
無念の乗り替わりに「ちょっと待てぃ!」…9年目・鮫島克駿が挑む悲願のG1獲り

26日、中京競馬場では春のスプリント王決定戦・高松宮記念(G1)が行われる。
絶対的な王者が不在となっているスプリント路線に、勢いに乗る4歳馬が大挙襲来。新興勢力と古豪たちの激突に注目が集まっている。
この一戦で人馬ともに“G1初勝利”を目指すのが、鮫島克駿騎手が騎乗するトウシンマカオ(牡4歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)だ。
鮫島駿騎手は今年がデビュー9年目の26歳。次代の競馬界を担う騎手として期待される若手の有望株である。昨年はキャリアハイを更新する80勝を記録し、重賞タイトルも4つ獲得。これまで縁がなかったG2でも2勝を挙げるなど、内容の濃い1年を過ごした。
そんな中で出会ったのがトウシンマカオだ。昨年10月のオパールS(L)で初騎乗ながら勝利に導くと、コンビ継続で挑んだ11月の京阪杯(G3)も快勝。レース後には「完勝でした。来年のスプリント戦線を賑わせてくれるのは間違いありません」と興奮気味に語り、その才能を絶賛した。
年明け初戦に迎えた1月のシルクロードS(G3)は4着に終わったが、前走で重賞を制したため58.5キロの斤量を背負わされたことに加え、15頭中の15番枠という不運もあった。それでも「それをリカバリーする立場ですし、言い訳にできません。申し訳ないです」と謙虚さが伝わるコメント。パートナーの力を認めているからこそ、まっすぐな反省が口を突いたのだろう。
飛躍を遂げた昨年も、G1の舞台では9度騎乗して3着が最高だった。デビューから通算22回挑み、頂点の景色はまだ見えていない。その間に1年後輩の坂井瑠星騎手や、さらに1年下の横山武史騎手がG1のタイトルを手にしているのを目の当たりにして、燃えないはずがない。
だからこそ、巡ってきた少ないチャンスを逃すわけにはいかない。今回の高松宮記念に向けては、「より多くコンタクトをとりたくて先生にお願いしました」と、1週前だけでなく当週の追い切りにも志願して騎乗。栗東から美浦へと出向いて相棒とコンタクトをとった。
追い切り後の会見でも、「今回に限らずたくさんチャンスをいただいていますが、勝たないと評価されない世界。まだG1を勝っていないのでG1ジョッキーになりたい気持ちは当然あります」と力強く宣言している。
その強い意気込みには、悲痛な思いもにじむ。「勝たないと評価されない世界」、それを象徴するような出来事が直近にもあったからだ。

19日の阪神メイン・阪神大賞典(G2)を制したジャスティンパレスだが、同馬は昨秋に鮫島駿騎手が手綱を取っていた“元お手馬”だった。
昨年9月の神戸新聞杯(G2)を初コンビで制すると、そのまま翌月の菊花賞(G1)でも継続騎乗を任された。芝3000mというタフな条件の中、4角4番手から前を行くアスクビクターモアを必死に追いかけたが届かず、外から来たボルドグフーシュに差されての3着。わずか0秒1の差で、悲願のG1タイトルには手が届かなかった。
無念の乗り替わりに「ちょっと待てぃ!」
勝てなかったとはいえ、3着という結果は健闘にも見えるが、続く有馬記念(G1)ではT.マーカンド騎手に乗り替わりとなってしまう。さらに年が明けても、始動戦の阪神大賞典はC.ルメール騎手とのコンビとなり、鮫島駿騎手のもとに戻ってくることはなかった。
その裏で、自身は中京のメインレース・名古屋城S(OP)に初コンビのウィルソンテソーロと挑んだが、結果は1番人気を裏切る5着。ダート転向を機に連勝街道を突き進んでいた有力馬との出会いは大きなチャンスだったものの、その起用に応えることはできなかった。
対照的に、ルメール騎手は期待に応える勝利を掴み、この後の天皇賞・春(G1)もコンビ継続が決まったという。同騎手と言えば、週中に人気バラエティ番組『相席食堂』に出演したことが大きな話題となったが、心の底から「ちょっと待てぃ!」と叫びたいのは、千鳥の2人よりも鮫島駿騎手の方かもしれない。
しかし、勝負の世界にはこうした非情にも映る決断というのはつきもの。とにかく前を向いて戦っていくしかない。今後こうした悔しい想いを二度としないためにも、まずはここで初のG1タイトルを掴んでおきたいところだ。
そのためには、やれることはすべてやる。その気持ちが2週続けての美浦遠征へと突き動かしたのだろう。「本当に素晴らしい馬。トウシンマカオと一緒に良いレースができればと思っています」。その才能に惚れ込む相棒を手放さないためにも、今回の高松宮記念は負けられない戦いになる。
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