JRA「完全敗北」で”影の王”の傀儡に? エージェント制度の改革「大失敗」 により、騎手は技より政治の”暗黒時代”突入か
そう語った記者の話によると、今後最も不安視されるのが[3]の項目だという。
あくまで一例だが、現在のエージェントで中心的勢力に君臨しているのは、M.デムーロ騎手と川田将雅騎手を仲介する井上政行氏や、福永祐一騎手や岩田康誠騎手、四位洋文騎手といった関西有力どころを管理する小原靖博氏といった、競馬専門紙『競馬ブック』のトラックマン、いわゆる「ブック系」のエージェントだ。
互いにG1常連の有力騎手を担当する以上、本来ならライバル同士の関係にあるはずだが、同じ『競馬ブック』のトラックマン同士ということで、当然ながら関係は深い。他にも足立雅樹氏などを合わせたブック系エージェントは、その一方で「小原軍団」と呼ばれるほど綿密な関係にある。
そうなると懸念されるのが、親交の深いエージェント同士が「騎手3人+若手1人」という個人単位だけでなく、騎手6人や7人といった”仲間内”で有力馬を囲い続けるという荒業が可能になってしまうことだ。
実際に一昨年の夏には、小原氏が自分の担当騎手以外の騎乗馬を斡旋したとして、JRAから約3か月間の業務停止命令を受けた事案もあった。しかし、今回[3]が決定されエージェントの役割に幅が出来たことで、これまでグレーゾーンだった複数のエージェントによる”囲い込み”が、堂々と可能になったという見方もあるようだ。
年明けには「兼業エージェント廃止」による競馬サークル内の”浄化”を掲げたJRAだったが、結果的に改革は頓挫し、逆にトラックマンとの兼業エージェント勢力が拡大しやすい地盤を作らされる羽目となった。まさにミイラ取りがミイラになった状況だ。
無論、現場の声を重視した結果ではある。だが、競馬を主催する唯一の存在が、このような「完全敗北」を喫した以上、今後エージェントの権力の拡大に歯止めが掛かる可能性は、限りなく低くなったと述べざるを得ないだろう。