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池添謙一「凄い手応え」で始まった聖剣伝説…最後方から安藤勝己、武豊をぶっこ抜き!

池添謙一騎手 撮影:Ruriko.I
池添謙一騎手 撮影:Ruriko.I

 29日に秋のG1シリーズ開幕を告げるスプリンターズS(G1)が控える中央競馬。春の高松宮記念(G1)を制したマッドクールをはじめ、夏の北海道で快進撃を演じたサトノレーヴ、香港からの刺客2頭も参戦。浜中俊騎手の騎乗停止でチャンスが舞い込んだ横山武史騎手とナムラクレアのコンビにも注目が集まる。

 芝1200mを舞台に短距離の頂点を争う電撃の6ハロン戦は、過去に多くの名スプリンターを輩出。21年前に初G1制覇を遂げたデュランダルも歴史に名を残した1頭だ。

最後方から安藤勝己、武豊をぶっこ抜き!

 この年のスプリンターズSで大本命に推されたのは、前年のチャンピオンでもあるビリーヴと安藤勝己騎手のコンビ。春の高松宮記念も制した生粋のスプリンターは、ラストランで3つ目のG1タイトルに王手をかける。

 2番人気は武豊騎手が騎乗する元クラシック候補のアドマイヤマックス。菊花賞(G1)の大敗を機に距離を短縮して成績も安定。同年の安田記念(G1)でアグネスデジタルの2着に入り、G1級のポテンシャルを徐々に開花しつつあった。

 3番人気にデビューから無敗の5連勝でG1の舞台に駒を進めたレディブロンド。父シーキングザゴールドで母はウインドインハーヘア。あのディープインパクトを世に送り出した名牝である。

 これに前哨戦のセントウルS(G3・当時)で、3キロ差の恩恵があったとはいえ、ビリーヴを押さえたテンシノキセキが4番人気と続き、デュランダルは5番人気。OP勝ちはあっても重賞すら勝っていないことを思えば、当時はまだ一介の穴馬に過ぎなかった。

 しかし、聖剣伝説の序章となったこのレースで、デュランダルは圧倒的な存在感を発揮する。

 持ち前のスピードで好位に取りついたビリーヴに対し、スタートの出が悪かったデビュランダルは15頭立ての最後方から追走。前半600mが33秒3と流れる中、女王は抜群の脚色で最終コーナーを2番手に進出した。

 直線の坂を下って先頭に躍り出る勝ちパターンに持ち込んだビリーヴが春秋スプリント王の座を手中に収めたかと思われたのも束の間、大外からひと際目を引く豪脚を繰り出したのがデュランダルだった。

 ロックオンした女王をゴール寸前で交わしてゴール。ビリーヴはラスト3ハロンを34秒4でまとめていたように素晴らしかったものの、対するデュランダルのそれはなんと33秒1。レース後のコメントで鞍上の池添謙一騎手が「凄い手応えでした」と振り返ったのも当然の切れ味である。

「3着アドマイヤマックスは翌年の高松宮記念を圧勝しましたし、13着に大敗したカルストンライトオは翌年のスプリンターズSを優勝と非常にメンバーレベルの高かったレースでした。デュランダルは次走のマイルCS(G1)を制して翌年も連覇に成功。初G1制覇から5戦連続でG1連対を果たしたようにトップクラスの1頭として活躍しました。

また、池添騎手も前年のアローキャリー(桜花賞)に続くG1・2勝目。勝負強い若手騎手のひとりからトップジョッキーへとのし上がっていくきっかけとなりました。今でこそヤンチャな感じですけど、まだまだ初々しかった頃ですね(笑)」(競馬記者)

 鮮烈なG1初勝利を決めた一方で、生涯成績のスプリントG1は1勝に終わったデュランダル。引退後に種牡馬となってからは、オークス(G1)を制覇したエリンコートを送り出した。自身もマイルCSを連覇したように、血統的には純粋なスプリンターではなかった可能性も考えられる。

 だが、あまりにも切れ過ぎる豪脚を持っていたゆえに、スプリント戦でも通用したというのが実際のところかもしれない。

 余談ではあるが、2年前のスプリンターズSを優勝したジャンダルムは、2着に敗れたビリーヴの産駒。こちらはマイル戦を中心に使われてなかなか目が出なかったものの、1200mに短縮して素質が開花。7歳にして悲願のG1勝ちという遅咲きだった。

高城陽

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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