
R.ムーア、C.デムーロら大挙来日も…目玉になるはずの大物が不在の深刻事情
30日に東京競馬場で行われる天皇賞・秋(G1)。このレースでアブレイズとコンビを組むT.マーカンド騎手は、これが日本でのG1初騎乗となる。
マーカンド騎手は、同じく初来日となる妻のH.ドイル騎手とともに、英国を代表するトップジョッキー。夫婦揃って英国の騎手リーディングで2位タイ(26日時点)につけており、つい先日行われたクイーンエリザベス2世S(英G1)でもベイサイドボーイで勝利するなど、24歳と若手ながらその実力は折り紙付きだ。
まだ日本のファンには馴染みが薄いものの、実績・勢いともに十分なだけに、今秋の活躍にも期待がかかる。

そんな外国人騎手の新星として期待されるマーカンド騎手だが、日本のファンに対する知名度に関しては、同じくイギリス競馬に所属するO.マーフィー騎手の方が上だろう。
4年前に初来日した際は、14日間で計25勝を挙げたマーフィー騎手。最終日には1日5勝の固め打ちをみせるなど、初の日本競馬で強烈なインパクトをファンに植え付けた。
その後は英国のナッソーS(英G1)で秋華賞馬ディアドラを海外G1初勝利に導くと、同年の秋に2度目の来日を果たした際には、スワーヴリチャードでジャパンC(G1)を制覇。日本の競馬関係者から厚い信頼を勝ち取るとともに、ファンの間でも広く認知される外国人ジョッキーの一人となった。
コロナ禍による制限が緩和されたこともあって、外国人騎手が大挙来日するこの秋、マーフィー騎手の動向が気になるところだが、JRAから発表された外国人騎手の中に、その名前は見当たらなかった。
来日を見送らざるを得ないほどの深刻な事情が…
日本のトップジョッキー相手に実力を見せつけた恐怖の来訪者が、一向に姿を見せないことを不思議に思ったファンもいただろうが、実は来日を見送らざるを得ないほどの深刻な事情がある。
それは、マーフィー騎手が度々世間を騒がす問題を起こしてしまっていたからに他ならない。
マーフィー騎手は、2年前の夏にフランスで騎乗した際、尿検査でコカインの陽性反応が検出。最終的に故意ではないという証拠が認められ、3か月の騎乗停止処分で事態は収束したものの、結果的に陽性反応が出たことは事実であり、周囲からの風当たりも強くなった。
だが、問題はこれだけに留まらず、昨年日本馬のマルシュロレーヌでBCディスタフ(米G1)を制した直後には、以前にBHA(英国競馬統括機関)が定めるコロナ対策の規定に背き、虚偽の報告を行っていたと指摘を受け、さらには同年の呼気検査で基準を超えるアルコールが検出されたため、再び騎乗停止処分を受ける事態とまでなっていたのだ。
この度重なる不祥事には、マーフィー騎手から英国競馬メディア『Racing Post』を通じて、異例の謝罪文も出された。
その内容も「時間をさかのぼることはできませんが、私は重大な過ちを犯してしまいました。私は全ての違反を認め、これからこの問題にうまく向き合っていければ」という深刻なものだった。
さらにマーフィー騎手は、アルコール依存症の医療サポートを受けるため騎手免許を一時返上。来年2月までの14か月間にも及ぶ騎乗停止が確定していることからも、ターフに復帰するまでには相当な時間を要しそうな見込みだ。
天皇賞ウィークからは、初来日のマーカンド騎手やドイル騎手だけでなく、C.デムーロ騎手やR.ムーア騎手など海外の名手が続々と来日を予定している今年の秋競馬。本来ならマーフィー騎手の姿が見られてもおかしくなかったと思うと残念でならない。
昨年まで3年連続で英国リーディングに輝くなど、英国トップを走り続けてきたマーフィー騎手。その実力は本物だけに、いつの日かまた日本で騎乗する日が来ることを願い、できる限り早い再起に期待したい。
PICK UP
Ranking
23:30更新巷に出回る川田将雅「長距離苦手説」をデータで検証、阪神大賞典(G2)で気になる「13年未勝利」の課題…リーディングジョッキーの意外な過去
皐月賞馬、ダービー馬不在の菊花賞を勝ったのは?
「庭先取引」の問題点を一変させたセレクトセール!億超え馬を落札する名物オーナーたちも登場…オープンでフェアな取引に多大な貢献【競馬クロニクル 第63回】
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
- 【香港C(G1)展望】BC制覇の偉業から1か月、ラヴズオンリーユー有終の美へ!レイパパレはC.スミヨンと新コンビ、最大のライバルは最高レーティングの英国馬
- 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
- 横山典弘騎手が若手騎手に「あの乗り方はやめろ」岩田康誠騎手らが実践する「お尻トントン」は、競走馬の負担になるだけ?
- 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
- アドマイヤ軍団が「G1・45連敗」武豊と絶縁し「40億円」と引換えに日本競馬界フィクサーの”逆鱗”に触れた凋落の真相?
- 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬