JRA三冠馬コントレイルに続き、年度代表馬エフフォーリアも天皇賞・春(G1)は「眼中になし」、存在意義を問われる伝統の一戦
昨年の年度代表馬エフフォーリア(牡4、美浦・鹿戸雄一厩舎)が、今年の始動戦として大阪杯(G1)を予定していることが分かった。
同馬は現在、福島県のノーザンファーム天栄で放牧中。鹿戸師のコメントによると、大阪杯の結果と状態次第で宝塚記念(G1)参戦も視野に入れているとのこと。現役最強馬の一角を務めたクロノジェネシス、コントレイルらがターフを去った今、今年の競馬界を引っ張る存在として、大きな注目を集めることになる。
その一方で、陣営が天皇賞・春(G1)について一言も触れなかったことは、当然といえば当然か。2500mという長距離に分類される有馬記念(G1)を圧勝。昨秋の始動戦には、中距離の天皇賞・秋(G1)を選択し、コントレイルやグランアレグリアらの強豪古馬を撃破した。
天皇賞・秋を選択した理由に「体質的に間隔を開けた方がよく、距離延長に不安がある」とエフフォーリア陣営が認めているのなら、3200mの長距離戦を避けたのも、妥当な判断かもしれない。
ただ自身が参戦しなかった菊花賞(G1)をタイトルホルダーが楽勝したものの、2頭が直接対決した有馬記念の結果を考えた場合、菊花賞回避を逃亡したというよりも、強力古馬と対戦する天皇賞勝利の方が価値のある挑戦だったともいえる。
しかし、近年の長距離軽視の風潮を完全に決定づけた一因に、大阪杯のG1昇格の影響が、かなり大きかったのではないか。
2014年から1着馬に天皇賞・春の優先出走権が与えられたように、G2時代の大阪杯は春の大一番に対するトライアルレース的なポジションだった。そのため、同レースをステップにする馬も多く、前哨戦としても少なからず機能していたように感じられる。
だが、2017年に大阪杯がG1へと昇格して以降は、両レースの立場が逆転。大阪杯の存在は、中距離を求めていた馬にとっての新たなオアシスとなったが、天皇賞・春の存在意義は大きく揺らいだ。
JRAも大阪杯、天皇賞・春、宝塚記念を春古馬三冠として、同一年にすべてを勝利した馬に対して、特別褒賞金を支給する手立てを用意していたとはいえ、これに挑戦したのはキタサンブラック(2017年に三冠リーチの宝塚記念で敗戦)くらいである。
「秋古馬三冠とされるG1の天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念に比べると、春に中距離馬が目標とするレースが乏しかったことも大きかったですね。距離に不安のある馬にとって天皇賞・春は長い上に、開催時期の遅い宝塚記念は梅雨のシーズン。開催も進んだ重い馬場で道悪のリスクもあるため、秋の調整を考えて回避する陣営も多いです。
これを避けてマイルの安田記念(G1)や、ドバイや香港への海外遠征を視野に入れる馬もいるくらいですから、そもそも現在のレース体系が、時代に合わなくなってきているのかもしれません。種牡馬としてもスタミナよりスピードを重視される昨今の傾向を考えると、天皇賞・春も菊花賞同様、嫌われ者の仲間入りのようになりつつありますね」(競馬記者)
振り返れば、1984年から東京芝2000mで開催されている天皇賞・秋(G1)も、かつては春と同じ3200mで行われていたが、中距離戦にモデルチェンジしてから、秋の中距離NO.1決定戦の地位を確立している。
昨年はコントレイルも回避し、一部ではとうとう「三冠馬からも嫌われた」という声も出た伝統の長距離戦。ステイヤーとして素質を開花させたタイトルホルダーやディープボンドが、出走意思を見せてくれていることは救いだ。
いずれにせよ、年々影が薄くなっていることは紛れもない事実。そろそろ生き残りを懸けた分岐点を迎えつつあるのではないか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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