JRA史上ワースト連敗の「真犯人」は武豊!? 横山武史、川田将雅が複数裏切りも…「先入観」覆したC.ルメールに存在感
先週末の宝塚記念(G1)を終え、2022年上半期のG1開催はすべて終了。7月からは2歳馬のデビューとローカル重賞が続く夏競馬へと切り替わる。
秋のG1開幕を告げるスプリンターズSが行われる10月2日は約3か月先。キリのいいところで今年の前半に熱戦が繰り広げられたG1レースを振り返ってみたい。
まず何といっても避けては通れないのが、今春のG1で1番人気に支持された馬たちの不振だろう。
今年最初に開催されたフェブラリーSから宝塚記念までなんと12連敗。昨年暮れのホープフルSから数えると13連敗となり、もちろんこれは史上ワーストの記録である。その関係もあって、高松宮記念やNHKマイルCのように三連単の払戻が100万円を超えるケースもあった。
では、この春の嵐に悪い意味で貢献してしまった騎手をピックアップしたい。以下はトータル12レースの1番人気馬とそれに騎乗していた騎手だ。
■2022年上半期G1の1番人気馬(着順)騎手、勝ち馬(騎手)
フェブラリー レッドルゼル(6着)川田、カフェファラオ(福永)
高松宮記念 レシステンシア(6着)横山武、ナランフレグ(丸田)
大阪杯 エフフォーリア(9着)横山武、ポタジェ(吉田隼)
桜花賞 ナミュール(10着)横山武、スターズオンアース(川田)
皐月賞 ドウデュース(3着)武豊、ジオグリフ(福永)
天皇賞・春 ディープボンド(2着)和田竜、タイトルホルダー(横山和)
NHKマイル セリフォス(4着)福永、ダノンスコーピオン(川田)
ヴィクトリア レイパパレ(12着)川田、ソダシ(吉田隼)
オークス サークルオブライフ(12着)デムーロ、スターズオンアース(ルメール)
日本ダービー ダノンベルーガ(4着)川田、ドウデュース(武豊)
安田記念 イルーシヴパンサー(8着)田辺、ソングライン(池添)
宝塚記念 エフフォーリア(6着)横山武、タイトルホルダー(横山和)
※フェブラリーはフェブラリーS、NHKマイルはNHKマイルC、ヴィクトリアはヴィクトリアマイル(敬称略)
1番人気に騎乗した数では4回の横山武史騎手、3回の川田将雅騎手の順で他騎手はすべて1回のみ。騎乗数においてはこれら2人が群を抜いて飛ばした騎手といえる。それでも両者の比較では3着2回の横山武騎手に対し、2勝を挙げている川田騎手が圧倒的に好成績を収めていることには評価が必要だ。
その一方、人気を裏切り続けた1番人気馬の顔触れを振り返ってみると、一概に騎手の騎乗が原因で負けたとも言い難い事実もある。2度敗れたエフフォーリアにしても、大阪杯はともかく宝塚記念の1番人気を疑問視する声は少なからずあった。2着に敗れたディープボンドも7馬身差の完敗なら情状酌量の余地は十分だろう。
ただ、強いて挙げるなら皐月賞3着のドウデュースは、騎乗した武豊騎手も「ポジションが結果的に後ろだったかもしれません。今日は大事に行きました」と悔いたように、乗り方次第で結果が変わっていた可能性は十分に考えられた敗戦でもあった。
結果的に先行馬が好走した展開で後ろ過ぎるポジションだったことに対し、元JRA騎手の安藤勝己氏からは公式Twitterで「ドウデュースはどうしても大外を回したかったか、距離を懸念して終いだけの競馬をしたかったのか。それにしても後ろからすぎた」と指摘をされている。
次走の日本ダービー(G1)で優勝する実力を持っていただけに、皐月賞の武豊騎手が責められてもやむを得なかったか。
「重賞29連敗」覆したC.ルメールの存在感
また、国内重賞を29連敗したことで話題となったC.ルメール騎手が、意外にも好成績を残していることにも触れておきたい。同騎手は8鞍に騎乗して1着1回2着4回の健闘。これは全騎手中でトップの連対であり、その1勝も自身の連敗をストップさせたオークスだった。
様々なドラマが生まれた上半期のG1で1番人気馬が最も勝つ可能性があったと考えられるのは皐月賞である可能性が高いものの、あくまで人気やオッズは馬券を購入する人間が作り出したに過ぎない。
そういう意味では13連敗の真犯人は我々競馬ファンということになるのかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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