絶体絶命1枠1番からの大逆転! 最後は大外一気、逆襲の「天才」横山武史が見せた大胆不敵な神騎乗

この男は、やはり「天才」か――。
競馬のレースには、相性の悪い枠……いわゆる「死枠」というものが存在する。16日に行われた皐月賞(G1)の1枠1番がまさにそれで、前回この馬番で勝利したのはコントレイル。その前だとナリタブライアンまで遡る。
言い換えれば、皐月賞で1番枠に入ってしまった馬は、三冠馬級の実力がなければ勝利することはできないのだ。
そして迎えた今年の皐月賞で1枠1番に入ってしまったのが、2番人気のソールオリエンス(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だった。事前には陣営からも「本音は真ん中あたりが良かった」という声が漏れ聞こえており、最終的にファントムシーフに1番人気を譲ってしまったのは、そういったデータや経緯があったからかもしれない。
何故、皐月賞で1枠1番が勝てないのかは様々な理由があるが、最もわかりやすいのが、レースが2か月間続いた中山開催の最終週に行われることである。簡単に言えば内の馬場は連続開催ですっかり悪くなってしまって、キレイな外の馬場を走れる馬が有利になるからだ。
実際に、昨年も2番人気だったダノンベルーガが1枠1番に泣いて4着止まり。レース後、あの川田将雅騎手をもってしても「この枠でできる最大限の走りをしてくれた」と、真っ先に枠を敗因に挙げる他なかった。
ましてや、今年の皐月賞は重馬場。昨日から降り続けた雨の影響で、内側の馬場はボコボコだ。皐月賞前のレースでも各馬が内を大きく開けて4コーナーを回り、外を走ってきた馬の台頭が目立っていた。つまり、ソールオリエンスにとっては最悪の状況だったのだ。
「自分には何が足りないのか、毎日毎日考えてきました――」
逆襲の「天才」横山武史が見せた大胆不敵な神騎乗
そんな相棒の絶体絶命のハンデを跳ね返したのが、横山武史騎手だ。1枠1番の最内枠でスタートしたソールオリエンスだったが、最後のゴール前では一番大外から突き抜けた。三冠馬コントレイル以来の1枠1番からの皐月賞制覇である。
この騎乗には元JRA騎手の安藤勝己さんも「終わってみれば、牡馬にも怪物がおった」(Twitter)と先週の桜花賞(G1)を圧勝したリバティアイランドを引き合いに出して絶賛したが、ソールオリエンスが怪物級のパフォーマンスを発揮できたのも、鞍上が1枠から大外まで移動するという思いっきりの良いコース選択を試みた結果に他ならない。
一昨年にエフフォーリアとのコンビで挑んだ皐月賞でG1初制覇を飾った横山武騎手。その後、同コンビは年度代表馬になるほどの活躍を見せ、デビュー5年目の若手騎手は瞬く間に競馬界のスターダムにのし上がった。
しかし、昨年は頼みのエフフォーリアが不振を極めるなど大苦戦。「本当に普段からいい馬に乗せていただきながら、去年はG1で結果を出せなかった」と本人が振り返っている通り、勝ち星こそ順調に積み上げたもののG1は未勝利に終わり、大舞台での存在感はあっさりと失われていた。
「僕は成長しているはず――」
だが、多くの天才が才能のある人間の類まれな努力の結果であるように、この若武者も人一倍の努力を欠かない人物だ。今回の皐月賞の騎乗ぶりは、まさにその賜物であり、あの大胆不敵な騎乗こそが「天才」と呼ばれる父・横山典弘騎手でさえ、「アイツは大物になる」と胸を張る横山武史騎手である。
「1年ぶりにG1を勝てましたが、去年も、2年前も、ダービーではいい結果を出せていない。僕は成長しているはずなので、技術を上げた姿をこの馬と一緒に(日本ダービーで)見せたいと思います」
レース後、そう新たな決意を固めた横山武騎手。枠順の不利を跳ね返してのG1制覇は、かつて桜花賞の「魔の大外枠」からシャダイカグラを優勝へ導いた若き武豊騎手の“ユタカマジック”を彷彿とさせる。
エフフォーリアは続く日本ダービーでハナ差に泣いたが、ソールオリエンスにはコントレイル、ナリタブライアンから引き継がれた“三冠の系譜”がある。G1未勝利という試練の1年を乗り越え、若き天才・横山武騎手が帰ってきた。
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