
【青葉賞】「幻のダービー馬」スキルヴィングの勝利から1年…待ち受けていた悲劇的な結末、改めて痛感する人馬無事の大切さ

28日の天皇賞・春(G1)を皮切りに6月2日の安田記念(G1)まで6週連続のG1開催となる春競馬。5月後半には3歳馬のクラシックも控えており、上半期で最も競馬が盛り上がりを見せるシーズンでもある。
ただその前に今週末の青葉賞(G2)にも触れておきたい。
本レースはご存知の通り、2着までの馬に日本ダービー(G1)の優先出走権が付与されるトライアルだ。
青葉賞組はダービーを勝てないジンクスが続く
重賞に昇格した1994年の勝ち馬エアダブリンがダービーで2着に敗れたとはいえ、相手がシャドーロールの怪物といわれたナリタブライアンだったことを考えれば、いずれは通用する馬が登場しても不思議ではないように思えたが、いまだにこのステップからダービー馬になった馬は誕生していない。
本番と同じ東京芝2400mを好走していても、やはり皐月賞(G1)に出走した組の壁は厚いということだろう。気がつけば今年で30年の年月が流れており、いつしか「青葉賞組はダービーを勝てない」といったジンクスも話題に上がるようになった。
とはいえ、結果的に実現しなかったものの、「勝てたかもしれない」と思える馬が登場していたことも事実である。
2010年の青葉賞をデビューから無敗の4連勝で楽勝したペルーサは、同年の天皇賞・秋(G1)で当時の現役最強馬ブエナビスタの2着に入る実力がありながら、肝心のダービーはゲートのタイミングがあわず出遅れ。運悪く超スローで流れたこの年は、上がり3ハロン最速32秒7の瞬発力勝負を制したエイシンフラッシュが優勝し、ポジション取りで後手に回ったペルーサは直線で大外を回らされたことも響き6着に敗れた。
2017年の勝ち馬アドミラブルは、青葉賞経由の馬がレース史上初となるダービーで1番人気に支持された唯一の例だ。最後の直線を好位から楽に突き抜けた勝ちタイム2分23秒6(良)も秀逸で、手綱を取ったM.デムーロ騎手は当時、G1請負人といわれるほど大舞台に強かった。しかし、この年のダービーは例年にない超のつくスローペース。先述の10年も1000m通過61秒6と遅かったが、17年のそれは63秒2。逆手に取って動いたC.ルメール騎手のレイデオロが優勝し、動かなかったアドミラブルは脚を余す格好で3着に敗れている。
「幻のダービー馬」を襲った悲劇的な結末

また、昨年の青葉賞を制したスキルヴィングも大きな注目を集めた。レース史上3位となる2分23秒9(良)の好タイムで快勝した上にコンビを組むのは、いまや日本で最高の名手といっても差支えのないほど成長したルメール騎手。30年近く閉ざされていた扉の向こう側へ辿り着ける初めての馬になるのではないかと期待されたが、あまりにも悲劇的な結末が待っていた。
スタートこそゆっくりと出たが、ルメール騎手は中団のインで脚を溜める選択。道中で徐々にポジションを上げていき、3コーナー過ぎに外から進出を開始した。勝負どころの最後の直線に入り、追撃態勢に入ったが鞍上の檄に応えることなくズルズルと後退。異変を感じ取ったルメール騎手も追うのをやめたが、すでにパートナーはアクシデントが発生していた。
17着で入線したスキルヴィングが倒れ、下馬したルメール騎手が心配そうに見つめる姿にファンも嫌な予感がしたはずだ。その後、JRAからレース中に急性心不全を発症していたことが発表。一生に一度の晴れ舞台である競馬の祭典でまさかの急死という残酷な知らせが届いた。
奇しくもこのダービーで勝ち馬タスティエーラとタイム差なしの3着に入ったハーツコンチェルトは、青葉賞でスキルヴィングが1/2馬身差で退けていた相手。競馬においてタラレバはタブーとされているのを承知の上でも、もし無事にレースを終えることが出来ていたらと思わずにいられないレースだった。
過去にシンボリクリスエスやゼンノロブロイなどの現役最強馬を送り出してきた青葉賞だが、彼らはダービーを無事に走っての敗戦だけに、非業の死を遂げたスキルヴィングのことを“幻のダービー馬”と呼ぶ声はある。
世代レベルに疑問符をつけられている4歳世代だけに、もしかしたら世代最強馬かもしれなかった本馬の死は、あまりにも残念というしかない。人馬の無事が叫ばれる昨今、いち競馬ファンとしても命懸けでレースに臨んでいる騎手や馬へのリスペクトを忘れずにいたいものである。
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