
なぜ3歳牝馬「絶対神話」は崩壊したのか。JRAさえ「人気の有無に関わらず注目しておきたい」と推奨するブトンドールらが全滅した裏に“暗黙”のルール変更

11日、函館競馬場で行われた函館スプリントS(G3)は、3番人気のキミワクイーン(牝4歳、美浦・奥村武厩舎)が勝利。横山武史騎手とのコンビでは、これで5戦3勝2着2回と抜群の相性を見せつける結果となった。
この勝利が北海道の重賞初制覇となった横山武騎手は「小さい頃から遊びに来ていて第二の地元みたいなもの」と喜びを表現。奥村武調教師は「サマースプリントは意識しない」とのことだが、次走は8月のキーンランドC(G3)になる見込み。サマースプリントシリーズの開幕戦を制し、まずは“夏の主役”へ大きく名乗りを上げた格好だ。
その一方、3頭が出走した3歳牝馬は散々な結果に終わってしまった。
昨年、ここが古馬初対決となったナムラクレアが1番人気に応えて圧勝したように、函館SSと言えば「斤量面で有利な3歳牝馬」と予想したファンも少なくなかったに違いない。
実際にJRAの公式ホームページにおける「データ分析」でも、過去10年で【3・0・1・5】と好成績を残す3歳牝馬については「人気の有無に関わらず注目しておきたい」と記載されている。

その上で、今年出走した3頭の3歳馬はいずれも牝馬。中でも同じ函館・芝1200mで重賞勝ちのあるブトンドールは、桜花賞(G1)9着からの参戦ながら2番人気に支持されていた。残りのリバーラ、ムーンプローブも共に前走二桁着順に大敗していたが、それぞれ8番人気、9番人気と一発が期待できる伏兵扱いを受けていた。
しかし、終わってみれば3歳牝馬はブトンドールの5着が最高着順。リバーラ、ムーンプローブも8着、9着と、いずれも復調のきっかけを掴むには至らず。過去10年で9頭が参戦して5頭しかいなかった3歳牝馬の4着以下が、一気に3頭も増えることになってしまった。
この結果を受け、SNSなどでは早くも今年の3歳馬のレベルに疑いを持つ声も……。古馬との戦いはまだ始まったばかりだが、秋に向けて不穏な空気が漂い始めているようだ。
なぜ3歳牝馬「絶対神話」は崩壊したのか…
「斤量を見て気が付いた人もいると思いますが、実は今年から函館SSの斤量ルールに変更がありました。
これまでは3歳牡馬が52kg、牝馬が50kgの上で収得賞金3000万円超過馬は超過額2000万円毎に1kg増という賞金別定だったのですが、今年からそれぞれ54kg、52kgとなった上で勝ったレースの格によって変動する、いわゆるグレード別定に……。
結果的に、この変更の影響が小さくなかった可能性があり、今回だけで今年の3歳馬が低レベルというのは、ちょっと早計だと思います」(競馬記者)
ちなみに昨年のナムラクレアを始め、過去10年で馬券になった3歳牝馬4頭は、すべて斤量50kgだった。昨年、最も重量を背負ったのはライトオンキューの58kgだったが、今年もトウシンマカオの58kg。“上”が増えないまま“下”だけが2kg増えた結果、3歳馬が持っていたアドバンテージが小さくなったというわけだ。
「これは愚痴になってしまいますが、JRAは今回のようにサラッと現行のルールを変えてしまうことが珍しくありません。もちろん、2023年の番組発表の際に変更点の1つとして事前通知は行っているのですが、メディアなどが、その“声”を大きくしないとなかなかファンまで詳細が伝わっていないのが現状です。
この函館SSでも公式ホームページで『3歳馬が活躍』と銘打ち、3歳牝馬について『人気の有無に関わらず注目しておきたい』と挙げるのであれば、せめて今年から斤量ルールに変更があったことを記載しておいてほしかったですね。
過去のデータを参考に予想する“データ派”のファンも少なくないので、その辺りは『もう少し親切でも良いのでは』と思ってしまいます」(同)
レース後、「バリバリのオープン馬に交じっても頑張ってくれましたが、持ち時計がないですからね」と敗因を挙げたのは、ブトンドールの池添謙一騎手だ。JRAさえ謳う函館SSの「3歳馬が活躍」というイメージは、今後見直した方がいいのかもしれない。
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