JRA安藤勝己氏キラーアビリティ、ダノンベルーガ、イクイノックス「3強の牙城は強固」。皐月賞(G1)軽視の「新スタイル」が今年から変化するかもしれない理由
今週日曜、中山競馬場では皐月賞(G1)が行われる。
それに合わせて、JRA元騎手の安藤勝己氏が『Web Sportiva』(集英社)にて3歳牡馬の番付を発表。横綱にはキラーアビリティ、大関にダノンベルーガ、関脇にイクイノックスを挙げ、今年のクラシック戦線はこの3頭を中心とした争いになるとの見解を示した。
また皐月賞に関しても、「基本的には3強の牙城は強固。この壁を打ち破るのは容易ではないだろう」としており、比較的堅い決着になると見ているようだ。
詳細はぜひ本記事をご覧いただきたいが、現在の3歳世代でこの3頭が有力である事に異論はないだろう。
だが、皐月賞に限っては気になる点もある。キラーアビリティとイクイノックスは前哨戦を使わずに皐月賞への直行を選択。またダノンベルーガも陣営がかねてより日本ダービーを目標に掲げており、直前まで出走可否を保留していた事情がある。こういった理由から安藤氏が挙げたこの3頭は、いずれも日本ダービーをより意識した臨戦過程でここまで来ているように見えなくもない。
安藤氏が推奨する「3強」も安泰ではない?
近年は日本競馬のスピード化に伴い、長距離の菊花賞(G1)ではなく天皇賞・秋(G1)やマイルCS(G1)へ向かう3歳馬が増加。そういった流れから、3冠レースの勝利がベストであるという価値観は、以前よりも希薄化している。それに伴って、最大の栄誉である日本ダービーを確実に勝つために、皐月賞はパスする、あるいは皐月賞では目一杯には仕上げないという陣営が増えてきていることも事実だ。
実際に安藤氏も同記事内で「有力馬の多くが皐月賞を“叩き台”として、最大目標のダービーを見据えている印象が強い」とコメントしている。実際に各陣営がどのレースに標準を合わせているかは分からないが、それぞれの陣営の思惑によっては今回のレースで番狂わせが起きても何ら不思議ではないだろう。
また3強にとって最大の強敵となりそうなのが、2歳王者のドウデュースだ。同馬は安藤氏が挙げた3強とは対照的に朝日杯FS(G1)、弥生賞ディープインパクト記念(G2)を経由する、所謂王道ローテーションでここに臨んでおり、新時代vs王道としても興味深い一戦となりそうだ。
さらに、今年から皐月賞の賞金が4千万円の大幅増額により1億5千万円となった事で、より混戦になる可能性もありそうだ。
JRAは『海外の主要競争に対しての競争力を確保したい』として2022年から国内のほとんどのG1競走で賞金の大幅な上積みを行った。一方で日本ダービーに関しては据え置きの2億円のままで、皐月賞との賞金差は一気に狭まった事になる。
日本ダービーを最大目標に据える陣営がいる一方、皐月賞を目標にしている陣営にとってはさらにモチベーションが高まる一因になりそうだ。こういった理由からも、安藤氏一押しの3強も安泰とは言えないだろう。
(文=椎名佳祐)
<著者プロフィール>
ディープインパクトの菊花賞を現地観戦し競馬にのめり込む。馬券はアドマイヤジャパン単勝勝負で直線は卒倒した。平日は地方、週末は中央競馬と競馬漬けの日々を送る。
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