【天皇賞・春(G1)展望】「長距離王」タイトルホルダーVSジャスティンパレスら4歳三銃士!「落馬→覚醒」シルヴァーソニックはD.レーンでリベンジなるか
30日、京都競馬場にG1の熱気が戻ってくる。国内のG1では最長距離を走る名物レースの天皇賞・春(G1)が3年ぶりに淀の3200mの舞台へ帰ってきた。
2019~20年のフィエールマン以来、史上6頭目となる春の盾連覇を狙うのはタイトルホルダー(牡5歳、美浦・栗田徹厩舎)だ。
昨春は日経賞(G2)、天皇賞・春、宝塚記念(G1)と3連勝。他を寄せ付けない強さを見せつけ、その時点で“現役最強馬”と称された。ところが、秋はぶっつけ本番で挑んだ凱旋門賞(仏G1)で11着、さらに帰国初戦の有馬記念(G1)で9着とよもやの連敗。疑問符のつく中で迎えたのが今年の始動戦、日経賞だった。
59kgの斤量も嫌われてか、最終的に1番人気をアスクビクターモアに譲ったタイトルホルダーは、内枠から五分のスタートを切ると、鞍上の横山和生騎手は主張してハナを切った。
2コーナー付近でディアスティマに絡まれそうになるシーンもあったが、終始ペースを落として淡々とした逃げ。勝負所で後続各馬の手応えが怪しくなる中、タイトルホルダーは余力十分で4コーナーを回った。
鞍上の手がほとんど動かない中、追い出しをギリギリまで待ち、ようやくゴーサインを送ったのは残り300mを切ったあたり。残り250m地点で左ムチが1発入るとタイトルホルダーは鋭く反応し、中山名物の急坂で力強くもうひと伸びを見せた。
ゴール前では流す余裕も見せ、8馬身差の完勝劇。宝塚記念以来となる勝利を飾り、完全復活を印象付けた。
これまで3000m以上のレースは2戦2勝のタイトルホルダーだが、どちらも阪神が舞台。京都での競馬自体が今回は初めてとなる。3コーナーにある淀の坂を2度越える独特のコースで、カギとなるのは鞍上の経験値か。だが、美浦所属の横山和騎手は、京都で芝・ダート合わせて通算30回騎乗しているが、実は1勝も挙げられていない。
逃げ馬が人気を背負う分、他馬からのマークもきつくなることが予想される。ライバル勢の包囲網を潜り抜け、天皇賞・春連覇、そしてG1通算4勝目を挙げることができるか。
打倒タイトルホルダーに燃えるのが3頭の4歳馬たちだ。
勢いという点では前哨戦の阪神大賞典(G2)を快勝したジャスティンパレス(牡4歳、栗東・杉山晴紀厩舎)に分があるか。
ホープフルS(G1)で2着に好走したように、早くから素質の高さを見せていたジャスティンパレス。3歳春は皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)でともに9着に終わったが、秋初戦の神戸新聞杯(G2)を制覇すると、菊花賞でも見せ場十分の3着。G1タイトルに手が届くところまで来た。
しかし、秋3戦目の有馬記念では力負けの7着。この春は天皇賞を大目標に、C.ルメール騎手との再コンビで阪神大賞典から始動している。
有馬記念から体重を16kg増やした馬体は、明らかに成長を感じさせる作り。ゆったりとした流れの中、道中2~3番手でしっかりと折り合うと、上がり3ハロンメンバー最速の末脚で2着馬に1.3/4馬身差をつける完勝だった。
この馬もタイトルホルダーと同じく京都競馬場は初お目見えとなるが、父がディープインパクトならタフな阪神よりも外回りを1周半する京都の方がベターなはず。同じくディープインパクト産駒のフィエールマンで2連覇を達成した鞍上の存在も頼もしい。
そのジャスティンパレスに阪神大賞典で後塵を拝したのがボルドグフーシュ(牡4歳、栗東・宮本博厩舎)だ。
まだ重賞を勝っていない立場だが、昨年の菊花賞と有馬記念で連続2着した実力馬。有馬記念こそイクイノックスにちぎられたが、菊花賞ではアスクビクターモアにハナ差まで詰め寄った。
今年の始動戦となった前走は川田将雅騎手との新コンビで、単勝1.6倍の1番人気に支持された。同世代のジャスティンパレスより1kg軽い斤量差もあったが、これを生かすことができなかった。
その前走は人気を背負った分、いつもよりやや前目の位置取り。これも最後の切れ味を削ぐ一因になったかもしれない。前走の敗戦でやや評価を落とすであろう今回は自慢の末脚を爆発させられるか。タイトルホルダーが厳しい流れを作り出し、差し馬が台頭する展開になれば浮上する。
昨年の菊花賞でボルドグフーシュの猛追を凌ぎ切り、勝利を収めたのがアスクビクターモア(牡4歳、美浦・田村康仁厩舎)だ。
菊花賞以来の実戦となった前走・日経賞は、レース前の時点では天皇賞・春の最有力候補の1頭だった。実際にタイトルホルダーを抑えて1番人気に支持された。
しかし、ゲートで立ち遅れると、道中も行きっぷりが悪く、最後まで見せ場を作れず。結局、タイトルホルダーから2秒6差の9着に惨敗した。
前走から中4週で大幅な変わり身はあるのか。鞍上は田辺裕信騎手から好調の横山武史騎手へと乗り替わる。
6歳以上の古豪の中ではシルヴァーソニック(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎)が一発の魅力を秘める。
昨年は川田騎手とのコンビで臨むもスタート直後に落馬して競走中止。しかし7か月ぶりの復帰戦となった昨年のステイヤーズS(G2)を勝利すると、続くサウジアラビアで行われたレッドシーターフHC(沙G3)も快勝。長距離重賞を2連勝して勢いに乗る。鞍上は近2走で手綱を取ったD.レーン騎手が務める。
ディープボンド(牡6歳、栗東・大久保龍志厩舎)は、2年連続2着の実力馬ながら評価は急落中だ。
昨年の宝塚記念で4着したまでは良かったが、秋に凱旋門賞で18着に大敗。帰国初戦の有馬記念でも8着に敗れると、3連覇を狙った阪神大賞典で5着といいところがない。
ただし、京都競馬場は改修前に京都新聞杯(G2)を制覇しており、菊花賞でもコントレイルの4着に好走した舞台。ズブい馬だけに、3コーナーの下り坂で加速できる京都3200mが阪神より合っている可能性も考えられるだろう。早めのロングスパートを仕掛けたい。
ディープはディープでもディープインパクト産駒のディープモンスター(牡5歳、栗東・池江泰寿厩舎)も侮れない存在だ。2年前には牡馬クラシック三冠レース全てに出走。菊花賞での5着が最高着順だった。2歳時の新馬戦を改修前の京都で勝っている点も見逃せない。
マテンロウレオ(牡4歳、栗東・昆貢厩舎)は昨年のきさらぎ賞(G3)覇者。皐月賞とダービーはいずれも凡走したが、昨秋以降は安定した成績を残している。特に前走・大阪杯(G1)はジャックドールから0秒4差の4着に善戦しており、一気の距離延長がハマれば大駆けの可能性もあるだろう。
この他には、昨年のアルゼンチン共和国杯(G2)を制覇し、前走・阪神大賞典でも3着に健闘したブレークアップ(牡5歳、栗東・吉岡辰弥厩舎)、ダイヤモンドS(G3)2着馬のヒュミドール(セ7歳、美浦・小手川準厩舎)は武豊騎手との初コンビ。また、展開のカギを握るディアスティマ(牡6歳、栗東・高野友和厩舎)も穴で面白い存在だ。
リニューアルされた京都競馬場で行われる最初のG1を制するのは果たしてどの人馬か。最強ステイヤー決定戦の天皇賞・春は、30日の15時40分に発走を予定している。
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