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三冠馬対決で「話題独占」が証明した競走馬の価値

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ヨシオ

 “場違い”という声すら出た世紀の一戦への出走は、決して無意味ではなかった。

 通算成績78戦6勝、ダートのOPを中心に息の長い活躍を見せたヨシオが福島競馬場で誘導馬となる予定であることが分かった。ヨシオは5月11日付で競走馬登録を抹消。現役を引退し、当初は乗馬になる予定との報が出ていたが、みちのくの地で第2の馬生を過ごすこととなるようだ。

 ヨシオは中央競馬で6勝を挙げていたが、重賞レースを勝ち負けするほどの活躍はなく、あくまでも一介のOPクラスの馬に過ぎなかった。しかしヨシオの名が世間に広く知れ渡ることとなったのが2020年のジャパンC(G1)への参戦であった。

 この年のジャパンCはアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトといった新旧の三冠馬3頭が激突した世紀の一戦。だが2週前に発表された登録メンバーの中には並み居る強豪馬たちに混ざって、なぜかヨシオの名前が……。

 豪華メンバーに交じっての“場違い”ともいえるヨシオの参戦は大きな話題と議論を呼び、ネットの掲示板やSNSなどでも「どうせ出走奨励金目当てでしょ」「G1に相応しくない、冷やかしに見える」といった辛辣な声や、「ルール上は何も問題が無い」「フルゲート割れであれば他の馬に迷惑はかけていない」と擁護する意見まで賛否両論の意見が飛び交っていた。

 競馬ファンの間で大きな議論を呼んだヨシオのジャパンCへの出走は、その愛嬌のある名前も相まって日に日に大きな注目を集めることに。気づけば『netkeiba.com』の想定オッズでは3頭の3冠馬を抑えて1番人気に支持され、同サイトが想定オッズを調整する事態にまで発展した。

 その後も連闘でチャンピオンズC(G1)への出走や障害競走への出走、出走こそしなかったがサウジアラビアのリヤドダートS(G3)への登録で海外遠征への意欲を見せるなど話題に事欠かない馬だったヨシオ。奇想天外なローテーションや、それでも健気に走り続ける姿は徐々にファンを魅了していき、競走成績とは違った部分で大きな人気と知名度を誇るようになっていった。

 昨年に京都競馬場が行った『アイドルホースオーディション』。これはファンによる投票で上位に入った馬をぬいぐるみ化して発売するという企画なのだが、ここでヨシオは堂々1位の投票数を獲得。メロディーレーンやキセキ、ライスシャワーといった馬を抑えて1位に選出されたこの出来事は、ヨシオの絶大な人気を物語っている。

 ジャパンCやチャンピオンズCへの出走の際には批判の声も少なくなかったが、それでも懸命に走り抜いたヨシオ。その姿は次第にファンを魅了し、一介のOP馬は一躍アイドルホースと呼ばれる存在となった。

 競走成績が振るわない馬はもちろん、重賞やG1を制した馬ですら“行方不明”となることが少なくないサラブレッドの世界。ファンに愛される存在となり、引退後も次の仕事場を得ることができたことを考えれば、当初は“場違い”と言われたG1レースへの出走が功を奏したといえるだろう。

 レースに勝つことだけが競走馬の価値ではないことを、身をもって示したといえるヨシオ。近い将来、誘導馬として福島競馬場で再びその姿を見ることができるはずだ。暖かいファンに見守られながら、幸せな第2の馬生を送って欲しいものである。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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