
JRA被害者イルーシヴパンサー「1番人気」に陣営も嘆き節!?“当確”シュネルマイスターから一転…レース直前の「逆転劇」は何故起きたのか

「1番人気はいらない。1着だけ欲しい」
1997年の日本ダービー(G1)で伏兵サニーブライアンを二冠に導いた大西直宏騎手の名言だ。だが、あれから25年が経った今年、まさかこのような形で再び日の目を見るとは誰が予想できただろうか。
今年のG1戦線は、まさに「1番人気はいらない」である。
5日、東京競馬場で行われた春のマイル王決定戦・安田記念(G1)は、4番人気のソングラインが勝利。昨年のNHKマイルC(G1)をハナ差で敗れたシュネルマイスターとの叩き合いを制し、待望のG1初制覇を飾った。
その一方、今年のG1戦線を支配している“ジンクス”に飲まれてしまったのが、1番人気のイルーシヴパンサー(牡4歳、美浦・久保田貴士厩舎)である。
昨年、エフフォーリアが勝った皐月賞(G1)で10着に敗れた後、仕切り直しとして新たな主戦・田辺裕信騎手を迎えたイルーシヴパンサー陣営。マイル路線に舵を切ると、その策がピタリとハマり東京新聞杯(G3)を含む4連勝で、一気に安田記念の有力候補に浮上した。
しかし、最終的にこの馬が1番人気に推されることを予想できたファンは多くなかったようだ。
イルーシヴパンサーの1番人気は、あのジンクスのせい?

実はレース直前まで、1番人気は昨年のNHKマイルCを制し、秋のマイルCS(G1)でも2着したシュネルマイスターだった。昨年、グランアレグリアやダノンキングリー、インディチャンプなどのマイルG1馬が一斉に引退した中、大手競馬ポータルサイト『netkeiba.com』を始め、数多くのメディアが本馬の1番人気を予想していた通り、極めて順当な人気だったはずだ。
ところがレース当日15時を回り、いよいよ本番が近づくにつれ、シュネルマイスターとイルーシヴパンサーの単勝オッズが急接近。最後は、まるで押し出されるかのようにイルーシヴパンサーが単勝4.5倍の1番人気となった。
これにはネット上の競馬ファンも、レース後にSNSや掲示板などで「は? イルーシヴパンサーが1番人気だったの?」「全然知らなかった、いつの間に」「シュネルマイスターが1番人気だとばかり……」といった困惑の声が続々。
中には「イルーシヴパンサーが飛ぶのは1番人気になった時点でわかった」という声まであった。
「東京新聞杯で後にヴィクトリアマイル(G1)で2着するファインルージュを負かしていますから、ここでも人気になると思っていましたが、まさかイルーシヴパンサーが1番人気になるとは……正直、驚きました。海外帰りのシュネルマイスターが490kgと昨年のマイルCSから10kg増えていましたが、パドックの気配は良かったですよ。
結局、レース直前に代わったみたいですが、もしかしたら1番人気馬に対する買い控えがあったのかもしれません」(競馬記者)
記者がそう話すのも、今年のG1は何故かずっと1番人気が敗れ続けているからだ。
ちなみに今年はすでに2月のフェブラリーSからこの日の安田記念まで11のG1レースが行われたが、1番人気の全敗はグレード制導入以降、最長の記録を更新し続けている。それも通算成績は11戦で【0.1.1.9】と悲惨そのもの……。
馬券に絡んだのは、天皇賞・春(G1)のディープボンド(2着)、皐月賞(G1)のドウデュース(3着)のみ。掲示板(5着以内)まで広げてもNHKマイルCのセリフォス(4着)、日本ダービー(G1)のダノンベルーガ(4着)が加わるだけという信じられない結果が残っている。
そんな状況になれば、レース直前まで1番人気になっていたシュネルマイスターを買い辛くなるのは、ファンにとって当然の心理だろう。その隙に、次に馬券が売れていたイルーシヴパンサーが浮上したというわけだ。
だがその結果、イルーシヴパンサーは上がり最速タイとなる32.6秒の“鬼脚”で追い上げたものの8着止まり。今年のG1における1番人気の連敗は11となった。

レースは1000m通過が58.7秒と、過去5年でも断トツで遅いペース(次点が昨年の57.8秒)となったが、レース後に田辺騎手が「動けない位置に入ってしまった」と言えば、久保田調教師も「みんなが走れる時計になっちゃって、スペースもなかった」と不完全燃焼を強調。
もしかしたら1番人気になったことで、周囲のマークも厳しくなったのかもしれない
「レース後、田辺騎手も『上位馬も脚が溜まっていた分、最後は同じ脚になってしまいました』と話していましたが、イルーシヴパンサーが32.6秒の末脚を使っても、勝ったソングラインや2着のシュネルマイスターに32.9秒で上がられては届くはずもありません。後方から行くのがこの馬のスタイルですが、やはり早めに動けなかったのが大きな敗因だと思います。それにしても1番人気は厳しい結果が続いていますね」(別の記者)
「競馬だからね、仕方ない……。のびのび走れなかった。また立て直したい」
レース後、そう悔しさを漏らした久保田調教師。ちなみにこの日、今年のG1戦線を支配していたもう1つのジンクス「粗品の呪い」は、お笑いコンビ「霜降り明星」の粗品が本命に挙げたソングラインが勝ったことでようやく止まった。
果たして、G1・1番人気の連敗はどこまで続くのか、いよいよ春G1で残すは締めくくりとなる宝塚記念(G1)だけである。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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