
スプリンターズS(G1)元JRA安藤勝己、福永祐一も「過小評価」したピクシーナイトの裏切り!? 14年ぶり3歳馬勝利の決め手となったのは?
「恐らく陣営すら想像以上のスピードで進化しとるんやと思う。来年に天下取る馬って見立てをいい意味で裏切られた」
3日に中山競馬場で行われたスプリンターズS(G1)直後にTwitterでそうつぶやいたのは元騎手の安藤勝己氏。もちろん「想像以上のスピードで進化した」というのはピクシーナイト(牡3歳、栗東・音無秀孝厩舎)のことだ。
3歳馬が秋のスプリント王に輝くのは2007年のアストンマーチャン以来、実に14年ぶり。スプリンターズSの歴史をひもとくと、ピクシーナイトの勝利は非常に価値が高いことがわかる。
このレースがG1に格上げされたのは1990年。当初は有馬記念(G1)の前の週にあたる12月中旬ごろに開催されており、これは1999年まで続いた。この10年間で秋のスプリント王の座に就いた3歳馬は4頭いたことからも、現在ほどレアケースのイメージはなかった。
ところが、2000年に施行時期が初秋の中山開催最終週に移行すると、一転して3歳馬は苦戦を強いられるようになる。昨年までの21年間を遡っても、勝ったのはアストンマーチャンだけという惨憺たる状況だった。
「レース体系の見直しがあった2000年にスプリンターズSの開催時期が3か月近くも早まりました。ところが3歳馬の負担重量は牡馬が55kg、牝馬は53kgのまま。もちろん個体差はありますが、夏の上がり馬が注目されるように一般的にサラブレッドは3歳夏ごろから4歳にかけて大きく成長するといわれています。
3歳馬にとってこの時期の3か月が非常に重要ということは、過去30年のスプリンターズSの結果が物語っています。ピクシーナイトは確かにレース展開などに恵まれた面もありましたが、完成途上の身でレシステンシアに2馬身差をつけたことは凄まじい成長を見せたとべきでしょう」(競馬誌ライター)
そんなピクシーナイトのスプリンターとしての素質を早くから見抜いていたのが、他ならぬ福永祐一騎手だ。
ちょうど3か月前の7月5日、福永騎手は、お笑い芸人「ビタミンS・お兄ちゃん」の『お兄ちゃんネル』にリモートで出演。その際、ピクシーナイトについてこう語っていた。
「(初めて)跨った時からいいスプリンターになると直感的に思った。3歳の時は(3歳馬限定の)1200mのG1がないから、どうしてもNHKマイルCが目標になる。シンザン記念(G3)を逃げ切った時点で、そのあとのマイル戦は正直厳しくなると言っていた。でも1200mになったら絶対に走るから(とも言っていた)。あの馬は来年すごくいいスプリンターになると思うよ」
このライブ配信が行われたのは、ピクシーナイトが自身初のスプリント戦、CBC賞(G3)に出走した翌日。福永騎手の話しぶりからも、ピクシーナイトのスプリンターとしての将来性の高さがヒシヒシと伝わる内容だった。
しかし、前走のCBC賞で2着に敗れたこともあってか、完成する時期を控えめに「来年」としていたのも印象的だった。ピクシーナイトはいい意味で福永騎手の期待を裏切り、「今年」早くもスプリンターズS制覇という快挙を遂げてしまった。
福永騎手はレース後、「想像を超える走りだった」と愛馬を称え、音無調教師は次走プランに香港スプリント(G1)を挙げた。
22回の香港スプリントのレース史上、3歳馬による勝利はまだない。もしピクシーナイトが選出されれば、初の快挙に挑むことになるが、「陣営すら想像以上のスピードで進化中」のピクシーナイトなら、そんなハードルもあっさり超えてくれるかもしれない。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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