JRA宝塚記念(G1)横山武史「これでは伸びない」 エフフォーリアの力負け疑惑深まる…悩める王者がいよいよ崖っぷち
上半期を締めくくった宝塚記念(G1)は、横山和生騎手の2番人気タイトルホルダーが2着ヒシイグアスに2馬身の差をつけて快勝。2分9秒7(良馬場)の勝ち時計はレース&コースレコード。ファン投票1位に恥じない鮮やかな勝利だった。
「僕がひるまないように馬を信じて一緒に走っていきました」
圧巻のレースをそう振り返った横山和騎手だが、道中の冷静な手綱捌きも光った。スタートで後手に回ったパンサラッサが、強引にハナを奪われるシーンもあったが、2番手でピタリと折り合ったのは、パートナーへの絶大な信頼があったからだろう。
陣営から凱旋門賞挑戦プランも飛び出した新王者のこれからは非常に楽しみ。同じく出走を表明しているドウデュースとの対決も現実味を帯びてきた。
悩める王者がいよいよ崖っぷち…
その一方、横山武史騎手とエフフォーリア(牡4、美浦・鹿戸雄一厩舎)のコンビにとっては、非常に厳しい結末が待っていた。
断然人気を裏切った大阪杯(G1)からの巻き返しを狙った宝塚記念でも、ファンは昨年の年度代表馬を引き続き1番人気に支持。前走の敗因を特定できないままの出走だったとはいえ、ブリンカーを装着した最終追い切りでは抜群の動きを披露。主戦を任される横山武騎手も「あんなものではない」と手応えを掴んでいたはずだった。
しかし、実際にブリンカーを着用して大一番に臨んだものの、好調時のような行きっぷりが見られずに6着に完敗。着順こそ9着から前進したとはいえ、現役最強馬に名乗りを挙げた昨年の有馬記念(G1)とはまるで別馬のような敗戦といえる。
少なくとも前走より良化したはずのエフフォーリアは、なぜここまで不甲斐ない競馬を続けてしまったのか。
ひとつ気になったのが、前半からペースの流れる競馬に不安があったことだ。
過去、エフフォーリアは有馬記念まで前半1000m通過で60秒を切るような厳しいラップを経験したことがなかった。当時もタイトルホルダーとパンサラッサの2頭が揃っていたものの、暮れの中山で力を要する馬場。2500mの距離を後方から追い上げての勝利だった。
結果的に勝ちはしたが、道中のポジションはそれまでのような好位よりもやや後ろ。ペースが速いと置かれ気味になる弱点も見え隠れしていたのかもしれない。そして、前半1000m通過が58秒8の大阪杯でも最後の直線で10番手。道中で追走に手間取ったことと無関係ではないだろう。
「宝塚記念は有馬記念や大阪杯よりさらに厳しい57秒6のハイペースでした。これは横山武騎手もある程度は想定していたはずですが、今回も直線の位置取りは10番手。勝ったタイトルホルダーから約6馬身近く離されてのゴールは、善戦したと呼ぶには程遠い内容といえるでしょう。
太目残りを懸念された大阪杯から2キロしか減らなかった馬体重も気になりますし、2度目の輸送ももしかしたらまだ影響していそうな感じです。いずれにしても今日の展開では、前々で競馬をしていたとしてもそれほど結果は変わらなかった気がします」(競馬記者)
また、京都競馬場の改修工事による変則開催のため、6月の阪神開催は2週間。穴馬の逃げ切り勝ちの目立った高速馬場は、例年以上にスピードを要求される舞台設定となっていた。
「ペースが速過ぎて、ついていくのが精一杯でした。直線に向きましたが、これでは伸びないですね」
直接対決で3戦無敗のタイトルホルダー相手に4度目で初の黒星を喫した宝塚記念。今回ばかりは、横山武騎手も完敗を認めるしかなかった。
絶対に落としたくなかった大一番を敗れたことでいよいよ崖っぷちに立たされたエフフォーリアだが、悩める王者の復活は秋の復帰戦を待つしかない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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