
ディープインパクトを超える”予感”を残した弥生賞。『幻の三冠馬』フジキセキの願い
レースは単勝1.3倍の”主役”を皆が警戒してか、スタートから積極的に先手を奪いに行く馬がおらず、フジキセキは難なく2番手の好位につけた。同世代のトップクラスが集まった皐月賞トライアルといえども、もはやフジキセキに敵はいないのか。直線入り口で早くも先頭に立ったフジキセキ。あとは横綱相撲を決めるだけであった。
ところが休養明けのブランクか、フジキセキが思ったほど伸びない。角田騎手はまだムチを打っていないが、外から2番人気のホッカイルソーがぐんぐん脚を延ばし並びかけてきた。
「さあ、どうだ!?フジキセキ、危ないぞ!フジキセキ危ない!」
2歳王者のエンジンがようやく掛かったのは、ここからだった。ホッカイルソーが並びかけるや否や、父サンデーサイレンス譲りの闘争心に火が付いたフジキセキは再加速。難なくホッカイルソーを置き去りにした。
大勢が決した最後のゴール前、結局ムチを一発も使わなかった角田騎手とフジキセキが悠々とゴールするのとは対照的に、完敗を喫したホッカイルソーと蛯名騎手はうつむきながらのゴール。
少し抵抗を諦めるのが早かったようにも見えたが、ここはあくまで本番前のトライアル。ただ、それ以上にフジキセキのデビュー戦の手綱を取った蛯名騎手が、この馬の底知れぬ強さを誰よりも理解していたからのようにも思えた。
後に、フジキセキのラストクロップとなるイスラボニータで父が果たせなかった皐月賞(G1)を制覇した際、蛯名騎手はフジキセキに関して「絶対にクラシックに行く馬だから、(新馬戦の後に)手綱を取る角田には、大事にしろよと言った記憶があります」と語っている。
わずか1戦。それも一見クラシックとは関係なさそうな1200mのデビュー戦を乗っただけで、蛯名騎手ほどの名手にそこまで言わせたフジキセキ。同世代のトップクラスを子ども扱いした後、ますます三冠期待の声が高まったが、その僅か2週間後に屈腱炎が発覚。
これまで一度も本気で走ったことがなかったフジキセキは、ついにその底知れない”本当の力”を見せることなくターフを去ることとなってしまった。
あれから21年。今年も2歳王者が、弥生賞で始動する。
あの頃のように2歳王者が圧巻の走りを見せるのか、それとも他馬が勢力図の変化を証明するのか……弥生賞で燦然と輝きを放った”鉱石”フジキセキ。彼が15年にこの世を去ってから、最初の弥生賞が始まろうとしている。
ただ、それでもフジキセキの願いは一つだろう。
どうか、全馬無事に――。
「僕が乗った馬の中でフジキセキは間違いなくNo.1。ただ、彼がどれだけ強くても順調に使って勝った馬には敵わないです」
この後、ノースフライト、ジャングルポケット、ヒシミラクルなど数々の名馬の手綱を取った主戦の角田騎手の言葉が、すべてを表しているように思えた。やはり「無事是名馬」なのだ。
PICK UP
Ranking
5:30更新JRA「馬が走ってくれません」スタート直後の“レース拒否”に大反響!? 三浦皇成も打つ手なし……未勝利馬がまさかの「自己主張」で1か月の出走停止処分
アドマイヤ軍団が「G1・45連敗」武豊と絶縁し「40億円」と引換えに日本競馬界フィクサーの”逆鱗”に触れた凋落の真相?
浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
- 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
- JRA川田将雅「北村友一斜行」に激怒か。「不利を受けたなんて言うのは10年早い」数々の伝説と「これでも丸くなった」説
- JRA堀宣行調教師「パワハラ裁判」で敗訴。現代社会に取り残された”村社会”で、あの超大物調教師にもパワハラ疑惑が……
- 宝塚記念(G1)団野大成「謎降板」に関西若手のエースが関係!? 武豊の不可解な登場と突然のフリー発表…関係者を激怒させた「素行不良」の舞台裏
- 武豊やC.ルメールでさえ「NGリスト」の個性派オーナーが存在感…お気に入りはG1前に「無念の降板」告げた若手騎手、過去に複数の関係者と行き違いも?
- JRA武豊「繰り返された愚行」に安藤勝己氏も困惑……故・近藤利一さんを怒らせた敗戦から15年、またも追いかけたディープインパクトの幻想