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JRA札幌記念(G2)「1番人気10連敗」ソダシにモーリスの陰?

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ソダシ 撮影:Ruriko.I

 今週は伝統の札幌記念(G2)である。1997年からG2に格上げされ、今年で58回となる北海道開催の象徴ともいえる重賞レースだ。いずれはG1へ昇格といった声もあるが、今年もG1級の豪華メンバーが揃った。

 白毛の女王ソダシといとこのハヤヤッコ、中距離界の実力馬であるパンサラッサとジャックドール。さらに香港のG1を2勝しているグローリーヴェイズ、オークス馬ユーバーレーベン、日本ダービー馬マカヒキ、ウインマリリン、ユニコーンライオンなど、芝2000mのG1レースである大阪杯に匹敵する顔ぶれだ。

 過去の優勝馬を見てもエアグルーヴ、セイウンスカイ、ファインモーション、ヘヴンリーロマンス、アドマイヤムーン、アーネストリー、トーセンジョーダン、ハープスター、ブラストワンピース、ネオリアリズムなど中距離路線を代表する名馬がズラリ。

 それだけに、さぞかし1番人気が強いレースだと思われるが、意外にもこの札幌記念は過去10年で1番人気は10連敗中なのである。

■札幌記念で敗退した1番人気馬(2012~2021年)

2021年 ラヴズオンリーユー(2着)
2020年 ラッキーライラック(3着)
2019年 フィエールマン(3着)
2018年 マカヒキ(2着)
2017年 ヤマカツエース(3着)
2016年 モーリス(2着)
2015年 トーホウジャッカル(8着)
2014年 ゴールドシップ(2着)
2013年 ロゴタイプ(5着)
2012年 ダークシャドウ(2着)


 ここ2年はラヴズオンリーユーやラッキーライラックの牝馬が期待に応えられず、そしてゴールドシップやマカヒキなどクラシックホース達も1番人気で敗退している。夏のこの時期のレースだからか、それとも次のレースを見据えた仕上げだからか、あるいは札幌の洋芝という条件が合わないのか、敗因は様々であろう。

 いずれにせよ1番人気が勝てていないという現実は、決して軽視すべきものではない。

 今年の1番人気候補はソダシ、ジャックドール、パンサラッサだろうが、おそらく白毛の人気も相まって、昨年の優勝馬でヴィクトリアマイル(G1)を圧勝したソダシが1番人気に支持されると思われる。

 昨年は後にブリーダーズCフィリー&メアターフ(G1)を制したラヴズオンリーユーに先着して勝利。懸念された2000mの距離も克服し、札幌の芝コースは札幌2歳S(G3)を含む2戦2勝の好相性。ゆとりのあるローテーションで状態に大きな不安はなく、かなりのチャンスがあると見込まれる。G2に格上げされて以降、このレースを連覇したのは1997年と1998年のエアグルーヴのみ。同馬以来の快挙となるか注目である。

 しかし1番人気が10連敗という事実から見ても、ソダシが危険な人気馬になることは間違いない。果たしてソダシがこの連敗記録を止めることができるのか、それとも不の流れに逆らえず敗退してしまうのか。

 ここで気になる馬がいる。それが2016年にこのレースを断然の1番人気で敗退したマイル王モーリスだ。

 モーリスは前走の安田記念(G1)で2着に惜敗したものの、マイルのG1レースを4連勝するなど、圧倒的なマイル実績を残してきた。2000mとなった札幌記念で敗退したが、次走の天皇賞・秋(G1)を勝利したことから距離よりも、前走までマイル戦を使ってきた影響が大きかったと考えられる。となれば、同じマイル路線を歩んできたソダシも少なからず影響はあるだろう。


・モーリス 札幌記念までの2戦と札幌記念の着順

チャンピオンズマイル(G1)1600m 1着
 ↓
安田記念(G1)1600m 2着
 ↓
札幌記念(G2)2000m 2着


・ソダシ 札幌記念までの2戦

フェブラリーS(G1)1600m 3着
 ↓
ヴィクトリアマイル(G1)1600m 1着
 ↓
札幌記念(G2)2000m ?着


 ソダシは昨年に札幌記念を勝利して2000mの距離は克服したかと思える。だが、その大きな勝因は52kgの斤量に恵まれたこと。そして向正面から先手を取って押し切る奇襲が成功したこと、さらに当時はまだ他馬からマークされるほどの存在ではなかったことも大きい。

 だが今年はディフェンディングチャンピオンであり、マークを受けるのは間違いない。しかも昨年と比べて今年は出走頭数が多く、ライバルのレベルも上。昨年は途中から先手を取り押し切ったが、今年はパンサラッサやジャックドールが存在し、厳しい流れとなるのは明白だ。昨年のような作戦は通用しないだろう。

 昨年は2400mのオークス(G1)から距離短縮で挑んだ一戦だったが、今年は1600mのヴィクトリアマイルから距離延長となるレース。モーリスのようにマイルG1を3勝とマイル寄りの実績であること、そして1600mから2000mへの距離延長は、おそらくソダシにとってプラスではない。

 連覇を果たしたエアグルーヴの再現を期待する声もあるが、 エアグルーヴは牝馬ながら天皇賞・秋を勝利し、ジャパンC(G1)2着、有馬記念(G1)3着など牡馬顔負けの成績を残してきた。そして札幌記念も4歳と5歳に、55kgと58kgでともに1番人気で勝利という女傑であった。ソダシは牝馬限定のマイルG1を3勝と、中距離よりもマイル寄りの成績に傾倒していることもあり、エアグルーヴとはタイプが異なる。

 過去の札幌記念において、1番人気で勝利したエアグルーヴと1番人気で敗退したモーリス。エアグルーヴに続く連覇が期待されつつも、ソダシのイメージが重なるのはやはりモーリスと言えるだろう。

 この夏最大の注目レースである札幌記念。ファンの注目を集めるソダシの好走に期待したいところだが、現状では不安要素の方が大きい。

仙谷コウタ

仙谷コウタ

初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。

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