【オークス(G1)展望】桜花賞馬ステレンボッシュの二冠阻止は「不完全燃焼」武豊か、「計画通り」川田将雅か。混戦の牝馬クラシック第2章が開幕!
桜花賞馬ステレンボッシュ中心も、虎視眈々のライバルたち
19日、東京競馬場では優駿牝馬、通称オークス(G1)が芝2400mを舞台に開催される。2022年のスターズオンアース、23年のリバティアイランドに続き、3年連続の“二冠牝馬”誕生なるかに注目が集まる。
今年の3歳牝馬は、アスコリピチェーノが常にその中心にいた。昨年の阪神ジュベナイルF(G1)を無傷の3連勝で制覇。ぶっつけ本番で臨んだ桜花賞(G1)でも1番人気に支持された。
ところが、4連勝を懸けた牝馬クラシック初戦で2着に惜敗。その後はオークスではなく、適距離のNHKマイルC(G1)へと矛先を向けた(結果は2着)。
そのアスコリピチェーノに桜花賞で初黒星をつけたのがステレンボッシュ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。
昨夏の札幌で初陣Vを飾ったエピファネイア産駒は、2戦目のサフラン賞(2歳1勝クラス)でハナ差負けを喫したが、出世レースの赤松賞(2歳1勝クラス)を快勝。2歳女王決定戦へと駒を進めた。
阪神JFでは赤松賞から中2週のローテーションに加えて、初の関西圏への長距離輸送も伴い、条件は決して易しくなかったが、アスコリピチェーノのクビ差2着に好走。そして前哨戦をスキップして桜花賞に臨んだ。
同レースでは初コンビのJ.モレイラ騎手を背に2番人気に支持された。スタートでやや遅れ、道中は中団後方からの競馬。馬群で窮屈になる場面もあったが、直線を向いてからはスムーズに進路が開き、早めスパートからライバル勢の追い上げを凌ぎ切った。
モレイラ騎手は「ちょっとハナに立つのが早すぎたぐらい」と仕掛けのタイミングを振り返りつつ、「最後まで頑張ることができました」と馬の踏ん張りを称賛。最大のライバルが不在となった今回は1強ムードも予想されている。
ただし、そのモレイラ騎手は同週にブラジルへ帰国するため騎乗不可。新たに戸崎圭太騎手とコンビを結成し、二冠制覇に挑む。
桜花賞で不利があった武豊騎手と、オークス狙いの川田将雅騎手
ステレンボッシュにとって最大のライバルとなりそうなのが、スウィープフィート(牝3歳、栗東・庄野靖志厩舎)だろう。
昨年8月のデビューからコンスタントに使われ、すでにキャリアは7戦。デビューから永島まなみ騎手が手綱を取っていたが、5戦1勝と2勝目をなかなか挙げられずにいた。
ところが、3月のチューリップ賞(G2)で名手・武豊騎手に乗り替わると、一発回答で重賞初制覇。続く桜花賞は6番人気に留まったが、0秒2差の4着と好走している。
その前走は最後方待機で末脚を温存。直線勝負に懸けたが、馬群をさばきながらややスムーズさを欠いたのも事実。武騎手も「このメンバーでずっと外を回しては苦しいので、内を通ってどこかが空くかと思ったんだけど」と、エンジン全開には至らなかったことを認めている。
ただ「このメンバーでも十分にやれたし、オークスは楽しみじゃないかな」ともコメント。祖母スイープトウショウからスタミナと爆発力を受け継いでいれば。今回の大舞台で逆転も十分に可能だろう。
3番人気に推された桜花賞で8着に敗れたクイーンズウォーク(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)は、当初からオークスに狙いを定めていたとみられる。
マイル以下で活躍したグレナディアガーズの半妹ということで、血統的には短距離のイメージだが、デビューから2戦は1800mを走っていた。新馬戦2着後に勝ち上がり、2月のクイーンC(G3)に出走。3戦連続で1番人気に支持されると、4角11番手から直線一気の末脚で差し切りVを収めた。
しかし、続く桜花賞は中団から直線で伸びを欠いて8着。ただデビューから手綱を取る川田将雅騎手が「これをいい経験にして、次に向かっていくための準備ですね」とコメントしたように、早々と目標をオークスに切り替えていた。
また陣営も桜花賞前から「(桜花賞よりも)オークス向き」と春の大目標についてコメントしており、今回はメイチの勝負駆けに期待できそうだ。
同じく桜花賞組からあと2頭の名前を挙げておきたい。
ライトバック(牝3歳、栗東・茶木太樹厩舎)は、2月のエルフィンS(L)でスウィープフィートに勝利した素質馬で、桜花賞でも4角最後方の18番手から豪脚を繰り出して3着に入った。
血統的には父が距離万能型のキズナ、母系も姉2頭が中距離で実績を残しており、2400mへの距離延長はプラス材料となりそう。課題の折り合いさえつけば、前走以上の結果を残してもおかしくない。
チェルヴィニア(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)は、アルテミスS(G3)以来の実戦となった桜花賞で大外枠もこたえたか13着に惨敗。地元の関東圏に戻って本領を発揮したい。
母のチェッキーノはシンハライトが制した16年オークスでクビ差の惜敗を喫した。8年越しのリベンジを懸けて樫の女王を狙う。
別路線組の中では、昨年の朝日杯フューチュリティS(G1)で牡馬を相手に3着に食い込んだタガノエルピーダ(牝3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)に熱視線が注がれている。
今年初戦のチューリップ賞は4着に敗れたが、桜花賞当日の忘れな草賞(L)を完勝して鬱憤を晴らした。新コンビを予定するM.デムーロ騎手は別路線組の馬でオークス2勝(ラヴズオンリーユーとユーバーレーベン)の実績持ち。二度あることは三度あるか。
この他には前走のフローラS(G2)を快勝し、いまだ牝馬には先着を許していないアドマイヤベル(牝3歳、美浦・加藤征弘厩舎)、粗削りながら前走のフラワーC(G3)で重賞初制覇を飾ったミアネーロ(牝3歳、美浦・林徹厩舎)、未勝利、1勝クラス、スイートピーS(L)と3連勝中のコガネノソラ(牝3歳、美浦・菊沢隆徳厩舎)など桜花賞組と未対戦の馬も軽視は禁物だろう。
果たして樫の舞台で“主演女優賞”に輝くのは、アパパネ、アーモンドアイを育てた国枝厩舎のステレンボッシュか、それとも他の桜花賞組か、はたまた別路線組か……。牝馬クラシックの第2ラウンドは、19日15時40分に発走時間を迎える。
PICK UP
Ranking
23:30更新- 【阪神JF】リバティアイランド、アスコリピチェーノ、ソダシを超える逸材!? 2歳女王決定戦で買うべき“大物馬主”推奨の2頭
- 【香港C(G1)展望】絶対王者ロマンチックウォリアーVS逆襲の女王リバティアイランド! ダービー馬タスティエーラ完全復活なるか
- 【阪神JF(G1)展望】L.デットーリ×米国2歳女王メイデイレディが日本襲来! フォーエバーヤング妹など日本の女王候補が迎撃
- 武豊「来年が楽しみ」ヤマニンウルス不在でも大健闘…フォーエバーヤング擁する世代レベルの高さも証明
- ミホノブルボンvsライスシャワー連想させた「100分の1」の攻防!同一馬によるワンツースリーは平地競走史上初
- 【香港マイル(G1)展望】3歳マイル王ジャンタルマンタルが待望の戦線復帰! 悲願達成のソウルラッシュと世界制覇に挑む
- 武豊「非常識な最高速」でチェルヴィニア置き去り…他馬を凌駕する切れにC.ルメール「ドウデュースと同じ走りは出来ない」
- JRA福永祐一ケイティブレイブ「西日で負けた」はサービス精神!?「面白いんじゃないかと……」ネットを炎上させた”言い訳”の真意
- ジャパンCでも天皇賞・秋でも下馬評覆す4歳馬の好走…「最弱世代」の汚名返上着々、出遅れて逃げてもダービー馬に先着の逸材が待望の復帰
- ハーツクライ産駒でも走りはディープインパクト?有馬記念に潜むファンの夢と希望とロマンと甘い罠
関連記事
【オークス】「実質未勝利勝ち」4頭参戦にトライアル組は貧乏クジ? 優先出走権も事実上の無意味…トップクラスの参戦見送りに泣いた陣営と笑った陣営
【オークス】石川裕紀人が滑り込みでラストチャンスをゲット!?血統的に距離延長歓迎の穴候補に浮上…カワカミプリンセス、カレンブーケドールに続けるか
タガノエルピーダ×M.デムーロ「新タッグ」でオークスヘ!「タイトルを獲得したいものと夢見ております」悲願の初G1制覇目指す名オーナーの希望となれるか
【オークス】ステレンボッシュの春二冠「阻止」へ、「別路線組」の有力馬をピックアップ!
約38年間のジョッキー生活に別れを告げた「二刀流の鉄人」。雨にけむる府中で人気薄と果たした「最年少G1制覇」【競馬クロニクル 第43回】