JRA武豊「乗り替わり」で思い出される「この馬はスプリンターだよ」。 スプリンターズS(G1)横山典弘が21年前に起こした「ノリマジック」

「この馬はスプリンターだよ」――
横山典弘騎手が21年前に、ある馬に使った言葉だ。
武豊騎手の凱旋門賞(G1)参戦が決定し、スプリンターズS(G1)で鞍上がぽっかりと空いたダイアトニック(牡5歳、栗東・安田隆行厩舎)。そこで白羽の矢が立ったのが、名手・横山典弘騎手だった。
かつての主戦・北村友一騎手という選択もあり得た中で、初騎乗の大ベテランを鞍上に選択。武豊騎手からの乗り替わりとなった背景からは、21年前のブラックホークが思い出される。
古馬として成熟した5歳(現4歳)の秋のブラックホーク。マイルチャンピオンシップ(G1)に出走した際には、背中に武豊騎手がいた。レースでは、馬なりで好位を追走したが、結果は伸び切れずの3着だった。
マイルチャンピオンシップのあとに横山騎手から「この馬はスプリンターだよ」と進言された陣営は、当時暮れに行われていたスプリンターズSに横山騎手にて出走。見事に初GI制覇を飾った。その変幻自在で大胆な騎乗ぶりから「マジック」などと称される事がある横山騎手であるが、このレースに関してはその馬を見る確かな目で「ノリマジック」を成功させたといえそうだ。
そんな横山騎手が、今年のスプリンターズSで騎乗するダイアトニックだが、前走15着の伏兵と侮るなかれ。今回2頭出しとなる安田隆行厩舎だが、人気はダノンスマッシュでも能力は僚馬にも引けは取らない。
1番人気で15着に敗れたキーンランドC(G3)は参考外。陣営が「馬場が悪く、その影響が大きかった」とコメントしたように敗因は明白だ。
初の1200m戦となった2走前の高松宮記念は結果こそ3着ではあったが、クリノガウディーの斜行によって不利を受けた事を考えれば、勝っていてもおかしくはない内容だった。
この中間はレースでのダメージも見せず、余力のある動きを見せるダイアトニック。横山騎手となら……そんな予感をさせるコンビである。
天皇賞・春(G1)3勝など、長距離での活躍がイメージにある横山騎手。逆に1200mでのG1勝ちは、ブラックホークのスプリンターズSしかない。スプリントG1では1勝とあまり得意とはいえない条件かもしれない。ただ、武豊騎手からの乗り替わりは21年前と同じ状況。レースでは、ぜひ「ノリマジック」が炸裂する事に期待したい。
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