テーオーケインズ「5億円」を超えて行け!ダート界の覇権を争う2頭のニューヒーロー
2月1日に川崎競馬場で行われた川崎記念(G1)。勝ったのは2番人気のウシュバテソーロ(牡6歳、美浦・高木登厩舎)だった。
昨年4月、キャリア23戦目にして初めて挑んだダート戦・横浜S(3勝クラス)を快勝すると、昇級初戦の3着を挟んでブラジルC(L)とカノープスS(OP)を連勝した砂の昇り馬である。前走は重賞初挑戦ながら東京大賞典(G1)を制し、勢いのままに地方のダートG1を連勝。自身の連勝も4に伸ばしてみせた。
鞍上の横山和生騎手は「小回りの川崎コースがどうかなと思っていた」と正直な気持ちを明かしたが、「そこをしっかりこなしてくれたということが、これから先すごく自信になる」と収穫と手応えを口にした。
管理する高木師も健闘を称えながら、今後については「調子を見ながらですが、ドバイに登録をしたので、選ばれればドバイへ、という選択肢も考えています」と海外挑戦を示唆するコメントも飛び出している。
何より価値が高いのが、現在のダート界を牽引する一頭・テーオーケインズを撃破したということ。前走は重賞初挑戦でG1タイトルを掴みながら、JRAのダートG1・チャンピオンズCが終わってから間もない日程だったこともあり、集まったメンバーのレベルには疑問符が付いていた。
それだけに、今回の川崎記念は10頭立てという少頭数の戦いにはなったものの、ダートの現役最強馬を倒したという点で前走よりも価値の高い勝利となったのは間違いない。海外挑戦のプランも浮上しているように、日本のダート界を代表する一頭として胸を張って歩むことが可能になった。
一方、テーオーケインズを下したからと言って、かんたんに王座に就くことはできないのが現在のダート中距離路線。昨年12月に行われたチャンピオンズCで、同馬の連覇を阻む新星が登場した。それがジュンライトボルト(牡6歳、栗東・友道康夫厩舎)である。
こちらは昨年7月、キャリア22戦目にして初のダート戦となったジュライS(L)で2着に好走すると、そこからBSN賞(L)とシリウスS(G3)を連勝。勢いのままにチャンピオンズCに挑み、3連勝でダートG1のタイトルを奪取してみせた。
それまで20戦以上も芝を走り続けていた5歳馬が、ダート転向を機に突然の覚醒。新たに砂の王の座に就こうとする新星が、2頭も同時期に現れた。2023年のダート界は、ウシュバテソーロとジュンライトボルトによる覇権争いが大注目のポイントとなる。
2頭の直接対決がいつ実現するかは分からないが、「現役最強」を決する運命の日が来るまでの楽しみとして、押さえておきたい数字がある。それが「5億円」だ。
現役のダートを主戦とする競走馬を“総賞金”にスポットを当てて見て行くと、トップに君臨しているのはテーオーケインズ。その額は4億9568万4000円となっている。
総賞金で比較すると、ウシュバテソーロは2億9988万4000円で、ジュンライトボルトは2億7772万3000円。ともに一度はテーオーケインズを倒しているものの、キャリアの違いから稼ぎ出した賞金という面では大きくリードを許している状況にある。名実ともに「現役最強」として君臨するためには、総賞金でもテーオーケインズ超えを成し遂げておきたいところだ。
もちろん、この約2億円という差はかんたんに詰まるものではない。ましてや日本におけるダート路線は芝と比べてビッグレースが少なく、最も賞金の高いレースでもフェブラリーS(G1)とチャンピオンズCの1億2000万円というもの。しかし、それは“日本”に限った話。この2頭の次走に挙がっているのは海外の大舞台である。
ジュンライトボルトがR.ムーアとのタッグで参戦を表明しているサウジカップ(G1)は、総賞金が世界最高の2000万米ドル(約25億7000万円)を誇り、ウシュバテソーロが見据えているドバイワールドカップ(G1)も、総賞金は1200万米ドル(約15億4000万円)というドリームレースだ。
ドバイワールドカップであれば3着でも120万米ドル(約1億5400万円)、サウジカップなら5着でも100万米ドル(約1億2800万円)と、日本のG1勝ちに匹敵する賞金を得ることができる。相手は世界の強豪となるが、1レースで「5億円」の目標がググっと近づくどころか、一気に超えてしまう可能性まであるのだ。
ダート界に彗星のごとく現れた2頭のニューヒーローは、どんな立ち位置で直接対決を迎えることになるのか。その日を楽しみにしながら、まずは2頭の“総賞金”に注目してその歩みを見守りたい。
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