JRA天皇賞・春(G1)ディアスティマ「人気急降下」も安藤勝己氏称賛の大健闘6着! 急きょ乗り替わりで今年「芝2勝」騎手が見せた意地
2日に阪神競馬場で行われた天皇賞・春(G1)は、3番人気ワールドプレミアが優勝。騎乗した福永祐一騎手は18度目の挑戦で念願の春盾獲りに成功した。
一方、2度目の天皇賞・春に挑んだのがディアスティマ(牡5歳、栗東・高野友和厩舎)に騎乗した坂井瑠星騎手だ。この日の阪神2Rで北村友一騎手が落馬負傷したため、急きょピンチヒッターとして23歳の若手が起用された。
2年前には10番人気のチェスナットコートを6着に導いた経験はあるが、阪神3200mコースは初めて。しかもディアスティマにはテン乗りという難しいタスクを課せられた。
G1通算5勝の北村友騎手からの乗り替わりとあって、ファンは正直に反応。乗り替わり発表後は単勝オッズがみるみる下落……落馬があった時間帯には8倍前後で4番人気に支持されていたが、午後に入るとオッズは9倍台に。そして午後3時を過ぎると、10倍台に突入し、最終的には12.6倍の7番人気でレースを迎えた。
9戦中7戦でディアスティマの手綱を取り、通算「4-2-1-0」と好相性を誇る北村友騎手からG1・17騎乗すべて4着以下の坂井騎手への乗り替わりに、ファンはシビアな判断を下したと言えるだろう。しかし、坂井騎手はそんな下馬評に逆らう好騎乗で見せ場を演出した。
戦前の予想では、ディアスティマかジャコマルのどちらかがハナを切るとみられていた。先に飛び出したのはディアスティマの方。すかさずジャコマルの横山和生騎手も外から競りかける構えを見せたが、坂井騎手はハナを譲らなかった。
1000m通過が59秒8、2000m通過も2分1秒3という淀みのない流れを作りだしたディアスティマと坂井騎手。逃げ馬には厳しいペースに思えたが、4角ではまだ手応えに余裕があり、直線を向いた。これには元JRA騎手の安藤勝己氏も「ディアスティマの手応えが良すぎた」とレースの明暗をわけた1つに挙げている。
直後にいたカレンブーケドールが外から交わしにかかるがディアスティマは必死に抵抗。残り200m地点まで先頭をキープする大健闘を見せた。最後は急坂で力尽きたが、人気を上回る6着という結果にはSNSなどでファンから称賛の声が多数みられた。
「当日昼前に急きょ騎乗が決まったにもかかわらず、見事な騎乗を見せてくれました。坂井騎手はこの日、1Rと6Rを除く10鞍に騎乗し、レースのシミュレーションをする余裕もなかったはず。ただ逃げ馬だったので、余計なことを考えずに臨めたのが良かったのかもしれませんね」(競馬誌ライター)
当の坂井騎手はレース後、「レースの映像を見て、先生やスタッフと話したイメージ通り」と騎乗の合間を縫って、しっかり過去の映像をチェックしていたことを明かした。そして「イメージ通り運べましたが、最後は苦しくなりました。初めての一線級相手によく頑張ってくれました」とパートナーの頑張りを称えることも忘れなかった。
坂井騎手といえば、23歳にして既に重賞5勝を挙げる関西屈指の有望株。昨年は自己ベストを更新する42勝を挙げたが、今年は前日に7勝目を挙げたばかり。特に芝のレースでは今年2勝と、昨年ほどの成績ではないのが現状だ。
「坂井騎手は2月中旬からサウジアラビアとドバイを転戦し、さらに隔離期間もあったため、4月中旬までの約2か月間にわたってJRAでは騎乗機会がありませんでした。勝ち鞍の少なさは、これが主因なのですが、それでも今年の勝率5.0%は1年目を下回る自己ワーストなので不調なのは間違いないですね。
同じ矢作(芳人)厩舎に新人の古川奈穂騎手が加わり、すでに6勝を挙げています。後輩ジョッキーの活躍に刺激を受けた部分もあると思いますが、同時に焦りもあるのではないでしょうか。今回見せた代打での好騎乗は今後につながると思いますよ」(同)
後輩の突き上げもあって、これまで以上に結果を求められる立場となった坂井騎手。海外修業の成果を見せる時は近づいている。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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