C.ルメール「騎乗馬なし」から初重賞勝ちプレゼントの幸運…川田将雅とのリーディング争いもほぼ決着、有馬記念も「二強決着」に現実味
24日にグランプリ・有馬記念(G1)、28日に2歳のホープフルS(G1)の開催を残している今年の中央競馬。少し気の早い話をすると、C.ルメール騎手と川田将雅騎手の目覚ましい活躍が印象に残る1年だった。
17日現在で161勝を挙げているルメール騎手がリーディングトップで、これを追う川田騎手が147勝を挙げて2位。昨年は川田騎手が念願のリーディングジョッキーを獲得したが、残りの開催日数と勝利数の差を考えれば、ルメール騎手の王座奪還でほぼ間違いないだろう。
両者の快進撃を支えたのは、やはりイクイノックスとリバティアイランドの存在だ。
ルメールと川田の活躍が印象的な1年
ルメール騎手とイクイノックスのコンビは、春にドバイシーマクラシック(G1)と宝塚記念(G1)を制しただけでなく、秋にも天皇賞・秋(G1)とラストランのジャパンC(G1)で他馬を圧倒する走りを披露した。
JRA歴代最高となる22億円超の賞金を獲得し、新種牡馬として異例の種付け料2000万円も発表された。初年度の花嫁候補には、ルメール騎手の元お手馬アーモンドアイの名前も挙がっており、もし実現するようなら、父母合わせて「15冠ベビー」の誕生となる。
対する川田騎手もリバティアイランドとの出会いは、これまでの騎手人生の中で最大の幸運といえるかもしれない。
騎手として申し分のない成績を残している川田騎手だが、デビュー戦から他の騎手へと乗り替わることなくG1を複数勝利したのは、リバティアイランドが初体験。昨年7月の新潟でデビューした才女は、JRA史上最速タイの上がり31秒4をマークして勝利した。その後、同年暮れの阪神ジュベナイルF(G1)で2歳女王に輝くと、今年の牝馬三冠を制して史上7頭目の栄誉を獲得している。
イクイノックスに胸を借りたジャパンCこそ敗れたが、世界最強馬以外に先着を許さなかったように女王の意地は見せた。名実ともに代表的なパートナーとして、後世に語り継がれるコンビとなっただろう。
また先週末には、今年の中央競馬がいかにルメール騎手と川田騎手の2人を中心に回っていたのかを象徴するかのような出来事も発生していた。
有力馬が続々と2人のトップジョッキーに
先週末に行われた土曜中山のターコイズS(G3)は、ルメール騎手が騎乗したフィアスプライドが、日曜阪神の朝日杯フューチュリティS(G1)は、川田騎手が騎乗したジャンタルマンタルがそれぞれ優勝。どちらも1番人気に応える見事な手綱捌きで勝利へと導いた。下馬評の高かった後者はともかく、前者の1番人気はルメール騎手とのコンビだったことも大きく影響したはずだ。
「今年は例年以上に2人へ有力馬が集まっているように感じます。秋は、短期免許で来日する外国人騎手との兼ね合いで、有力馬が分散することも珍しくないのですが、それぞれイクイノックス、リバティアイランドという絶対的なお手馬がいたこともあり、大きな影響を受けませんでした。
また、C.スミヨン騎手の来日もなく、D.レーン騎手やC.デムーロ騎手らが、制裁の関係で秋の短期免許を申請できなかったことも追い風となったでしょう。もし彼らが来日していれば、ジャンタルマンタルに騎乗した可能性もありましたが、最終的に鮫島克駿騎手から川田騎手への乗り替わりとなりました」(競馬記者)
その一方でターコイズSにおけるルメール騎手の起用は、これほどまでにルメール優先で物事が運ぶのかと、記者も驚きを隠せなかったという。
「当初、ルメール騎手はこのレースでルージュスティリアに騎乗予定でしたが、発表されたハンデが、想定より軽い53キロで騎乗が不可能となる誤算が発生しました。その結果、鞍上は三浦皇成騎手へと変更され、騎乗馬がいなくなってしまったのです。
ここまでならハンデ戦ではよくある話なのですが、そこからがあり得ない展開でした。当初、出走決定順が19番目のフィアスプライドは間違いなく出られない状況で、日曜中山のディセンバーS(L)に北村宏司騎手で予定していました。
ですが、ターコイズSに出走予定のビューティフルデイが熱発で回避。他にもコスタボニータがディセンバーS、メイショウホシアイが土曜阪神のタンザナイトS(OP)に回ったことで滑り込みセーフとなり、ハンデの斤量もルメール騎手がギリギリ乗れる54キロという、願ってもない状況に好転したのです。さらに北村宏騎手にお手馬のサーマルウインドがいたため、ルメール騎手とのコンビが実現となりました」(同)
何もかもがルメールに向いた驚きの出来事
まるでルメール騎手のために、すべての条件がうまい具合にハマったように思えるものの、レースでも内枠有利といわれる中山のマイル戦で3枠6番の絶好枠をゲットした。ここまで“お膳立て”が整ったなら後は名手の腕次第。これまでは後方からの競馬が多かったフィアスプライドを好スタートから好位4番手につけて抜け出す、完璧なエスコートで勝利へと導いたのだから恐れ入る。
枠や位置取りで不完全燃焼に泣いたライバルを尻目に初重賞勝ちをプレゼント。ルメール騎手自身も今年は重賞17勝目と絶好調ぶりをアピールした。
そんなルメール騎手だが、今週末の阪神C(G2)はアグリ、有馬記念ではスターズオンアースに騎乗を予定。最強のお手馬イクイノックスはターフを去ったが、完璧に責務をこなすルメール騎手なら、すぐに将来有望な新パートナーが現れるだろう。
もちろん、有馬記念で川田騎手と新コンビを結成する3歳馬ソールオリエンスも侮れない。今年の世相と結びつくサインが話題となるグランプリだが、終わってみれば今年を代表する騎手2人の「二強決着」というオチにも現実味がありそうだ。
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