JRA大阪杯(G1)エフフォーリアで堅い「先入観」は命取り!? ジャックドールにも不安材料、人はなぜ「釣り針」に騙されてしまうのか
4月3日、阪神競馬場で行われる古馬の中距離G1・大阪杯は、早くもエフフォーリアの1強ムードが濃厚だ。
破竹の5連勝で挑戦してきたジャックドールの勢いは侮れないとはいえ、前走の金鯱賞(G2)が初重賞制覇。昨年の皐月賞(G1)、天皇賞・秋(G1)や有馬記念(G1)を制し、G1・3勝のエフフォーリアに比べると、実績は明らかに見劣っている。
ちなみに昨年の大阪杯(G1)は、コントレイルやグランアレグリアにサリオスといったトップクラスの実力馬が出走。多くのファンも3強対決に興味津々だったが、馬券の対象となったのは3着のコントレイルのみだった。
グランアレグリアは4着、サリオスも5着と敗れたレースで優勝したのは、4番人気で逃げ切り勝ちしたレイパパレ。良馬場で始まった当日だったが、集中的な雨の影響で9Rから稍重となった芝コースは、メインレースを迎えた頃には重まで悪化していた。
想像以上の道悪適性を見せた勝ち馬に対し、切れ味を武器とする3強が能力を発揮し切れなかった影響も大いにあった。レース後のコメントでも、各陣営は道悪に敗因を求めていた。
これと同じく先週の高松宮記念(G1)も、雨の影響が3連単278万馬券の大波乱に繋がったといえないだろうか。
1番人気に支持されたのは、昨年の2着馬レシステンシア。渋った馬場はむしろ得意なくらいで、C.ルメール騎手がドバイに遠征する関係で起用された鞍上も横山武史騎手。現在、国内重賞で連敗が続いている主戦よりも頼りになるという声もあった。
モズスーパーフレアやビアンフェなど、逃げてこその馬も不在。昨年の勝ち馬ダノンスマッシュは引退し、スプリンターズS(G1)を勝ったピクシーナイトも出走しないなら、ファンの多くがレシステンシアの凡走を想像することは難しかったはずである。
にもかかわらず、いざレースが始まるとレースは思わぬ展開を見せる。自らハナに立って前半33秒4の急流を作り出した横山武騎手の強気な騎乗も影響したのか、レシステンシアは直線半ばで力尽きて6着に敗退。昨年暮れの香港遠征から休み明けで18キロ増の馬体重も無関係といえなくはないが、これには本人も「なんで負けたんだろう」と首をかしげるほかなかった。
しかし、追い込み一辺倒だった8番人気のナランフレグが殊勲の大金星を挙げたことを考えると、後ろの馬に有利な展開だったようにも感じられる。逃げ馬不在でおそらく平均からスロー、差し追い込み馬に厳しい展開を予想したファンにとっては、想定外の結果といえる。
そして、こういった先入観は、大阪杯でも同様に危険だ。戦前からエフフォーリアが敗れる可能性は限りなく低く、ジャックドールもおそらく逃げると考えられているものの、レースが始まってみないことには分からない。
「この馬で間違いない」「きっとこういう作戦を取る」といった予想が裏切られることは、競馬において日常茶飯事。最終的な結論を出す前に、もう一度冷静に振り返る必要もありそう。
例えば、先週の阪神開催の芝レース。土曜は全体的に前の馬が残ったケースが目立った一方で、日曜は一転して差し追い込み馬が台頭した。思い出したいのは、昨秋の秋華賞(G1)やエリザベス女王杯(G1)の波乱だ。
1番人気に推されていたソダシ、レイパパレはいずれも先行タイプ。どちらも直線の短い内回りコースだった。大阪杯もまた内回りの芝2000m戦だけに何があっても驚けない。
エフフォーリアVSジャックドールの一騎打ちといった見え見えの「釣り針」にそのまま食いついてもいいのか、それとも先週同様に想定外の展開と結末が待ち受けているのか。
最後の最後まで頭を悩ませたいと思う。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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