JRA 5億円ホースの影に潜む「G1級ヒロイン」の存在。オークス馬輩出の隠れた出世レースに、シルクレーシングが送り込む次世代のアーモンドアイ候補とは
22日(土)、中京競馬場で行われる若駒S(L)は19年のセレクトセールにて5億円で落札されたリアドが出走することで、大きな注目を集めている。
他にも、父がハービンジャーで母がディアデラノビアの良血馬グランディアや、秋華賞(G1)や海外G1も制したディアドラの全弟リューベックなどの素質馬も集まったため、クラシックへ向け見応えある一戦となりそうだ。
そんな素質馬たちに影を潜めて、一部ではオークス候補と噂の牝馬が23日(日)に中山競馬場で行われる若竹賞(1勝クラス)に出走を予定している。シルクレーシングが送り込むイルチルコ(牝3、美浦・田村康仁厩舎)だ。
過去の勝ち馬には、10年のオークス(G1)を同着で制したサンテミリオンや、19年のクイーンエリザベス2世C(G1)や香港C(G1)を勝ったウインブライトなどがいる、知る人ぞ知る出世レースだ。今回は鞍上にC.ルメール騎手を起用してきたあたり、陣営の本気度が垣間見える。
ルメール騎手とシルクレーシングの勝負服といえば、誰もが思い浮かぶのはアーモンドアイだろう。20年に惜しまれながらもターフを去った名牝は、ルメール騎手とのコンビで史上最多の芝G1・9勝を挙げたことは記憶に新しい。
しかしアーモンドアイが引退した後、シルクレーシングでは牝馬のG1級が不在という形が続いている。実績馬を並べてもサリオスやオーソリティ、ピクシーナイトなど、牡馬の活躍が目立っている印象だ。アーモンドアイ以来の大物牝馬誕生を心待ちにしているファンもいるだろう。
イルチルコの半兄グランシルクは、現役時に京成杯AH(G3)を勝利している。強烈な末脚を武器に重賞戦線でも活躍した馬で、特に中山競馬場で見せた怒涛の追い込みは印象深い。
そんな兄を彷彿させるような末脚を繰り出したのが、前走の葉牡丹賞(1勝クラス)だ。
2番枠からのスタートを無難にこなし、道中はじっくりと内で脚を溜めた。4コーナーに差し掛かる手前で馬群を縫うように進出を始め、最後の直線では大外に持ち出す。前を行く馬達が中山競馬場最後の急坂で失速するなか、ただ1頭別次元の脚で猛然と追い込んだ。
僅かに届かずクビ差の2着に敗れたが、走破時計の2分0秒6は同じ舞台のホープフルS(G1)を勝ったキラーアビリティの勝ち時計と同タイムだ。すでに同世代の牡馬一線級を相手でも、十分通用する計算だ。
当時、騎乗していた津村明秀騎手が「レース前、ピリピリした感じでゲート内でもキョロキョロしていました。しかし競馬は上手で、折り合いもついて馬群の中から伸びてくれました。これからまだよくなる馬です」とレース後にコメントした通り、まだまだ伸び代を感じさせる内容でもあった。
「デビュー時から一貫して中距離を使っている点から、陣営はオークスを見据えているでしょう。
管理する田村調教師は、まだクラシックでは勝ち星がないものの、15年の阪神JF(G1)や16年のNHKマイルC(G1)を制したメジャーエンブレムを筆頭に、08年と09年のフローラS(G2)を勝ったレッドアゲートやディアジーナなど、3歳牝馬戦線で良績を挙げています。イルチルコも順調にいけば、大舞台を目指せる器です」(競馬誌ライター)
レースが行われる1月23日は、イルチルコの誕生日でもある。未来ある牝馬がバースデーVを飾り、クラシックへ弾みをつけたい一戦だ。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?
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