
JRA中山でも沸いた丸田コール! あわや「出走危機」から滑り込みで殊勲の大金星、ナランフレグに託した仲間たちの「反骨精神」とロマン
先月27日に行われた高松宮記念(G1)は、8番人気の伏兵ナランフレグ(牡6、美浦・宗像義忠厩舎)が優勝。鞍上の丸田恭介騎手、管理する宗像師も含め、人馬共に初のG1制覇となった。
元々、能力の高さを見せていた本馬ではあるが、ダートで活躍したゴールドアリュール産駒ということもあり、デビュー当初は芝ではなくダートを中心に使われていた馬だ。
以前、戸崎圭太騎手が騎乗した際も、「走る馬だけど、独特の歩様で乗りづらい」と言っていたように、俗に言う歩様が硬いタイプで、スタートから仕掛けてポジションを取りに行くことができない弱点もあった。
器用さがないため、上がり最速に近い末脚を繰り出しても、脚を余して敗れるケースも多く、後方からの追い込みがハマるかどうかが好走のカギとなっていた。
とはいえ、勝つ時はすべてが見事にハマるもので、渋った馬場状態から差し馬向きの展開、伸びない外ではなく内を引けた枠順までナランフレグに条件が揃っていた。5着までがクビ→ハナ→クビ→クビの着差を振り返ると、どれか1つでも違っていたら結果は分からなかっただろう。

ただ、ひとつ言えるのは馬の精神的なタフさと丸田騎手の好騎乗が大きく貢献していたということだ。
「直線での捌き方が最大のポイントでしたね。鮫島克駿騎手のトゥラヴェスーラに被せられながらも、狭い進路を確保して躊躇なく突っ込んだのはさすが。あそこで一瞬でも怯んだら、進路を失くして脚を余していたと思います。
これは裏話ですが、前オーナーの西城公雄氏が亡くなり、ナランフレグを誰が引き継ぐかで揉めたみたいですよ。こういう場合、親族が引き継ぐのが最もスムーズなのですが、馬主業にあまり興味のない方も多く、金銭面でも折り合うのが難しかったそうです」(競馬記者)
その結果、名義変更に時間を要し、使いたいレースに投票できないトラブルも発生していた様子。なんとか昨秋のオパールS(L)から、着実に賞金の加算に成功し、G1出走に滑り込めたものの、オーシャンS(G3)後には、本番に出走できるのか陣営もハラハラしたらしい。
殊勲の大金星を挙げた丸田騎手だが、近年は年間20勝前後と伸び悩み、今年の高松宮記念でようやく3勝目。活きのいい若手騎手の台頭もあって苦戦しているが、人気薄の穴馬を持ってくる玄人好みのジョッキーだ。
勝利騎手インタビューの様子からも伝わるように、あまり出しゃばる感じではなく、謙虚な人柄で親しみやすいタイプ。関係者からも好かれているという話も聞かれた。
レース当日にも、そんな丸田騎手の人望を象徴する場面があったようだ。
「中山競馬場で高松宮記念を観戦していたジョッキーの多くが、丸田騎手を応援していましたよ。ゴール前では調教師やバレットなども含めて丸田コールで一色。勝利した瞬間は歓声と拍手の大盛り上がりで、丸田騎手のガッツポーズや一挙手一投足に笑いが起こっていたようです。
さらに非ノーザン系の馬が優勝したことも、現場が盛り上がった要因でしょう。ノーザンファーム系の生産馬でテン乗りのトップジョッキーや外国人騎手が勝つよりも、こういった紆余曲折ありながらも繋がりのあるコンビ、地味な血統や馬主が勝つ方がロマンもありますから」(同)
言われてみれば、高松宮記念の上位3頭は、ノーザンや社台などの生産馬ではなく、それぞれの騎手もG1を勝ったことがないフレッシュな面々だった。丸田騎手の勝利で大舞台に縁のない騎手仲間たちの反骨精神にも火がついたかもしれない。
丸田騎手本人も関係者への大きなアピールとなっただけに、再浮上のきっかけにしたいところだろう。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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