福永祐一「自作自演」で“鉄の掟”に終止符! コントレイルを「ミスターシービー危機」からも救った? かつてダービーから嫌われ続けた男が武豊に次ぐダービー3勝の大変身
関東の若武者・横山武史騎手とエフフォーリアの無敗二冠に大きな注目が集まった今年のダービー。ハナ差10cmの叩き合いを制してこれを下したのは、福永祐一騎手とシャフリヤールのコンビだった。
福永騎手は昨年、無敗三冠に輝いたコントレイルに続くダービー連覇という偉業も達成した。ダービー初騎乗となった1998年のキングヘイローから20年の月日が流れ、2018年のワグネリアンで悲願の優勝を決めたのが3年前のこと。
あれからわずか4年の間に、はやダービー3勝。これは最多5勝を誇る武豊騎手に次ぐ勝利数なのだから驚きだ。かつて、あれほどまでダービーから“嫌われた”男がもはや別人と思えるほど“好かれて”いる。
そして、福永騎手はこの勝利で「乗り替わりでは勝てない」といわれているジンクスもクリアすることにもなった。1986年以降、ダービージョッキーとなるには「前走からの継続騎乗」が絶対条件だった。ついに、35年間続いていたこの「鉄の掟」にも終止符が打たれたのである。
近年でも19年のダービーで単勝1.6倍の支持を集め、絶対的存在と見られていたサートゥルナーリアが4着に敗れた。このときも皐月賞(G1)で騎乗したC.ルメール騎手の騎乗停止により、D.レーン騎手へと乗り替わった影響も大きかったと考えられている。
だが、シャフリヤールと福永騎手のコンビは継続騎乗でこそないものの、初騎乗だった訳ではない。
陣営としては共同通信杯(G3)から皐月賞が青写真だっただろうが、同レースでエフフォーリアの3着に敗れた。賞金の加算に失敗する誤算もあった結果、皐月賞を使わずに毎日杯(G3)からダービーに向かうローテーションが選ばれたのだろう。
毎日杯は川田騎手の手綱で勝利したが、同騎手にはダノンザキッドというお手馬がすでにいたため、実質は福永騎手の代打騎乗。福永騎手はルペルカーリアで4着に敗れていたが、シャフリヤール陣営の福永騎手への信頼は揺るがなかった。
また、エフフォーリアの無敗二冠の阻止に成功したことは、福永騎手とコントレイルにとっても非常に価値がある。同馬は昨年の菊花賞(G1)を制して以降、ジャパンC(G1)、今年の大阪杯(G1)を連敗。レース後の疲れが取れずに、予定していた宝塚記念(G1)の回避が発表されたばかり。
もし、エフフォーリアが二冠、さらには三冠も制することがあれば、秋のG1戦線でコントレイルと直接対決も実現した可能性がある。同馬が敗れでもしたら、同じ三冠馬ながら翌年のシンボリルドルフに勝てなかった前年のミスターシービーと、似たような状況に置かれる可能性もゼロとはいえなかっただろう。
福永騎手が不名誉な “リスクの芽”をダービーの段階で摘み取ったことは、連敗中の三冠馬コントレイルにとっても大きな援護射撃となったかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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