
「香港専用機」グローリーヴェイズが秘める“札幌巧者”の可能性

21日、札幌競馬場ではサマー2000シリーズの第4戦・札幌記念(G2)が行われる。
1着賞金7000万円は国内のG2レースの中で最高額。夏の中距離王を決める戦いのひとつでありながら、秋のG1戦線を見据えたトップホースたちの始動戦としても選ばれやすく、“スーパーG2”と呼ばれることもある大一番だ。
「香港専用機」が札幌記念に参戦
今年もG1馬が5頭も参戦を表明するなど、その名に恥じない好メンバーが集結。その中で最長タイとなる「中20週」の間隔を空けてこの舞台に臨むのが、グローリーヴェイズ(牡7歳、美浦・尾関知人厩舎)である。
前走は3月にメイダンで行われたドバイシーマクラシック(G1)に臨み、15頭中8着と敗戦。約5カ月ぶりの今年2戦目が、今回の札幌記念となる。
同馬は2019年の香港ヴァーズ(G1)を勝って、海外でG1初制覇を達成。昨年も計4走のうち国内のレースは金鯱賞(G2)が4着、オールカマー(G2)が3着だったのに対し、香港ではクイーンエリザベス2世カップ(G1)で2着、そして香港ヴァーズで2年ぶり2度目の勝利と安定感抜群のパフォーマンスを披露。その極端な戦歴から、今や一部のファンから「香港専用機」と呼ばれるようにもなった。
しかし、その「香港専用」という特性は、今回の舞台においてプラスとなる可能性が大いにある。
グローリーヴェイズが1着2回・2着1回と好走している香港のシャティン競馬場といえば、急坂のない「平坦コース」であり、レースは「右回り」で施行される。加えて、芝コースは「洋芝」を使用。このすべての条件に当てはまるのが、今回の舞台である札幌競馬場の芝コースなのだ。
また、あらためて戦歴を振り返ってみると、香港以外の重賞勝ちは2019年の日経新春杯(G2)と2020年の京都大賞典(G2)で、これも「右回り」の「平坦コース」である京都競馬場で挙げたもの。これらの条件が同馬のベストパフォーマンスを引き出すために重要なポイントとなっていることは、馬柱から察しが付く。
その一方で、懸念材料も存在する。まずは2000mという距離への対応だ。
2度の勝利を挙げている香港ヴァーズをはじめ、京都大賞典も、それから日経新春杯も、古馬になって勝った大きなレースはすべて芝の2400mという舞台設定で行われたレースであった。
そこで最近の芝の2000m戦を見てみると、昨年は金鯱賞で4着と敗戦。ただし、これは中京の「左回り」のコースで、かつ直線には「急坂」があるという適性と真逆のレースだったため、情状酌量の余地はあるだろう。
そこから続戦した香港のクイーンエリザベス2世カップも2着。得意舞台でも勝てていないじゃないか!とツッコミを入れられてしまうかもしれないが、この時に敗れた相手は後にアメリカのブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ(G1)と香港カップ(G1)を連勝するラヴズオンリーユーであった。その強敵と0秒1差の2着であれば、2000mへの距離短縮もさほど割引く必要はないはずだ。
さらにグローリーヴェイズの追い風となりそうなのが、今回のメンバー構成である。
逃げて結果を残してきたパンサラッサという確固たる逃げ馬がおり、そこに逃げて連勝街道を突き進んできたジャックドールも追随。加えて昨年のこのレースの覇者・ソダシも、逃げにはこだわらずとも前で運びたいタイプで、有力馬が前方に集中。無理に競り合うことはなくとも、スローペースで落ち着くことは考えづらく、前が速くなればなるほど、持ち前である差し脚を活かせる可能性は高まる。
また、そこでもうひとつの懸念となるのが直線の短さだ。実績十分のシャティン競馬場と特徴が似ている札幌の芝コースだが、前者は直線の入り口から決勝線まで430mの距離があるのに対し、札幌の直線距離はCコースで269.1mと明らかに短くなる。
馬に直線の短さを伝えることはできないため、そこを補うことができるとしたら騎手の腕しかない。今回はC.ルメール騎手との新コンビ結成となるが、調教でコンタクトを取った名手からは「状態はすごく良い。自信はある」という頼もしい言葉が飛び出している。削り合う先行勢をじっと見ながら、強みを最大限に活かす騎乗に期待がかかる。
展開と名手のエスコートも追い風に、秘められた適性がついに解放開放……?「香港専用機」の札幌参戦に注目だ。
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