JRA「ありえない勝ち方」「こんな馬ではない」フィリーズレビュー(G2)鞍上を魅了する素質馬・ウィリンが挑む桜花賞への道
2日間で4つの重賞レースが行われる今週末の中央競馬。13日に阪神競馬場で開催されるのが、桜花賞トライアルのフィリーズレビュー(G2)だ。
3着までに桜花賞(G1)への優先出走権が与えられる芝1400mの一戦に、今年は15頭の若き乙女たちがエントリー。唯一の重賞勝ち馬であり、阪神JF(G1)でも5着と健闘したナムラクレアが大きな注目を集めている中、今回取り上げたいのがウィリン(牝3歳、美浦・林徹厩舎)である。
昨年7月に福島の新馬戦を勝ち上がり、半年以上の休養を挟んで臨んだ今年1月の紅梅S(L)では3着と善戦。中7週で挑む今回がキャリア3戦目となる。
新馬戦はスタート後の1歩目で出遅れながら、二の脚でスピードの違いを見せて楽に先頭を取り切ると、4コーナーのカーブから直線にかけて、騎手は持ったままの状態で後続との差を広げていく。
終わってみれば2着に7馬身差をつける圧勝。手綱を取ったM.デムーロ騎手も「馬なりでありえないような勝ち方。すごいね~」と、思わず驚きの声を漏らした。
そこから6カ月半空けて挑んだキャリア2戦目の紅梅Sでは、主張する馬を行かせてインの4番手で控える競馬を選択。内・前有利が顕著だった当時の中京で、2着に残った逃げ馬をつかまえることはできなかったものの、道中2番手で運んだ馬はなんとか交わして3着に入った。
トラックバイアスを跳ねのけて外からまとめて差し切った勝ち馬・フォラブリューテの豪快な競馬が目立った中、レース後の津村明秀騎手は「休み明けで心配していたテンションの高さも馬が我慢してくれた。馬の後ろで折り合って良いリズムで行けました。反応しきれなかったのは久々の分でしょうか」と振り返り、ウィリンにとっても収穫の多い一戦だったことを強調。
長い休みを挟んでの昇級戦に、実戦では経験がなかった馬群での競馬を強いられたこと。加えて、初戦でハイパフォーマンスを見せた福島とはまるで異なる左回りに長い直線、かつ直線に急坂があるコース替わりなど、不安要素が多々あった中での3着という結果をポジティブに捉えつつ、「まだまだ良くなります。こんな馬ではない」というコメントも。このひと言からも、鞍上のこの馬に対する大きな期待を伺い知ることができた。
跨った騎手が惚れこむポテンシャルの高さ。キャリア3戦目のG2挑戦も、この馬に近くで関わる人間からしてみれば「無謀」ではなく「当然」のことなのだろう。
紅梅Sから2カ月ぶりのレースとなるが、林調教師は「良い状態で戻ってきて追い切りも予定通り。良い状態で向かえる」とコンディションに不安はなし。9日の調教でも、美浦の坂路コースで4ハロンを52秒0で走破しており、ラスト1ハロンの11秒9は全体2位という好時計。状態面に疑いの余地がないことは明らかだ。
一方で、今回も課題がないわけではない。注視したいのが「馬体」と「初の関西遠征」だ。
418キロでデビュー戦を勝利し、長期の休みを挟んだ2戦目も前走比プラス10キロとはいえ428キロ。ここまで2戦続けて“メンバー最軽量”でレースを戦っている。直前のコンディションは良いとしても、初めての関西への長距離輸送で馬体を大幅に減らしてしまうということがあれば、持てる能力をフルに発揮することは難しいかもしれない。当日の馬体重は要チェックだ。
それでも、キャリアの浅さのせいなのか、想定人気はさほど高くない。あくまでも予想オッズではあるのだが、未勝利勝ちのマイシンフォニー(父・ディープインパクト)やサブライムアンセム(父・ロードカナロア)がウィリンより上位に来ている点を見ると、父・スクリーンヒーローという血統的な地味さも、推されにくい一因なのかもしれない。
枠順も8枠14番と外になり、またひとつ人気を落とす要素が乗っかってきたが、上述した騎手たちのコメントを思い返してみれば、このG2の舞台でも軽視するのは危険。穴馬券の使者となる資格は十分に秘めているはずだ。
関係者たちを魅了する“ちいさな大器”は、大舞台への切符を掴み取ることができるだろうか……。結果はもちろんのこと、今回初コンビを組む菱田裕二騎手の「レース後コメント」からも目が離せない。
(文=木場七也)
<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。
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