ライバル・ジェンティルドンナが高みに昇るほど、独り歩きしたヴィルシーナの「評価」と「期待」。そして、失うもののない「等身大」の強みで掴み獲った栄冠

『生まれた時代が悪かった』
そう言ってしまうのは簡単だが、言ったからといって何かが変わるわけではないし、人生をやり直せるわけでもない。それは、人も馬も同じだ。
2012年の3歳牝馬クラシック。生涯にたった一度しか挑戦できない夢舞台を走り抜いたヴィルシーナは、たった”一頭の壁”を越えられないまま無冠に終わった。
「競馬に携わる以上、相手がどんな馬であれ、勝つことが目標。いくら『ジェンティルドンナは強い』とわかっていても、僕やスタッフ、オーナーは悔しさでいっぱいでした」
主戦の内田博幸騎手は、三冠牝馬ジェンティルドンナの強さを称えながらも、三冠すべてで2着に終わった結果に、悔しさを隠し切れないでいた。それも、ジェンティルドンナが不在となり、単勝1.9倍に推されたエリザベス女王杯(G1)では雨にたたられ、またも2着。レインボーダリアの乾坤一擲の走りに屈した。
強いことはわかっている。距離、馬場コンディションに問わず確実に自分の力を出し切れるのは、ヴィルシーナが紛れもない名馬であることの証だ。
だが、勝てない。勝ち切れない。勝つために一体、何が足りないのか。
「自分の誕生日が2月22日で、現役時代の背番号が22番だから(ヴィルシーナが2着ばかりなのは)仕方ない」横浜ベイスターズで日本一を成し遂げ、メジャーリーグでも地区優勝など数々の栄光を手にしてきたオーナー・佐々木主浩も自嘲気味に笑った。
それでも佐々木オーナー、友道康夫調教師を始めとした陣営は、ヴィルシーナに対する自信を失わなかった。古馬になった年明け初戦は、牝馬限定戦ではなく大阪杯(G2)に出走。最強牝馬の一角として、果敢にオルフェーヴルら牡馬の一線級と戦う道を選んだ。
ライバルのジェンティルドンナは、3歳牝馬ながらジャパンカップ(G1)で王者オルフェーヴルを撃破。さらに、この春には日本代表として海を渡ってドバイシーマクラシック(G1)で2着と、堂々と世界と渡り合うまでに成長していた。
しかし、だからこそヴィルシーナは、あえて厳しい道を選んだのかもしれない。自分こそが、ジェンティルドンナのライバルであり続けるために――。
だが、大阪杯で待っていたのは非情な現実だった。覚悟はしていたかもしれないが、オルフェーヴルはあまりに強かった。それどころかショウナンマイティやエイシンフラッシュといった強豪牡馬にすら太刀打ちできず、ヴィルシーナは生涯初の馬券圏外となる6着に沈んだ。
「いい感じだと思ったのですが、休み明けの分でしょうか。こんな馬ではないと思います。ここを使って、次、走ってくれればと思います」手綱を取った内田騎手は、あくまで強気な姿勢を崩さなかった。
だが、この瞬間、ヴィルシーナを「ジェンティルドンナのライバル」と言う者は誰もいなくなった。
ベールが剥がれ落ち、競走馬としての地位も名誉も大きく失ったヴィルシーナ。だが、人と同じで「等身大」に戻った彼女は、随分と身軽になったのかもしれない。
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