【香港スプリント(G1)展望】ママコチャと「デッドヒート」マッドクール&今年9戦目「充実一途」ジャスパークローネが香港の快速馬に挑戦!
10日、香港のシャティン競馬場では4つの国際G1が行われる。その全てが芝のレースで、距離は1200m、1600m、2000m、2400mのいわゆる根幹距離。その中で最も日本馬の勝利が少ないのが1200mの香港スプリント(G1)である。
2002年に国際G1に昇格して以降、当レースを制した日本馬はロードカナロア(2012-13年連覇)とダノンスマッシュ(20年)の2頭(計3勝)だけ。今年は日本からマッドクールとジャスパークローネの2頭が果敢に挑戦するが、地元・香港勢を中心とした世界の高い壁を越えることができるだろうか。
マッドクール(牡4歳、栗東・池添学厩舎)は、昨年5月のデビュー3戦目で初勝利を飾ると、年末にかけて一気の4連勝でオープン入り。その勢いが買われて、今年1月のシルクロードS(G3)では1番人気に推されたが、僅差の3着に敗れた。
同レースでマッドクールが先着を許したのは、ナムラクレアとファストフォースの2頭。奇しくも次走・高松宮記念(G1)でこの2頭がワンツーを決め、レースレベルの高さを証明する形となった。
マッドクールはその後、57.5kgを課された春雷S(L)を快勝し、改めてその実力を証明。ところが再び1番人気に推された7月のCBC賞(G3)は9着に惨敗してしまった。
ただし、同レース後にマッドクールは熱中症のような症状を発症。夏の暑い時期は放牧で英気を養い回復に努めた。
そして迎えた秋の大一番はスプリンターズS(G1)。初G1に6番人気の伏兵として臨んだが、好位のインからしぶとく伸びて、最後はママコチャと壮絶な叩き合い。最後は首の上げ下げの末、ハナ差で敗れたが、状態が万全ならG1級の能力があるところを見せた。
今回は2か月ぶりの実戦で、鞍上にはC.デムーロ騎手が指名された。世界的名手を背に重賞初制覇を香港の地で飾ることができるか。
デビュー当初から短距離戦で軽快なスピードを披露していたジャスパークローネ(牡4歳、栗東・森秀行厩舎)は、ハナを切ればそう簡単に失速しない。
3歳春の時点で、7ハロン戦の橘S(L)でウインマーベルの2着に入るなど、1400mもこなしていた。その後に爪を痛め、約9か月休養。今年春に2勝クラスから出直しを図ると、4月に中山芝1200mの4歳以上2勝クラス、5月に新潟千直の駿風S(3勝クラス)を連勝し、待望のオープン入りを果たした。
続く昇級初戦の函館スプリントS(G3)はスタートであおってしまい、2番手からの競馬となり最下位16着に惨敗。しかし、CBC賞で果敢にハナを切ると、55kgの軽斤量も味方につけて、重賞初制覇を遂げた。
さらに北九州記念(G3)でも前半3ハロン32秒9のハイラップを刻むと、見事に押し切って、後のスプリント女王ママコチャに勝利。着実に成長しているところを見せた。
そして迎えたスプリンターズSは逃げ先行馬がそろったが、スピードの違いでハナを切ると、ゴール寸前まで粘り腰を発揮して4着に残った。
続いて陣営が矛先を向けたのは米ブリーダーズCターフスプリント(G1)。世界から一流スプリンターが集結した一戦に川田将雅騎手との新コンビで臨んだが、ゲートのタイミングが合わず、道中2番手から進めたが早々と失速して最下位に沈んだ。
今年早くも9戦目を迎えるジャスパークローネだが、やることは一つだけだ。スタートをしっかり決めて、とにかく逃げるだけ。それができれば、大仕事をやってのけても驚けない。
そんなジャスパークローネとマッドクールに立ちはだかるのは、地元・香港のラッキースワイネス(セ5歳、香港・K.マン厩舎)だ。
通算成績は「14-4-1-1」で、複勝率は何と95.0%という世界でも屈指のスピードスター。唯一の着外は、昨年の当レースで6着だった。
しかし、その敗戦を糧に、今年は1月から6月にかけて重賞を6連勝。秋は2戦連続2着に惜敗していたが、3戦目の前哨戦・ジョッキークラブスプリント(G2)で5か月半ぶりとなる勝利を飾って、大一番に照準を合わせてきた。
通算成績25戦12勝のウェリントン(セ7歳、香港・J.リチャーズ厩舎)は、昨年の当レースを含むG1・4勝の実績馬。勝てば、5年ぶり史上5頭目の連覇となる。
1000mを主戦場にしているハイフィールドプリンセス(牝6歳、英・J.クイン厩舎)は、通算成績38戦14勝と、息の長い活躍を見せている。牝馬として初の香港スプリント制覇が懸かる。
この他には、前走ジョッキークラブスプリントでラッキースワイネスからクビ差の2着に入ったビクターザウィナー(セ5歳、香港・C.シャム厩舎)、R.ムーア騎手とのコンビで臨むイソップスフェイブルズ(牡3歳、愛・A.オブライエン厩舎)なども出走予定。
日本から参戦するマッドクールとジャスパークローネは、前者が先行抜け出し、後者が逃げと勝ちパターンは明確。それだけに、とにかくスタートがカギとなる。1200m先のゴールに真っ先に飛び込むのは果たしてどの馬か。香港スプリントは10日、日本時間15時50分に発走を迎える。
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