「最強世代」の『最強馬』無敗の皐月賞馬アグネスタキオンが駆け抜けた「神話」
かつて皐月賞(G1)を勝った時点で、アグネスタキオンほど「三冠」を強く意識させられた馬はいなかったのではないか。
『クラシック三冠というホースマンの大いなる夢に向けて、戦いを前に「確信」を持てる力とは、一体どういう存在なのでしょうか。光を超える素粒子と名付けられた21世紀の怪物にとって、これまでの3レースはプレリュード。いよいよ、ここからタクトが振られるクラシック第一楽章・第61回皐月賞です』
そんなレース前アナウンスからスタートして僅か2分後、鳴りやまない大歓声の中『アグネスタキオン、まず一冠!』という実況が響き渡った2001年の皐月賞。
ほぼ他の馬を無視した公平さを欠くような競馬中継は、こういったG1の舞台でたびたび見られるが、この馬の場合は「仕方ない」と思えてしまう。
同世代のライバルが弱いわけではない。アグネスタキオンがあまりにも強すぎたのだ。
実際にこの世代はNHKマイルC(G1)を勝ったクロフネが秋にはジャパンカップダート(G1)を勝ち、日本ダービー馬のジャングルポケットはジャパンカップ(G1)を、菊花賞馬のマンハッタンカフェが有馬記念(G1)を勝つなど、3歳時ですでに競馬界の勢力図を完全に塗り替えている。
そんな突出した才能が揃っていた側面からも2001年の3歳牡馬クラシックは戦前から「非常にハイレベル」と評判で、どこか今年2016年の3歳牡馬クラシック路線と共通するものがある。
ただ、一つ違ったことは「最強世代」と呼ばれる存在たちの中で、2001年はクラシックを戦う前にすでに「最強」がはっきりとしていたということだ。
兄が日本ダービー馬で、母が桜花賞馬。生まれながらにしてクラシック制覇を宿命づけられたかのような血筋は、今年で言えば菊花賞馬の兄と、日米オークス馬の母を持つリオンディーズと同じような立場といえるだろう。
そんなアグネスタキオンの「異次元」と述べて差し支えない強さが全国区に広まったのは、デビュー2戦目となった年末のラジオたんぱ杯3歳S(G3)だった。
このレースには新馬戦、エリカ賞(500万下)を圧倒的な強さで連勝し、早くから「怪物」と言われていたクロフネ、さらには新馬戦と札幌3歳S(G3)を連勝していたジャングルポケット、それにアグネスタキオンが顔を合わせている。