侍ジャパンと友道康夫厩舎に共通点?“現役最強”ドウデュースがもたらす好影響
11日に行われた阪神9Rの3歳限定戦、ゆきやなぎ賞(1勝クラス)。若駒にとってはタフな阪神の芝2400mという舞台を制したのは、2番人気のサトノグランツ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)だった。
最終的には2着のサヴォーナに詰め寄られるクビ差の辛勝だったものの、手綱を取った坂井瑠星騎手は「まだ、もたついて動き切れないところがありますが、それでも勝つのですから能力は高いです」とその素質を高く評価している。
1勝クラスの一戦ではあるが、昨年のこのレースを制したのはボルドグフーシュ。同馬は後に菊花賞(G1)で2着と好走しただけでなく、暮れの有馬記念(G1)でも古馬の強豪を相手に2着に入る健闘を見せた。
過去の同レースの勝ち馬を振り返ってみても、2017年の覇者であるポポカテペトルも、同年秋の菊花賞で13番人気ながら3着に食い込む激走を見せた。ゆきやなぎ賞を勝つことで春のクラシック戦線への足掛かりとなるだけでなく、秋のよりスタミナが問われる舞台に向けても楽しみが広がってくる。
今年勝利したサトノグランツは新種牡馬・サトノダイヤモンドの産駒で、母チェリーコレクトは半姉のダノングレースやダイアナブライト、半兄のワーケアといった兄姉がみなJRAで勝ち上がっているという血統馬。2021年のセレクトセールで1億1550万円の高値が付いたこともあり、デビュー前から注目を集めていた1頭だ。
その血統や取引価格もさることながら、父のサトノダイヤモンドを所有していた里見治氏がセリで購入したというのも見逃せないポイント。しかも預託した厩舎は父と同じ池江泰寿厩舎ではなく、2016年の日本ダービー(G1)で父の前に立ちはだかったマカヒキを管理する友道厩舎ということも話題になった。
こうした下地もあって、サトノダイヤモンド産駒の一番星候補として早くから注目を浴びた中、デビューから勝ち上がりまでは3戦を要したものの、今回は休み明けと初の2400mという未知の領域を乗り越える見事な一発回答。これにより、オーナーの悲願である日本ダービー挑戦も現実味を帯びてきた。
今回が初コンビだった坂井騎手が「まだこれから良くなってくれると思います」と伸びしろについて言及しているのも頼もしく、まさに今が成長期というところ。それが表れていたのが1週前の調教だった。
2日に栗東・Cウッドコースで行われた追い切りでは、坂井騎手を背に3ハロン36秒3、ラスト1ハロンは10秒7という好時計をマーク。いずれも自己ベストを更新するタイムを叩き出したのだ。
侍ジャパンと友道康夫厩舎に共通点?
実はこの時に併せた相手が、厩舎の看板馬であるドウデュースだった。昨年の日本ダービー馬にして、9日に発表された「ロンジンワールドベストレースホースランキング」において日本馬トップのレーティング120を獲得した押しも押されもせぬ現役最強馬である。
休養を挟んでの成長はもちろんのこと、偉大な“先輩”の胸を借りたことで自身の秘めた能力の一端を解放することができた、と見ることもできるだろう。そして友道厩舎では過去にも同様の事例があった。
2月のクイーンC(G3)を勝利した3歳牝馬のハーパーも、レースの1週前に栗東・Cウッドコースでドウデュースとともに稽古を行っている。その時もレースで騎乗する川田将雅騎手を背に、自己ベストを更新する3ハロン37秒3と、ラスト1ハロン11秒3というタイムを記録していたのである。
日頃から強い相手とともに鍛錬を積むことが、成長への近道になるともいえる。その点において、現役最強馬を擁する友道厩舎はこれ以上ない環境だ。日本一の栄光も、世界の厳しさも肌で知るドウデュースが、厩舎の若駒に与える影響は非常に大きいだろう。
日本ではこのところ『2023ワールドベースボールクラシック』で世界一奪還に挑む侍ジャパンの戦いが大きな注目を集めているが、史上最強の呼び声高い今回のチームを見ていても、その中心を担っているのは大谷翔平やダルビッシュ有といった現役バリバリのメジャーリーガーたちだ。
日本で頂点を極め、世界最高峰の舞台へと羽ばたいて行った男たちが日の丸の下に集結。チームメイトとなった若い選手たちに、これまでの経験を惜しげもなく伝えている。競馬においても、野球においても、その道のトップランナーがチームに還元するものは大きく、かけがえのない財産となる。
ドウデュースの2度目の世界への挑戦が近づく中、一緒に覚えておきたい「ドウデュース効果」。今後は現役最強馬と“一緒に稽古をした馬”の飛躍にも注目していきたい。
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