JRA 凱旋門賞(G1)コントレイル「逃亡」でディープボンドと立場逆転!? 国内専念で問われる三冠馬の品格…… 絶望的となった父ディープインパクト超え
フランスの競馬統括機関『France Galop』のホームページの発表によると、先週の天皇賞・春(G1)で2着のディープボンドが10月3日、フランスのパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1)に参戦することがわかった。
前哨戦のフォワ賞(G2)をステップに凱旋門賞挑戦は同馬の父キズナと同じローテーション。ノースヒルズの前田幸治代表は「彼は13年の凱旋門賞で4着だったキズナの子。緩い馬場をこなせますし、秋のフランスにふさわしい馬です」とコメントしている。
初G1制覇を狙った天皇賞・春を敗れたとはいえ、ディープボンドは1番人気を背負って勝ちに行く競馬で惜敗。3歳クラシックではG1に手が届かなかったものの、確かな成長と地力強化を印象付けた。
ディープボンドの凱旋門賞挑戦の報せに盛り上がった一方で、クラシック三冠を無敗で制したコントレイル(牡4、栗東・矢作芳人厩舎)は国内専念が既定路線。年内で引退し、種牡馬入りすることが濃厚だ。
ただ、コロナ禍の状況にあり、海外遠征へのリスクがつきまとうことは確かだが、コントレイル、ディープボンドのいずれもノースヒルズ系の馬である。2頭で挑戦というプランがあっても不思議ではなかったのではないか。
海外遠征を断念した理由は、やはり重馬場で開催された大阪杯(G1)で3着に完敗したことが大きいだろう。ディープボンドに対し「緩い馬場をこなせる」と評した前田代表のコメントからも、ヨーロッパ特有の力のいる馬場への適性を考慮したものと考えられる。
ベストは2000mと宣言した距離と同じ大阪杯で完敗し、陣営が目指している現役最強の座から後退したことで、無理をしない選択というのもわかる話だ。
だが、コントレイルは史上8頭目の三冠馬であり、シンボリルドルフやディープインパクトに続く3頭目の無敗三冠という栄誉を手にしている馬だけに、残念な決断だったともいえる。
「ノースヒルズとしては凱旋門賞の舞台ならば、コントレイルよりもディープボンドの方に勝算があると判断したからでしょう。ディープボンドはコントレイルとは逆に2400mの距離に不安もなく、重馬場の阪神大賞典(G2)を楽勝したように、力のいる馬場も得意としているタイプです。
また、年内の引退を発表したコントレイルは、ディープインパクトの後継種牡馬として期待されている馬です。三冠を達成したことで競走馬としての実績は十分という見方も可能です。将来的なことを考えた場合、コントレイル陣営の決断は理に適っています」(競馬記者)
それでも物足りなさを感じてしまうのは、直近の三冠馬であるディープインパクト、オルフェーヴルのいずれもが凱旋門賞に挑戦したからなのかもしれない。三冠馬とは世代最強の証明であり、古馬が相手となってからは現役最強馬であることを求められる存在である。これではどちらが三冠馬なのかわからない。
さらに、2年前の菊花賞馬ワールドプレミアが制した今年の天皇賞・春だが、2着ディープボンドは昨年コントレイルが制した菊花賞の4着馬。このとき2着のアリストテレスが4着、牡馬に比して長距離が苦手とされる牝馬のカレンブーケドールが3着に入り、ウインマリリンは5着と好走と、レコード決着の高速馬場もそう悪くない舞台設定だったように思える。
春の天皇賞を使わないローテーションは、競馬ファンが期待した最強の三冠馬のイメージと小さくない隔たりがある。コントレイル陣営が目標とする父の7冠を超えるには、次走に予定している宝塚記念と、秋の天皇賞、ジャパンC、有馬記念といったG1を全勝が条件。この時点でディープインパクト超えは既に絶望的ともいえそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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