
番狂わせを引き起こすグランプリの誤算
前半が流れために中団より後ろからの追走となったが、勝ち馬は一瞬の切れ味はなくとも、積極策を採れるスピードといい脚を長く使えるのが武器の馬。エイシンフラッシュやルーラーシップら、瞬発力に定評のあるライバル各馬にとっても、小回りコースが仇となってしまった。
また、2年連続2着に敗れたブエナビスタにとっても、父スペシャルウィークが同じ宝塚記念でアーネストリーの父グラスワンダーに完敗しており、目の前で同一G1における父子制覇の快挙を成し遂げられる屈辱を味わった。後にも先にもアーネストリーがブエナビスタ相手に先着できたのは、ただ1度この宝塚記念のみだ。
直線の長い東京で行われる日本ダービー(G1)を優勝した馬達も、2000年以降に12頭の出走がありながら、2006年のディープインパクトと12年のオルフェーヴルしか勝てなかった。
過去にもメジロマックイーンを負かしたメジロライアンやテイエムオペラオ―を倒したメイショウドトウのように、少し足りなかった馬が大物相手に一矢を報いる舞台としても有名な春のグランプリ。G1馬が8頭と豪華なメンバーの揃った今年にも、もしかしたら初G1勝利で悲願を達成するニューヒーロー、ヒロインが潜んでいるかもしれない。
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