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イクイノックスに「見えない敵」の存在…ライバルたちを襲った激戦の代償

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イクイノックス 撮影:Ruriko.I

 25日の中山競馬場では、暮れの大一番・有馬記念(G1)が開催。昨年の覇者エフフォーリアや、春の宝塚記念(G1)をレコード勝ちしたタイトルホルダーなど、グランプリに相応しい豪華メンバーが集まった。

 そんな強力古馬たちが集まる中で主役と目されているのが、3歳馬の大将格であるイクイノックス(牡3、美浦・木村哲也厩舎)だ。21日現在、『netkeiba.com』の予想オッズでは、単勝2.4倍の1番人気想定となっている。

 昨年は新馬→東京スポーツ杯2歳S(G2)を連勝し、早くからダービー候補との呼び声も高かったイクイノックス。だが、春二冠でいずれも2着に敗れるなど、クラシック制覇にはあと一歩届かなかった。

 それでも、秋初戦となった天皇賞・秋(G1)は、歴戦の古馬たちを蹴散らして初のタイトルを奪取。その実力からも、ジオグリフ、ドウデュース、アスクビクターモアら同世代のクラシックホースたちと比べ、イクイノックスを世代トップに見立てるファンも少なくない。

 今回は初めての中山・芝2500mという舞台になるが、父キタサンブラックは5年前の同レースを制覇しているだけに、血統的な背景も追い風だ。それに加え、斤量も前走より1キロ軽くなるため、もはや死角はないようにも映る。

 しかし、懸念が全くないかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。

ライバルたちを襲った激戦の代償

 というのも、今年の天皇賞・秋に出走したメンバーの多くが、次走で不可解な凡走をしているからだ。特にパンサラッサは2着、ジャックドールは4着に好走しながら、次戦の香港カップ(G1)で前者は10着、後者は7着と不甲斐ない結果に終わっている。

 レース後には、パンサラッサを管理する矢作芳人調教師が「らしさがありませんでした」と振り返れば、ジャックドールの武豊騎手も「取りたいポジションが取れませんでした」「直線では反応がありませんでした」とコメント。善戦した天皇賞・秋に比べると、とても実力を発揮したとは思えないほどの惨敗だった。戦前はどちらの陣営も状態の良さに太鼓判を押していたものの、前走の天皇賞・秋の激走が響いた可能性も考えられる。

 何しろ今年の天皇賞・秋は、大逃げしたパンサラッサが1000m通過57秒4の超激流を演出した。さらに、勝ちタイム1分57秒5は過去10年で3番目に速い時計。道中で10馬身以上離されていた2番手以降の馬にとっても極限まで瞬発力を求められた。逃げ込みを図る相手を目一杯追い掛ける非常にタフな展開だったという見方をすると、少なからず肉体へのダメージは残っただろう。

「5着のシャフリヤールこそ次走のジャパンC(G1)で2着に好走していますが、同馬は報奨金が加算されるジャパンCが大目標と噂されたように、天皇賞・秋はお釣りを残していたようにも映ります。

これに対し、天皇賞・秋を大目標に据えていたパンサラッサやジャックドールは、おそらくメイチの仕上げで臨んでいたはずです。陣営は出走にゴーサインを出しましたが、やはり目に見えない疲れが残っていた可能性もありそうですね」(競馬誌ライター)

 となると、優勝したイクイノックスの陣営が、当初参戦を噂されたジャパンCを回避したことも納得がいく。香港で惨敗した2頭の結果を思えば、結果的に正解だったように思える。前走の反動や疲れを懸念したのかもしれない。

 かといって香港国際競走が開催されたのは、つい先日の11日であり、有馬記念とは2週間の違いしかない。陣営が元々体質的な弱さから間隔を詰めて出走できないと認めるイクイノックスだけに、本音を言えばもう少し時間に余裕が欲しかったところだろう。

 昨年は同じく天皇賞・秋から直行したエフフォーリアが、有馬記念を制しているものの、消耗戦だった今年の天皇賞・秋を同列に扱うには怖さもある。本命候補として推されているイクイノックスだが、大一番を前に“見えない敵”とのバトルを制する必要がありそうだ。

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