追悼キングヘイロー。福永祐一の涙とヨシトミ先生の快挙
平成競馬を盛り上げた名馬の訃報が続いている。あのキングヘイローが急逝した。昨年4月に死亡したスペシャルウィークや、2011年に死亡したセイウンスカイと共にクラシックを盛り上げた名馬、人間でいえば約70歳となる24歳の大往生である。
キングヘイローは父ダンシングブレーヴ(凱旋門賞などG1を4勝)、母グッバイヘイロー(アメリカでG1を7勝の名牝)という血統背景を持つ良血馬。偶然騎乗することになったという、デビュー2年目の福永祐一騎手を背にクラシックで活躍。1998年の皐月賞ではセイウンスカイの2着に好走し、日本ダービーでは堂々の2番人気に支持された。しかし鞍上の福永騎手が同馬を制御できず、まさかの逃げる形となったキングヘイローは、馬群に沈み14着に大敗。その騎乗内容から福永祐一騎手はファンやマスコミから酷評。騎手も馬も若さゆえのものであったが、約465億円の馬券が売れたダービーでは、それも当然の反応だったとも言えよう(2018年は約270億円)。
その後福永祐一とキングヘイローのコンビは京都新聞杯、菊花賞、有馬記念で善戦するも勝てず、陣営はついに関東のベテラン柴田善臣騎手への乗り替わりを決断。その決断がキングヘイローの転機となる。年明け初戦の1999年東京新聞杯、中山記念と重賞を連勝し、完全に復活。どちらも後続を寄せ付けない圧倒的な内容だった。しかし初のG1制覇が期待された安田記念は、2番人気に支持されるも11着に敗退。そこからスランプに陥り、11か月ぶりに福永と再コンビを結成。マイルチャンピオンシップ(G1)2着、スプリンターズS(G1)3着と善戦するも勝ち切れず、陣営はフェブラリーS(G1)のダート路線に活路を見出した。ただこのチャレンジは1番人気13着で完全に失敗。しかしこの挑戦が同馬に火をつけたのか、続く第30回高松宮記念でブラックホーク、アグネスワールド、マイネルラヴといった強豪を相手に快勝、初のG1制覇を成し遂げた。なおその高松宮記念で2着だったディヴァインライトの鞍上は、かつてのパートナーである福永であり、福永本人は複雑な気持ちで同馬のウイニングランを眺めていただろう。
福永とキングヘイローは安田記念で再度コンビを組む機会があったが、そこでも3着に惜敗。その後福永は手綱を握ることなく、キングヘイローは暮れの有馬記念で4着に好走し引退、種牡馬となった。
その年の高松宮記念を優勝した馬が、暮れの有馬記念に出走して4着というのは非常に珍しい。これはキングヘイローがいかに幅広い距離適性を持っていたかを証明するものといえよう。
その後種牡馬となったキングヘイローだが、種付け料が100万円前後と、当時絶頂を誇っていたサンデーサイレンスの2500万円に比べ遥かに安価なこともあり、多くの繁殖牝馬に恵まれた。産駒はカワカミプリンセスが2006年の秋華賞とオークスを制し、そして2009年にローレルゲレイロが高松宮記念を優勝、親子2代にわたって短距離王の名誉を手にした。さらに活躍馬は距離や条件を問わず、メーディアはダートのJBCレディスクラシックを優勝、クリールカイザーは芝2200mのアメリカJCCを優勝。キタサンミカヅキはダートの地方交流重賞で活躍し、昨年のNARグランプリ2018年度代表馬である。またダイアナヘイローとダイメイプリンセスは芝の単距離重賞を優勝している。キングヘイローは昨年まで種付けを行っていたので、最後の産駒は再来年のデビューとなる。
キングヘイローを語るにあたり、福永祐一そして柴田善臣と二人の騎手を避けることはできないだろう。騎手としての経験が浅い福永、そしてベテランで実績も豊富な柴田。この二人が気性が激しいキングヘイローを育て上げたといっても過言ではないからだ。そして芝の1200mでG1を勝ち、2500mの有馬記念で4着、3000mの菊花賞で5着に好走。さらにフェブラリーステークスに出走するなど、走った距離は芝の1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2500、3000m、そしてダート1600mと10コースにも渡る。これほど幅広い距離で活躍した馬は稀だ。
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