武豊らトップジョッキーも悪戦苦闘の予感…JRA「新ルール」でフェアプレー賞が存続の危機!?
先週4日、JRAは2022年度の「フェアプレー賞」受賞者を発表した。
フェアプレー賞とは、年間を通じて「30勝以上かつ制裁点数10点以下」のジョッキーのみに贈られる名誉ある賞だ。昨年度は武豊騎手をはじめ、横山典弘騎手、松若風馬騎手、田辺裕信騎手、永野猛蔵騎手など5名の騎手が受賞した。
例年、複数の騎手が受賞する事も珍しくないフェアプレー賞だが、今年度から該当者が激減する可能性があることにも触れておきたい。というのも、騎手が競走馬を促す際に使う「鞭(ムチ)」の連続使用回数にルール変更があったからだ。
「新ルール」でフェアプレー賞が存続の危機!?
これまでJRAでは、「御法(鞭の使用)」は2014年以降、国際ルールの統一及び動物愛護の観点から、原則「1レース内で連続10回まで」という決まりがあった。ただ、近年は世界各国がムチの使用回数を減らしている背景もあってか、今年から半分の5回までに変更。これが、騎手の騎乗に大きな影響を及ぼしそうなのである。
実際、年初からすでにムチに関する制裁は開催4日間で23件も発生。このままいけば、1月だけでも約58件に到達するハイペースだ。新ルール移行前の先月は僅か7件だけだったのだから、周知の事実とはいえ如何にジョッキー達が苦戦しているかが分かる。
「ルール変更直後ではありますが、年初からムチによる制裁が目立ちましたね。かつてフェアプレー賞を受賞したこともある吉田隼人騎手、丸山元気騎手、藤岡康太騎手、古川吉洋騎手なども1度ずつ制裁を受けていますし、松岡正海騎手はすでに3度も受けています。
ただ、多くの騎手に影響があったように、慣れるまでは少し時間がかかるかもしれません。ジョッキーは少しでも着順を上げるべく追うのに必死ですから、余裕を持って『次で5発目だ!』と考えることも中々難しいでしょう。今後は、如何に『ムチに頼らないで馬の能力を最大限に引き出すか』が求められる事になりそうです」(競馬誌ライター)
またJRAでは、ムチの制裁に関して1度目は戒告(1点)→2度目は過怠金1万円(2点)→3度目は過怠金3万円(3点)と、段階を踏んで金額や制裁点数も上がっていく仕組みとなっている。つまり、新ルールに対応できずに何度も制裁を受けてしまえば、ムチの制裁だけでフェアプレー賞の分かれ目となる制裁点数10点を優に超えてしまうというわけだ。そういった意味では、ジョッキーにとって対応力が問われる1年となるだろう。
「フェアで公正で迫力のある競馬を全員でつくっていければと思います」
9日に中京競馬場で表彰式が行われた際、フェアプレー賞を受賞した武豊騎手は力強くそう宣言していたが、はたして年末には何名の騎手が「新ルール」のハードルをクリアしているだろうか。最悪の場合、フェアプレー賞が始まった1980年以降初の「受賞者0名」の可能性すらあるかもしれない。
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