【安田記念(G1)展望】川田将雅×ソダシVS武豊×ジャックドールVS昨年覇者ソングライン! 超ハイレベルの東京連続G1最終章
NHKマイルC(G1)から始まった東京の5週連続G1も、いよいよフィナーレを迎える。
6月4日、府中の芝1600mを舞台に行われるのは第73回・安田記念(G1)だ。今年はフルゲートを超える21頭が登録。春のマイル王の座を懸け、ハイレベルな戦いが繰り広げられそうだ。
この距離ならソダシ(牝5歳、栗東・須貝尚介厩舎)の名前を真っ先に挙げないわけにはいかない。これまで阪神ジュベナイルF、桜花賞、ヴィクトリアマイルと3つのマイルG1を制覇。ダートを含めてもこの距離は7戦して「4-1-2-0」の安定感を誇る。
G1・4勝目を狙った前走のヴィクトリアマイルは2番手から直線抜け出しを図り勝利寸前。しかし、内を伸びてきたソングラインに交わされ、アタマの差で2着に敗れた。それでも人気(3番人気)以上に走ったことで、改めてマイル戦での強さを示している。
今回は休み明けを1度叩かれた上積みも見込めるが、課題となるのが自身初となる中2週のローテーション。これまで間隔が最も短かったのは、昨秋のマイルCS(G1)で府中牝馬S(G2)から中4週で向かったが、結果は3着だった。今回は間隔がさらに詰まるだけでなく、東京への連続輸送も控えている。
しかし、1週前追い切りでは秀逸な動きを披露。6ハロン82秒3-ラスト11秒4の好時計をマークするなど、疲れは微塵も感じさせていない。
そんなソダシを待ち受けるのが、再度の鞍上変更である。前走は初めて吉田隼人騎手とのコンビを解消し、D.レーン騎手とコンビを結成。ソダシの持ち味を存分に生かす騎乗を見せ、2着に導いた。しかし、安田記念では先約があったため、今回は川田将雅騎手と初コンビを結成する。
前出の1週前追い切りに跨った川田騎手は「今までたくさんの白毛に乗せてもらいましたが、明らかに質が違う馬」と初コンタクトの印象をコメント。これに対し、須貝師は「白毛特有の口向きの癖や硬さもなく、軽い走りと言っていたね」と川田騎手のコメントを補足している。
ソダシとは初コンビになるが、これまで白毛馬の騎乗は騎手別で最多の30回を数える川田騎手。白毛馬の背中を最も知る男の剛腕に導かれ、G1・4勝目をゲットできるか。
ヴィクトリアマイルでソダシに騎乗していたレーン騎手は、セリフォス(牡4歳、栗東・中内田充正厩舎)とのコンビでマイルCSに続く春秋マイルG1制覇に挑む。
昨秋までG1では朝日杯フューチュリティS(G1)2着、NHKマイルC(G1)4着、そして昨年の安田記念で4着とことごとく他馬の後塵を拝していた。しかし、秋に富士S(G2)とマイルCSを連勝。その鮮やかな勝ちっぷりもあって、22年のJRA最優秀短距離馬に輝いている。
そして迎えた今年は3月のドバイターフ(G1)で実戦復帰。初の1800mがやや不安視され、ダノンベルーガとロードノースに次ぐ僅差の3番人気に留まった。
レースでは好スタートを決めたが、序盤は馬群で揉まれる厳しい展開。それでもレーン騎手がうまくエスコートして、3角までに外に持ち出し、直線勝負に懸けた。直線半ばまでジリジリと末脚を伸ばしたセリフォスだったが、残り200mあたりで脚が上がり、結果は5着。初の海外遠征に加えて、距離もやはり1ハロン長かった印象だ。
今回は海外帰り初戦にはなるが、2か月以上間隔は空いており、疲労の心配はなさそう。何よりマイル戦であれば、上位争いに加わることは必至だろう。
1ハロンの距離短縮がプラスに働きそうなセリフォスに対し、未知の距離に臨むのがジャックドール(牡5歳、栗東・藤岡健一厩舎)だ。
前走・大阪杯(G1)は、1000m通過が58秒9のマイペースで逃げ、最後はスターズオンアースの追撃をハナ差でしのぎ切った。
G1を制覇して勢いに乗るジャックドールだが、やはり問題は距離だろう。デビューから14戦すべてで2000mを走っていたスペシャリストだけに、一気の2ハロン短縮が果たしてどう出るか。マイルG1特有のタフな流れに巻き込まれる危険性は十分にある。
ただし、血統的にはあっさりこなしても不思議ではない。父はかつて国内外のマイル界を席巻したモーリスなら、むしろ新味を発揮する可能性もありそうだ。
鞍上を務めるのは、今回が3戦連続騎乗の武豊騎手。今年のメンバーは他に明確な逃げ馬がおらず、ハナを叩くのも一手だろう。ただ、安田記念はグレード制導入後の過去39年間で逃げ切り勝ちは2頭(88年ニッポーテイオー、16年ロゴタイプ)だけ。それも踏まえて、レジェンドがどんな策を打つかに注目が集まる。
仮にハイペースになれば、シュネルマイスター(牡5歳、美浦・手塚貴久厩舎)が浮上する。
3歳時にNHKマイルCを制覇し、安田記念でも古馬相手に3着に健闘。秋は毎日王冠(G2)でダノンキングリーら古馬を一蹴したが、その後は7連敗を喫していた。
1年半ぶりの美酒を味わったのは前走のマイラーズC(G2)。新装・京都競馬場で行われた最初の重賞で、堂々1番人気の支持を集めると、自慢の末脚を繰り出して大外を鋭伸。5着までが0秒2差の接戦を制し、復活への足掛かりを作った。
過去2年の安田記念で3着→2着と着順を上げているシュネルマイスター。“三度目の正直”で完全復活を遂げることができるか。
ヴィクトリアマイルでソダシを破ったソングライン(牝5歳、美浦・林徹厩舎)は、昨年と全く同じローテーション。1年前はヴィクトリアマイル5着からの巻き返しに成功して戴冠したが、今年は2連勝でのレース連覇が視野に入る。
引き続き戸崎圭太騎手とのコンビで、前走の状態を維持できれば、ここでも好勝負が望めるだろう。
ヴィクトリアマイルでソダシを抑えて2番人気に推されたナミュール(牝4歳、栗東・高野友和厩舎)。勝ったソングラインには0秒6差をつけられたが、スタート直後に左右の馬に挟まれバランスを崩す不利を受けた。横山武史騎手の「不完全燃焼。あれでは走る馬も走れない」というコメントからも前走はノーカウントでいい。
得意の東京コースで100%の力を出すことができれば、上位争いに加わる実力を持っているのは誰もが認めるところだろう。
昨年の菊花賞(G1)で1番人気に支持されたキタサンブラック産駒のガイアフォース(牡4歳、栗東・杉山晴紀厩舎)は、中長距離路線での活躍が期待されたが、陣営が選択したのはマイル路線。前走マイラーズCはスタートでやや後手を踏んだが、中団から追い込んでシュネルマイスターとタイム差なしの2着に食い込んだ。初のマイル戦に対応し、2戦目の上積みが見込まれる。
この他には、京王杯スプリングC(G2)で重賞初制覇を飾ったレッドモンレーヴ(牡4歳、美浦・蛯名正義厩舎)、9番人気でNHKマイルCを制したシャンパンカラー(牡3歳、美浦・田中剛厩舎)、同レース12着からの巻き返しを図るドルチェモア(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)の3歳馬2頭、さらに悲願のG1制覇を目指すメイケイエール(牝5歳、栗東・武英智厩舎)などが出走を予定している。
ソダシを中心に混戦の様相を呈する今年の安田記念。果たして勝ち名乗りを上げるのはどの馬になるのか。発走は6月4日、15時40分を予定している。
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