JRA 横山典弘の「進言」でクラスの壁に阻まれた古馬が“覚醒”! 不振のG1馬も復活させた鶴ならぬ「ノリの一声」とは?
29日、新潟競馬場で行われた朱鷺S(L)は、1番人気のカイザーミノル(牡5歳、栗東・北出成人厩舎)が勝利。
デビュー当時、北出師から「能力は秘めている。良化途上の現状でも、結果を出してほしい」と、高い評価を受けていた馬が5歳夏にオープンクラスで白星を手にした。
2018年12月にデビューした同馬は、翌年2月のデビュー3戦目で初勝利。その後も1勝クラス、2勝クラスのレースをそれぞれ3戦目で勝利しており、持ち前のセンスに定評があった。
しかし、とんとん拍子で昇級とはなかなか難しい。3勝クラス昇級後は、これまでとは異なり4戦を消化するも5着が精一杯と苦戦を強いられた。
そんな状況下、昨年10月31日に行われたキタサンブラックM(7着)のレース後に、ある転機が訪れる。
「今回の朱鷺Sなどでコンビを組んでいる横山典弘騎手が、カイザーミノルへ初めて騎乗したのがこのレースでした。“馬と会話”が出来るともいう関東のベテランだけに、思うところがあったのでしょう。
レース後、カイザーミノル陣営へブリンカー着用を薦めたとのことです。元々精神面で脆さがあったということで、次走から着用することを決めました」(競馬記者)
ブリンカーは、約360度といわれる馬の視界の一部を遮る馬具の一種。メンタルに問題のある馬などが集中力を増して走れるようにすることが着用する主な狙いとなっている。世の中にはブリンカーのほか様々な馬具が存在しているが、田辺裕信騎手曰く「1番効果を感じさせられるのはブリンカー」とのこと。
そして、カイザーミノルへのブリンカーの効果は絶大だった。
ブリンカー着用初戦の斑鳩S(3勝クラス)を勝利すると、オープン昇級後もG2連続3着はじめ掲示板を外さない「覚醒」と言っても過言ではない活躍を見せている。
斑鳩Sでコンビを組んだ荻野極騎手は、「ブリンカーを着けたことで、集中力が持続しました。直線も外から来られましたが、ブリンカーの効果か、よく踏ん張りました」と、“ブリンカー効果”があったことに触れている。
陣営もその効果をひしひしと感じているようだ。北出師は、「ブリンカーを着用してから、距離を含めて色んなバリエーションで競馬ができるようになった」と、話している。
「過去には成績不振だったゴールドアクターの1週前追い切りで横山典騎手が騎乗した際、陣営へ『気になるところがある』と言って、自分なりの改善点を伝え陣営はそれを実行したそうです。そしたら、宝塚記念(G1)で2着へ好走しました。
横山典騎手の馬を見る目は確かです。彼のアドバイスは“鶴の一声”ならぬ“ノリの一声”と言っていいでしょう(笑)」(同記者)
その横山典騎手だが、今年に入り調教師への転身を決断。今年の夏から本格的に調教師試験勉強を開始している。
サクセスエナジー、グァンチャーレといった活躍馬を輩出している北出厩舎が見抜けなかったカイザーミノルの“起爆剤”をテン乗りで見抜いた横山典騎手。その「慧眼」があれば、調教師になっても騎手時代と同様、一流になれるのではないだろうか。
(文=寺沢アリマ)
<著者プロフィール>
大手スポーツ新聞社勤務を経て、編集部所属のライターへ。サラ系・ばん馬のどちらも嗜む二刀流で「競馬界の大谷翔平」を目指すも収支はマイナス。好きな競走馬はホクショウマサル。目指すは馬券的中31連勝だが、自己ベストは6連勝と道は険しい…。
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