JRA「24年ぶり」関東馬が皐月賞(G1)ワンツーフィニッシュ! 「東高西低」予感させる人馬の活躍、長らく続いた屈辱の時代から反撃の狼煙
牡馬クラシック第1冠、第81回皐月賞(G1)はエフフォーリア(牡3、美浦・鹿戸雄一厩舎)が優勝。無傷の4連勝で、ひとつ目のクラシック戴冠を果たした。
横山武史騎手の好騎乗に唸った競馬ファンも多いだろう。前日の悪天候から天気は回復するなか、気温も急上昇。「内側から急速に乾く」中山競馬場の芝の特徴を知っていたのか、インから直線で抜け出して、2着に0.5秒の差をつけて初G1勝利を飾った。
その2着は8番人気のタイトルホルダー(牡3、美浦・栗田徹厩舎)。田辺裕信騎手はレース後、「取りたいコース取りができて、頑張ってくれた」とコメント。ホームグラウンドといえる中山コースを知り尽くす関東所属の田辺騎手。穴馬を上位に導いた理想の進路取りは、当日の中山競馬場の芝の状態を把握していたからこそできた芸当だろう。
関東馬の皐月賞ワンツーフィニッシュは、1997年のサニーブライアンとシルクライトニング以来、なんと24年ぶりの出来事。過去のクラシックレース全体でも、関東馬が1,2着を独占したのは2010年のオークス(G1)で、アパパネとサンテミリオンが同着優勝して以来と、10年以上も昔の話。
さらに3着ステラヴェローチェの吉田隼人騎手も、近年は関西に拠点を置いているとはいえ、関東所属騎手のひとり。JRAのG1レースで美浦所属の関東騎手が3着までを独占したのは、2015年のヴィクトリアマイル(G1)以来と、G1レースで苦戦していた関東勢が反発した。
長きに渡り「西高東低」が囁かれている昨今の競馬界。しかしながら、先の皐月賞の結果は「東高西低」へ転じる、反撃の狼煙といえないだろうか。
前述の通り、完勝のエフフォーリア。過去の皐月賞で2着に0.5秒以上の差をつけての優勝は、2011年オルフェーヴル(0.5秒)、1994年ナリタブライアン(0.6秒)の2頭だけ。レジェンド馬に肩を並べる“大差”勝ちは、次走ダービー(G1)で、ふたつ目のクラシック戴冠を期待させるのに十分な内容だった。
牝馬路線に目を向ければ、先の桜花賞(G1)で優勝したソダシは栗東・須貝尚介調教師の管理馬だが、主戦を務めるのは吉田隼騎手。一方で2着サトノレイナス、3着ファインルージュ、4着アカイトリノムスメまで、全て美浦所属の厩舎が管理する関東馬。舞台を東京競馬場に移すオークス(G1)でこそ、彼女たちの巻き返しは十分に考えられる。
さらに騎手要素では、デビュー5年目の横山武騎手は、美浦・鈴木伸尋厩舎所属の若干22歳。親子二代制覇を果たした皐月賞優勝を転機に、父も認めるその実力は大きく開花しようとしている。皐月賞に続き、エフフォーリアと横山武騎手がダービーを制すれば、関東勢の“復権”も現実味を帯びてくるはずだ。
もしもエフフォーリアがダービーを制すれば、関東馬では2017年のレイデオロ以来となる。また、横山武騎手がダービーを制すれば、2014年にワンアンドオンリー騎乗の父・横山典騎手以来、7年ぶりに関東のダービージョッキーが誕生する。
さらに関東馬と関東所属騎手がダービーを制したのは、2009年のロジユニヴァースと、これまた父・横山典騎手が達成して以来、12年ぶりの快挙となる。「競馬には巡り合わせがつきもの」といわれるが、果たして結果はどうなるか。
かつては岡部幸雄、柴田政人、蛯名正義らに代表される、一時代を築いた関東の凄腕騎手たち。アウェー感満載の関西圏の競馬場でも、その存在感を嫌というほど見せつけていた過去がある。
関東勢の失われたプライドの“復権”を賭けて挑む今年のクラシックロード。桜花賞と皐月賞を終えたその道程は、まだ始まったばかり。秋まで続く長い戦いを制することで、関東勢の黄金時代が再び到来するか。その行方を見守りたい。
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