C.デムーロ「騎乗停止」が追い風に?ブレイク中の若武者に迫る“No.1”の勲章
11月27日に阪神競馬場で行われた京阪杯(G3)。勝ったのは1番人気に推された3歳馬トウシンマカオ(牡3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)だった。
2走前のキーンランドC(G3)からスプリント路線に矛先を向けると、前走のオパールS(L)に続く連勝で重賞初制覇。自身の芝1200mの持ち時計を1秒以上も縮める1分7秒2という好時計を叩き出し、今後のさらなる飛躍に期待が膨らむ結果となった。
「来年スプリント路線を賑わせてくれるのは間違いありません」
興奮気味に語ったのは、手綱を取った鮫島克駿騎手。トウシンマカオとは前走からコンビを組んで2戦2勝。「またコンビを組ませていただけるのであれば全力でこの馬の力を出せるように頑張ります」と、継続騎乗のアピールも忘れなかった。
2015年にデビューした鮫島駿騎手は、今年が8年目のシーズン。京阪杯の勝利で今年の重賞勝利は4つめとなった。一昨年の小倉大賞典(G3)で重賞初勝利を挙げ、昨年は新潟大賞典(G3)とCBC賞(G3)を勝利。1勝→2勝からの今年は4勝と順調に伸ばしている。
年間の勝利数も、11月を終えた段階ですでに74勝をマーク。昨年の69勝を上回り、キャリアハイを更新中。年間リーディングの方も自己最高の10位につけており、2022年はまさに飛躍の一年と言えるだろう。
ブレイク中の若武者に迫る“No.1”の勲章
ここまで順調な歩みを見せる鮫島駿騎手には、“JRA No.1”の称号も視界に入っている。それが「騎乗回数」だ。
今年ここまでの騎乗数は810回を数え、トップの和田竜二騎手(812回)とは僅差の2番手につけている。相手は14年連続で800回以上の騎乗数を誇る“鉄人”であり、この強敵に肉薄することができているという点でも、今年の順調さが垣間見える。
騎乗回数は表彰の対象ではないものの、故障や病気に負けない強靭な身体はもちろんのこと、そこにプラスして関係者からの信頼がなければ稼ぐことができない数字だ。キャリア8年目にしてトップクラスの数字を残しているというのは、胸を張るべき栄誉である。
ライバルとなる和田竜騎手も、ケガや違反なく安定して騎乗回数を確保しているため、ここから逆転してトップに立つというのは簡単なことではない。一方で、鮫島駿騎手の追い風となりそうなのがC.デムーロ騎手の騎乗停止である。
同騎手は11月19日に不注意騎乗による騎乗停止処分を受け、12月3日と4日の2日間で騎乗停止になっていた。そこに先週のジャパンカップ(G1)でも斜行による制裁が加わり、「短期間で同様の不注意騎乗を繰り返した」と判断され、12月10日から18日までの9日間も騎乗停止となってしまった。
これにより、C.デムーロ騎手は12月3日・4日・10日・11日・17日・18日の開催6日間で騎乗ができないという緊急事態に。先週も2日間で17鞍に騎乗するなど、毎週のように有力馬の依頼が殺到していた世界的名手が不在となれば、その分ほかの騎手のチャンスが増えることになる。
そこでC.デムーロ騎手のこれまでの騎乗馬を見てみると、今年騎乗した133回のうちノーザンファームの馬が89頭と多くを占め、馬主別ではサンデーレーシング(29回)とキャロットファーム(22回)が2トップを形成している。
ここで鮫島駿騎手に話を戻すと、こちらの馬主別の騎乗数はサンデーレーシングが40回にキャロットファームが37回。上位を占める馬主が被っているだけに、C.デムーロ騎手が乗るはずだった馬が鮫島駿騎手に回ってくるという可能性は大いに考えられる。
となれば単純な騎乗回数の増加はもちろん、新たな有望株との出会いはキャリアハイを更新中の年間勝利数のさらなる上積みに加え、来年の大舞台にもつながる大きなチャンスに。12月の頑張りが、来年のさらなる飛躍に直結すると言っても過言ではない。
過去最高のシーズンを送る鮫島駿騎手でも、成し遂げられなかったのがG1の勝利。特に今年は1年後輩にあたる坂井瑠星騎手や荻野極騎手が初G1制覇を達成したこともあって、思うところは当然あったことだろう。
重ねて、今年最もG1勝ちに近づいた時の相棒であるジャスティンパレス(菊花賞・3着)が有馬記念(G1)への参戦を表明した中、鞍上は短期免許で来日中のT.マーカンド騎手に決定。良い形で12月を迎えられると思いきや、厳しい現実をつきつけられることとなった。
こうした悔しい想いを二度としないためにも、実りの多い2022年をより良い形で締めくくる必要がある。ここでさらなる信頼を築き上げることができれば、次なる目標であるG1タイトルもぐっと近づいてくることだろう。
たくさんの収穫と悔しさを糧に、騎手として次のステップへ。12月は鮫島克駿の奮闘に注目だ。
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