天下の社台ファーム×社台レースホースが10年間未勝利?スターズオンアースも勝てない古馬G1。中山記念に挑むソールオリエンスが今年超えるべき壁とは
今週末に行われる中山記念(G2)で昨年の皐月賞馬ソールオリエンスが復帰する。この春はドバイ遠征ではなく、大阪杯(G1)に照準を定めており、復帰初戦のここで勢いを付けるべく陣営も力が入っていることだろう。だが、ここで1つ気になる点がある。それは同馬を生産した社台ファーム、そして馬主の社台レースホースが日本中央競馬会(JRA)の古馬G1で不振ということだ。
ノーザンファーム×サンデーレーシングとともに、社台グループの双璧をなす社台ファーム×社台レースホースの組み合わせであるが、実はここ10年ほどJRAの古馬G1レースを勝利していないという意外な事実がある。昨年は皐月賞(G1)をソールオリエンスが勝利し、ジャンタルマンタルが朝日杯フューチュリティS(G1)を勝利。二冠牝馬スターズオンアースも有馬記念(G1)でドウデュースの2着に好走するなど活躍した。
だがG1の勝利は3歳まで。最後に古馬のG1レースを勝利したのは2013年12月ジャパンCダート(G1・現チャンピオンズC)のベルシャザールというから驚き。さらに芝の古馬G1レースは2008年にファイングレインが勝利した高松宮記念(G1)とさらに5年前。また王道路線と呼ばれる古馬混合芝2000m以上のG1レース(大阪杯、天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念)に限ると、なんと2005年にディープインパクトを破ったハーツクライの有馬記念が最後の勝利なのだ。
ちなみに社台レースホースの所有馬に厳選せず、社台ファームの生産馬という範囲に広げても、古馬王道路線の勝利は2014年にスピルバーグが勝利した天皇賞・秋まで遡るのである。一方でライバルであるノーザンファームは、イクイノックス、ドウデュース、ジャスティンパレスで昨年の天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念を制しただけでなく、サンデーレーシングが所有するソングラインでヴィクトリアマイル(G1)と安田記念(G1)、ママコチャでスプリンターズS(G1)という古馬のG1レースを多数勝利。その圧倒的な実績に対し、昨年10月に都内で行われた社台グループの謝恩会で社台ファームの吉田照哉代表が
「ノーザンファームばかり勝っている」
とコメントしていたが、これは事実に基づく本音だろう。まさに同じ社台グループでも差は開く一方なのである。
ただし、これは社台ファームと比較してノーザンファームだけが突出しているわけではない。例えば生産者リーディングでは社台ファームの下位に位置する岡田スタッドは、タイトルホルダーで2022年に天皇賞・春や宝塚記念を勝利し、2016年にはサウンドトゥルーでチャンピオンズC(G1)も勝利。下河辺牧場は2014年にマイルCSを勝利し、ノースヒルズはコントレイルで無敗のクラシック三冠を達成しただけでなく、2021年にはジャパンCを勝利。また三嶋牧場は生産数が年間60~70頭ほどと社台ファームの5分の1程度だが、それでも2023年に高松宮記念、2021年にも安田記念を勝利している。
つまり他のリーディング上位の生産牧場は、ノーザンファームほどではないものの、それなりに古馬のG1レースを勝利している。それに対し、まさか天下の社台ファームが、10年以上も勝てていないのは不思議というほかない。これには社台ファームの生産馬に共通する何かがあるのだろうか。
そんな社台ファームが今年期待を寄せるのは、5歳の牝馬で今年がラストチャンスとなる2年前の二冠牝馬スターズオンアース。今週末の中山記念に出走する皐月賞馬ソールオリエンス。香港のクイーンエリザベス2世C(G1)2着、昨秋の天皇賞・秋で3着に好走したプログノーシス。昨年暮れの香港ヴァーズ(G1)2着ゼッフィーロ。昨年の日本ダービー(G1)4着、京都記念(G2)2着のベラジオオペラといったあたりか。
その中でも、やはりソールオリエンスにかける期待は大きいだろう。昨年の有馬記念は8着に敗退しているが、皐月賞で見せた末脚は一級品。日本ダービーも僅差の2着に好走しており、同じキタサンブラック産駒のイクイノックスが歴史的名馬となって引退しただけに、ファンの注目も否が応でも高まるからだ。
そのソールオリエンスが出走する中山記念は、ジオグリフやエルトンバローズ、イルーシヴパンサー、ヒシイグアス、ソーヴァリアント、マテンロウスカイ、ラーグルフ、ドーブネと好メンバーが揃った。その中でソールオリエンスがどんなレースを見せるのか、初コンビを組む田辺裕信騎手の手綱捌きとともに注目したい。
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