JRA「パワハラ裁判」木村哲也調教師が復帰。大塚海渡騎手への暴言、暴力行為による調教停止処分から約3か月…若手実力派調教師の汚名返上に期待
弟子だった大塚海渡騎手(美浦・フリー)への暴行、暴言などのパワハラにより、土浦簡易裁判所から略式起訴を受け、罰金刑が確定したことでJRAから3カ月間の調教停止処分を受けていた木村哲也調教師(美浦)が、11月1日付けで調教業務を再開した。
事の発端は2019年の12月、木村調教師が当時所属騎手であった大塚騎手の頭を平手でたたいたとして暴行容疑で起訴された。また他にも度重なる暴言、暴行によるパワハラにより精神的苦痛を受けたとして、木村調教師に対して850万円の賠償を求めて大塚騎手が訴訟を起こす事になった。その後、暴行罪に対しては罰金刑が確定し、民事訴訟については木村調教師側が大塚騎手に対して暴行、暴言についての謝罪と解決金を支払うという形での和解が成立した。
この2人の師弟関係について、以前『netkeiba.com』に掲載されたインタビューで木村師は「今思うとやり方を間違ったなという部分はいっぱいあるのですけど、競馬学校期間中は怒鳴り倒しましたね。彼は泣いてたでしょうね」と師弟関係が始まった当初、かなり厳しく接していたと振り返っている。
一方で大塚騎手の初勝利のレースでは「自厩舎の馬で何とかしてあげたいと思っていました。ゴールした瞬間はガッツポーズしちゃったりしたんです」と弟子への熱い思いも語っている。
パワハラに関する裁判では、木村師の度重なる暴力や、「のろま」「おまえは底辺なんだよ」「厩舎のお荷物」などの暴言により精神的に追い込まれたとされている。木村師の言動などについては以前から競馬サークル内でも噂されており、内部に詳しい競馬誌ライターによると「厳格な性格で周囲にも完璧を求める」と、言われていたそうだ。木村師の周囲へもミスを許さない性格が、愛弟子に対して限度を超える指導に走ってしまう発端になったのかも知れない。
被害を受けた大塚騎手はというと、今回の訴訟で支払われる和解金については、暴力や暴言がなくなる活動に尽力している機関、団体に全額寄付する事を明らかにしており、「今回の訴訟を契機として、今後競馬サークル、スポーツ界をはじめ、世の中から暴力、暴言がなくなることを願っています」とコメントしている。
木村調教師と言えば、プリモシーンやゼーヴィントといった重賞勝ち馬をはじめ、2018年にはステルヴィオで厩舎初のG1勝ち(2018年マイルCS)を収め、同年には全国リーディング7位(関東3位)となり最高勝率調教師、優秀技術調教師の各JRA賞も受賞している関東の名トレーナーの一人である。
現在の日本競馬界の大本流であるノーザンファーム生産馬を多く委託され、今年もフェアリーS(G3)勝ち馬で秋華賞(G1)2着のファインルージュ、ラジオNIKKEI賞(G3)勝ち馬のヴァイスメテオールなど有力3歳馬を管理。また今週末に開催されるアルゼンチン共和国杯(G2)で連覇を狙うオーソリティも木村厩舎の管理馬である。
これほどの実力馬を預託された木村師には、調教師としての活躍のみならず、良識ある指導者として競馬界を引っ張っていってくれることを期待したい。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。
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