弥生賞(G2)ニシノデイジーは何故「今年0勝」勝浦正樹なのか? 西山茂行オーナーが語るクラシック”異端児”誕生の奇跡【特別インタビュー】
西山オーナー:大野(拓弥騎手)や武藤(雅騎手)、三浦皇成(騎手)だって同じですよ。もし新馬戦から戸崎(圭太騎手)が乗ってれば、行ける限りはずっと戸崎で行きます。巡り合わせで、ニシノデイジーは勝浦だったということです。
調教師や騎手、助手とか厩務員とか、そういう「人と人とのつながり」が楽しみで長いこと馬主をやってるわけですから。もう今回の弥生賞、そして皐月賞も「勝浦で行こう」って決めています。
――勝浦騎手にとって、ニシノデイジーの弥生賞が今年の初勝利になる可能性も。
西山オーナー:いやいや、その前に勝ってもらいましょうよ(笑)。
――ニシノデイジーといえば、桜花賞馬のニシノフラワー(ニシノデイジーの3代母)から続く、生粋の”西山ブランド”。
西山オーナー:それはね。牧場を経営する上で、自分のところで生まれた桜花賞馬(ニシノフラワー)と、自分のところで生まれた皐月賞馬(セイウンスカイ)……それを掛け合わせるのは、やっぱりロマンでしょう。
私は正直、セイウンスカイは「たぶん、ダメな種牡馬なんだろうな」と思ってました。血統がマイナーだし、(セイウンスカイの父)シェリフズスターも全然でしたから。だからセイウンスカイは100打数1安打の突然変異だと思っていたわけですよ。
その上で、セイウンスカイの血を世に残すってなると、桜花賞馬のニシノフラワーで牝馬が生まれてくれれば、(繁殖牝馬として)なんとか残ってくれるだろうなと思っていました。
――幸い牝馬が生まれたが、ニシノミライ(同2代母)は未勝利に終わってしまった。
西山オーナー:私からすれば(牝馬が生まれてくれただけで)大喜び。実は一時的に地方に移籍させるとか、もう少し走っていれば勝てる可能性もあったんですが「セイウンスカイの血を繋ぐんだ」という思いで、早めに引退させて繁殖に上げました。
その娘、ニシノヒナギク(同1代母)も同じ思いで、まだ元気なうちに繁殖に上げたんです。その流れが、ニシノデイジーでやっと花開いてくれたんだと思います。
――まさに西山牧場の執念が生んだ結晶。
西山オーナー:本当に凄いのはニシノフラワーよりも、お母さんのデュプリシト(同4代母)ですね。ニシノフラワーだけじゃなくて、去年引退したネロ(重賞2勝後、種牡馬入り)も同じ血統ですから。あの馬の血がずっと西山牧場を支えてくれて、今でもデュプリシトのおかげで競馬を楽しませてもらっています。
ニシノフラワーは今年で32歳ですけど、まだ元気ですよ。お婆ちゃんでヨロヨロしていますけど。もう歯も無くなって、ミキサーでリンゴとかを砕いて食べさせてますけど、西山牧場で作った桜花賞馬という「生きた見本」がそこにいる。それが牧場の従業員にとって大きいんです。
――それらの血を継ぐ、ニシノデイジーも種牡馬入りが期待される。
西山オーナー:まだ早いよ(笑)。まだ皐月賞も走ってないですから。
昨日、ニシノデイジーの攻め馬を見て、週末には弥生賞がある。今は「さあ、この先にどんな風景が待ってるんだろう」っていう気持ちが大きいですね。どんな景色が見えるのか、今から楽しみでしょうがないですよ。それこそが馬主の醍醐味です。
――ニシノデイジーは、まさに馬主の醍醐味を堪能できる素質馬。
西山オーナー:こういう馬が出てくれるまでが、本当に大変なんです。ポテンヒットはいくつかあっても”ホームラン級”の当たりが出るには、三振してもいっぱいバットを振り続けるしかない。毎年40頭、50頭持って、やっとデイジーのような馬が出てきたわけですから。
西山牧場にも苦しい時期がありましたし、父も(先代の正行さん)G1だけでなく重賞を勝つっていうのは「神様からの授かり物」だと言っていました。勝とうと思って勝てるわけではないし、もし勝てたなら「神様から1つ授かり物を頂いた」と思うようにしています。
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